導入事例

社員の能力開発や学ぶ風土づくりに
積極的に取り組む企業を取材しました

戸田建設株式会社

全員が力を発揮できる環境づくりへ!フォーラムで意識を共有し女性活躍推進に取り組む

戸田建設は2015年10月30日、「女性活躍推進フォーラム2015」を開催しました。今回の目的は、女性総合職の意識啓発およびモチベーション向上です。女性活躍推進に取り組む強い意思を社内外に表明し、本格的な取り組みのキックオフとなる重要なフォーラムとなりました。

戸田建設株式会社
会社名
戸田建設株式会社
プロフィール
1881年創業。以来、品質・工期・安全に最善を尽くし、建設を通じて社会に貢献。2015年1月には、同社グループが目指す姿として戸田建設グループグローバルビジョン「“喜び”を実現する企業グループ」を掲げた。ここには、顧客、社員、取引先、ひいては社会全体の“喜び”をつくり出し、それを自信と誇りに変えて成長を続けていく企業でありたい、という想いが込められている。
目次

イベント報告

全員が力を発揮できる環境を

フォーラムには全国から134名の女性総合職と、社長、役員をはじめ統轄部長以上が集まり、まず女性活躍推進に関する目標が発表されました。
・2020年に女性の管理職(課長職)を3倍にする
・2020年までに採用者に占める女性の割合を30%にする
この目標を実現するための施策について、人事部長の工藤博之氏より「2016年入社の新入社員のうち、22%(過去約10%)が女性総合職として入社すること」、「2016年4月に一般職を廃止し、『エリア総合職』と『(業務)特定職』というクラスターを新設すること」を挙げ、さらに「女性活躍推進は“法律で決められているから実施する”という意識ではなく、“男女を問わず全員が力を発揮できる環境が必要だから、皆で作っていく”意識で取り組んでほしい」という発言がありました。
フォーラムは、女性総合職を取り巻く現状について、「女性活躍推進調査」の結果発表、ワーキング・グループによる提案、パネル・ディスカッションへと続きます。

「女性活躍推進調査」で課題が浮き彫りに

JMAMが協力し同社が事前に実施した「女性活躍推進調査」の結果報告では、次のような課題が浮き彫りになりました。
・女性活躍推進について、認知はされているが、実際にどうすればよいのか、具体策への認識が低い
・上司と部下、男性と女性で見方や認識が異なる。例えば上司と部下で仕事の目的やゴールを明確に共有できていない
・育児制度など女性活躍推進を支援する制度が活用されていない
こうした課題を踏まえ、公募で集まったワーキング・グループのメンバー5名が次の解決案を示しました。
・女性社員が変わらなければいけない点:自らキャリア展望を組織へ発信する
・組織に求める点:育児制度等を利用しやすい環境づくり、マネジメントの仕組みの見直し

女性管理職の生の声を聞く

パネル・ディスカッションには、4名の女性管理職(課長・主任)が登壇しました。各氏は、女性管理職としてのやりがいやプレッシャー等を率直に披露。参加者からの「子育てと仕事の両立について」の質問にも体験に即して応じ、建設的な対話が行われました。

ゼネコン一、 女性が輝ける会社に

最後に、代表取締役社長の今井雅則氏が登壇し「女性社員が自ら“頑張ろう、声をあげよう”と言ってくれて、とても良い場になりました。会社としても業界で一番、女性が活躍できる会社にしていかなければならないと感じています。“触媒”は少ないながら製品の質を決めたり、劇的に変えていくことができます。女性は数が少ないが影響力はあります。是非そのアドバンテージを活かし、よりよい会社にしていこうという意思をもって、取り組みを進めていきましょう」と述べ、活気を帯びた3時間半に及ぶフォーラムが終了しました。戸田建設は今後、このフォーラムで共有した課題や意識を全社で共有し、2020年の目標に向かって取り組みを進めていきます。

