株式会社寺岡製作所
生産マイスターによる共通言語を持った若い世代層の計画的育成
寺岡製作所では、これまでOJTを中心とした人材教育が各部門・工場ごとに行われ、会社全体として統一して行われてこなかった。そこで、同社は共通言語をもった世代層を育成するために、新人全員や若手社員を対象に通信教育「生産マイスターベーシック級コース」を導入し、人材教育の本格的な底上げに取り組み始めた。その目的やねらいについて、総務人事部担当者の雑賀広嗣氏に話をうかがった。
- 総務人事部担当(取材時)
- 雑賀 広嗣氏
- 会社名
- 株式会社寺岡製作所
- URL
- https://www.teraokatape.co.jp/index.html
- プロフィール
設立 1921年創業、1943年設立 本社 東京都品川区広町1-4-22 代表者 辻󠄀 賢一 資本金 50億5,712万円 主要事業 各種粘着テ-プの専業メーカーとして創業以来90年以上の歴史があり、高い技術力を誇っている。主力製品は、家電製品、パソコン、携帯電話などに使われる電機電子用テープであるが、その他に包装用テープや産業テープも製造している。
共通言語をもった新人・若手を計画的に育成
同社は、これまで各部門・工場ごとに現場の長(支店長・工場長・課長など)が中心になってOJT を主体とした教育を行ってきた。しかし、統一した教育方針が決められているわけでなかった。
たしかに、OJT 中心の教育は現場の実務に直結していて実践的ではあるが、反面、上司の判断や好みに左右されてバラバラの教育になりやすい。とくに現在のように厳しい経営環境になると、会社全体で経営改革を進めたり、業務革新に取り組む機会も多くなるため、みんなで何かを成し遂げようとするときに、会社全体で話し合い、理解し合える共通基盤をもたない矛盾が一気に表面化する。
「例えば、仕掛品という言葉を使っていても、それぞれ部門ごとに定義や理解の仕方が少しずつ違うので正確なコミュニケーションがとれません。そこで、2012年10月から生産マイスターベーシック級コースの通信教育を導入し、まず新入社員全員と若手社員に受講させて、共通言語をもてるよう育成することになりました」(雑賀氏)
同社の組織は4つの事業本部(研究開発、製造、営業、管理)から構成されているが、今までは一度配属されると他の事業本部に転属する機会はほとんどなかったという。しかし、他の部門の仕事についても理解を深め、お互いに刺激し合わないといい仕事もできないため、3年ほど前から人事交流や部門横断的なプロジェクトにも取り組むようになった。
「以前、業務システムを作ろうとして各部門の担当者が集まり、みんなで話し合いをしましたが、考え方、管理の仕方、仕組みなどの違いを共通のシステムにまとめきることができませんでした。そのときの苦い経験もあって、やはり共通認識をもとに話し合える世代層を計画的に育てていかないと、全社的なプロジェクトに取り組むことさえできないと痛切に感じました」(雑賀氏)
新人や若手社員を中心に生産マイスターコースを受け、知識を共有して正確なコミュニケーションのとれる世代層が育ってくれば、多様な人材の層の厚みも生まれ、会社全体のプロジェクトも積極的に推進できるようになる。
営業や技術・管理部門にも生産マイスターを導入
「新入社員と若手社員は製造だけでなく営業や管理部門も含めて全員、それに製造の管理部門の社員を3名ずつ選抜して、現在31名の社員が生産マイスターベーシック級コースを受講しています。以前にも、別の通信教育を導入していたのですが、修了することがゴールで、きちんとその成果をチェックしていませんでした。今回は、検定試験に合格できるよう、サポートしていきたいと思っています」(雑賀氏)
同社の教育は、各部門ごとの集合研修、通信教育、職場でのOJT の3本柱から成り立っているが、会社全体の共通基盤を支える人材育成面において、生産マイスターシリーズが果たす役割は大きい。今後同社では、3級、2級、1級のコースの受講・修了をめざして経年的に取り組み、若手社員の知識やスキルの底上げを図っていきたいという。また、今回の通信教育の導入成果がはっきりすれば、技術・管理・営業部門や、将来的には管理職にも受講対象を広げていきたいという。とくに、最近の営業の仕事では、自社の製品知識だけでなく、技術や製造にも深い理解や知識があってこそ、顧客の課題解決に役立つ提案営業が可能になる。その際にも、通信教育で体系的に学習した技術や製造の知識が大いに役立つはずだ。
『実務的でわかりやすい』通信教育を仕事に生かす
今回導入した生産マイスターベーシック級コースについて感想をうかがったところ、「実務に直結していて実践的であり、しかも文字ばかりでなく図表で解説されていてわかりやすい。また、カレーライスの作り方(図1)など、身近な事例をあげて説明されているので、理解しやすい」(雑賀氏)との回答が返ってきた。受講者の中には、ベーシック級コースをわずか1カ月で修了したやる気のある社員も出ているという。今後、その学習成果をそれぞれの職場の仕事にどう生かしていくかが重要になる。
「当社の製品開発は顧客と一緒にやっていくものが多いので、通信教育で学んだ体系的な知識を生かし、どんな提案ができるのか、顧客の立場まで考えて仕事ができるようになって欲しい」
「当社のシステムや仕組みには結構ムダが多いので、全社的に統一したシステムを作ってコストダウンを図る必要があります。それには、通信教育で学んだ原価管理の知識を生かし、もっと原価意識をもってコスト削減に努めてもらいたい」(雑賀氏)
通信教育もやりっ放しでは効果がなく、少しでも仕事に生かすための創意工夫が重要だ。たとえば、各職場で勉強会などを設けて、学んだ知識を具体的に自分たちの仕事にどう生かすのかといったレポートを提出させる、あるいはどんな改善提案をしたのかを発表させる、そして優れた改善提案をした者には社内評価に反映させるなど、受講者のインセンティブを上げる創意工夫が必要になってくる。
雑賀氏は、「通信教育の成果が具体的に現れるまでには、3~5年ぐらいの時間がかかると思います。それでも、共通言語をもった若い世代が増えてくれば、会社も大きく変わると期待しています」と語っている。“継続は力なり”というが、通信教育も計画性をもって続けていけば、会社を変える力にもなっていく。
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