導入事例

社員の能力開発や学ぶ風土づくりに
積極的に取り組む企業を取材しました

株式会社富士精工

技術やスキルの底上げによる共通言語づくりとモチベーション向上に生産マイスターを活用

富士精工は、医療用精密ステンレスパイプなどの専業メ-カ-として製品の品質の高さや専門的な技術力で高い評価を受けている。同社の製品の90%は海外で使われているが、グロ-バル競争の影響で価格競争が激化しており、今後は品質だけでは勝負できないという。競争力を高めるには、さらなる技術の底上げ(レベルアップ)が必要になる。その一環として、同社は従業員全員に通信教育を導入することにした。そのねらいと目的、導入の経緯と効果について、近藤邦雄・同社代表取締役社長と佐藤勝利・同社取締役矢板工場長に話をうかがった。

代表取締役社長(取材時)
近藤 邦雄 氏
取締役矢板工場長(取材時)
佐藤 勝利 氏
株式会社富士精工
会社名
株式会社富士精工
URL
https://fujiseiko.com/ja/
プロフィール
設立 1985年4月
本社工場所在地 静岡県富士宮市三宮860-6
代表者 酒本 藤雄
資本金 4000万円
主要事業 医療機器用極細ステンレスチューブ、カヌラなどの加工製品

生産マイスターによる体型的教育で社内の共通言語をつくる

富士精工は本社工場(静岡県富士宮市)と矢板工場(栃木県矢板市)の2つの生産拠点があるが、矢板工場は2006年から操業を開始したばかりでまだ工場としての歴史がそれほど長くない。従業員の平均年齢が若く、他業界からの転職者も多い。そのため、工場全体の生産性や生産能力の向上に向け、現場の従業員の技術・スキルをいかに高めるかが課題になっている。そこで、同社は従業員教育の一環としてJMAMの通信教育「生産マイスターコース」を導入することにした。工場の従業員全員がベーシック級・3級を受講することになっており、とくにベーシック級は事務職等を含め全員受講することが前提だ。

同社代表取締役社長の近藤邦雄氏は、導入目的についてこう語る。「今回、生産マイスターコースを従業員全員に受講させようとしたのは、従業員全体の技術知識レベルの底上げを図り、共通言語をつくることが目的です。従業員教育をOJTだけに頼っていると、どうしても技術知識レベルのバラツキが出ます。その点、こうした通信教育を活用すれば、ものづくりに必要とされる基本的な知識や技術を体系的に継続して学ぶことができ、従業員全体の技術やスキルの底上げを図るのに非常に有効だと思いました」

さらに、同社では、生産マイスターコースの修了と検定合格が階層別職位につくための資格要件になっている。たとえば、チームリーダー(主任クラス)ならば3級、サブグループリーダー(係長クラス)なら2級、グループリーダー(課長クラス)なら1級を取得することが前提になっている。そのため、従業員の学習ができる限りスムーズに行えるよう、開講式を行うほか、総務部のスタッフがきめ細かくサポートしている。

多能工とマネジメント能力の養成が教育の両輪

同社では、現場の従業員が単能工として加工工程で必要とされる基本的な技術・スキルをマスターするのに、最低でも半年以上かかる。同社で扱う医療用具用精密ステンレスパイプ、カットパイプ、注射針の製造工程は、家電製品や自動車などの組立工程と違って工程間が連続しているのが特色である。そのため、1つの工程作業しかこなせない単能工よりも、連続した複数の工程作業をこなせる多能工養成が課題になる。

製造現場の責任者である同社取締役矢板工場長の佐藤勝利氏は、こう話す。「一人ひとりの作業者に複数の工程作業をこなせる多能工になってもらいたいと思いますが、同じレベルの多能工に育てるのは非常に難しいことです。本人の向き不向きもあります。ただ現場の班長やチームリーダークラスの従業員には、多能工のスキルとチームリーダーとしての管理力をもった人材に育ってほしいと願っています」

同社では、多能工養成に向け社内に「技能士」制度をスタートさせている。同制度では3級、2級、1級のスキルパスがあり、3級は複数の工程作業をきちんとこなせるレベル、2級は他人に基本となる技術・スキルを教え、指導できるインストラクターのレベル、1級は熟練技能を持ち、部下の教育指導も任せられる名人クラスをいう。
「当社の従業員教育は、技能士制度を軸とした多能工の養成と生産マイスターを軸としたマネジメント能力の養成が2本柱になります。技能士に関しては、工場の生産性向上や現場力強化を図るため、優秀なインストラクターをどれだけ育てられるかが重要になります。今後は、技能士と生産マイスターの養成をクルマの両輪にして従業員教育に取り組んでいきたいと思っています」(近藤社長)

「気づき」と「やる気」がものづくり人材育成のカギ

ものづくり現場で仕事ができる、伸びる人材についてうかがった。「誰が伸びる人材か、その潜在的な能力や才能を見抜くのは簡単ではありませんが、ものづくりの現場では機械と会話のできる人がいいですね。工場で毎日使っている機械の調子はどうかなと機械と会話しながら、稼働する機械の音に耳を澄まし、油の臭いを嗅ぎ分け、五感を研ぎ澄ましてちょっとした異常にも気づくような、そんな愛情とセンスをもった人が伸びるように思います」(近藤社長)、気づきのよくできる人が伸びます」(佐藤工場長)

ものづくりの製造現場では、生産ラインでも機械でも設備でも待ったなしで動いている。ほんのわずかな異常や不具合が発生しても、それらに気づかず見過ごしてしまうと、たちまち大量の不良品を作ってしまう。現場の人たちには、わずかな異常や不具合も見逃さない鋭敏な気づきの感覚が必要とされる。

最後に生産マイスターの導入効果をうかがった。「効果としては、従業員がこれらを修得することによって基本的な知識や技術が体系的に学べるだけでなく、仕事に対するやる気や意欲、将来に対するキャリアパスの目標や展望が持てるようになるモチベーションアップの効果も大きいかと思います。私自身が、従業員に刺激を与え、やる気を引き出すモチベーションを与えられているかと日々考えていますので、こうした通信教育もうまく活用していきたいと思っています」(近藤社長)

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