運営担当者、ワーキング・グループメンバーの声

寺西 貴絵 氏
人事部 ダイバーシティ推進室主任

人事部 ダイバーシティ推進室主任 寺西 貴絵 氏
会場に集まった100名以上の女性社員を見て、ようやく取り組みへのスタートラインに立てたような気がしました。どこか他人事だった出席者も、徐々に自身の事として、話に耳を傾けてくれていたように感じます。ワーキング・グループメンバーからの「参加してよかった」という声も嬉しかったです。個々の小さな気持ちの変化の積み重ねが、会社に新しい風を吹き込む第一歩だと思い、今度は男性も巻き込んで、心地よい風の吹く会社に変えていくことが目標です。

福間 加純 氏
人事部 ダイバーシティ推進室

人事部 ダイバーシティ推進室 福間 加純 氏
アンケートの実施に携わり、男女での意識のズレ・女性の中でも世代による意識のズレが想像していた以上に大きいことに驚きました。
今回、全役職員を対象として実施したアンケートは、情報の量・質ともに当社の今後の女性活躍推進に向けた取り組みを進めるにあたり、非常に重要なデータとなったと感じています。今回のアンケートで得られたデータを基に分析を進め、より充実した活動につなげていきたいと思います。

周 潔 氏
価値創造推進室戦略ユニット 環境事業推進チーム

価値創造推進室戦略ユニット 環境事業推進チーム 周 潔 氏
アンケート結果から、理想像と現実とのギャップ及び男女間の意識のズレを客観的に認識できました。そしてこの結果が、今後の会社における女性活躍のあり方について具体的な解決策を提案する「鍵」になるのではないかと感じました。
WGでは日常業務では接点のないメンバーとそれぞれの立場から意見を出し合い短い時間で論理的に整理していくことが大変でしたが、通常業務ではなかなか得ることができない経験となり、非常に貴重な機会だったと思います。

トップインタビュー 代表取締役社長 今井 雅則 氏

フォーラムの意識を全社で共有

代表取締役社長
今井 雅則 氏

「女性活躍推進フォーラム2015」は、とても良い場になりましたね。若手からベテランまで各年代の女性がそれぞれの問題意識をもって集まり、活発に対話をしてくれました。これは非常に良かったと思います。
このフォーラムによって、まず最初のステップとして女性総合職の問題意識を共有することができました。これからは、次のステップに向かわなければなりません。例えば、フォーラムに参加してくれたのは女性総合職でしたが、他の職群の女性社員もいます。あの場で共有した意識を全体で共有し、全社員、全女性が同じ土俵で活躍していけるようにしていかなければなりません。

“女性ももっと活躍できる会社”に

かつての当社は、率直に言って女性が主役とは言えない状況でした。そうした中で会社が二期連続で赤字を出し、これまでのやり方ではいけない、会社を変革しなければならない状況になりました。そこで、社員一人ひとりが100%、いや120%能力を発揮できるアクティブな会社を作ろうと考えたのです。ですから女性だけが活躍すれば良いというわけではなく、“女性ももっと活躍できる会社”にしなければならないと思っています。
こうした状況は、当社に限らず建設業界全体が抱える問題でもあります。これから建設業界は大量離職時代を迎えます。不足する労働力を補うには、女性にも活躍していただきながら、生産性を向上させることが必要です。
また、女性活躍推進への期待は、“男性が多い建設業界の中で、女性ならではの感覚で力を発揮してほしい”という意味でも高まっています。例えば、内装や仕上げ、クレーンのオペレーター等は、女性に活躍していただける仕事ですよね。当社の例で言えば、実績のある医療福祉施設では医療従事者の多くが女性ですから、女性の感覚はとても重要だと考えています。
こうした思いから2014年9月、社内にダイバーシティ推進室を立ち上げました。
ダイバーシティ推進室は、女性の視点からシステムや制度を見直してほしいと考え、女性に推進室長を担ってもらっています。もちろん、男性側も女性の活躍を推進する重要性を認識し、自ら意識改革していかなければなりません。

全員が活躍できる会社を 皆で作ろう

今後、全員が同じ土俵で活躍していくためには、制度や職種の問題に取り組むだけでは不十分です。会社や部署としての大きな目標に向かって、一人ひとりが個性を発揮し、能動的に自分の課題や目標を持って働いていくことが求められます。
自分が任されている仕事はどういう意味があって、どういう成果が求められているのか、それを考えれば男女の別なく一人ひとりが個性的な仕事をしていかねばならないはずです。つまり、フォーラムで私が述べた「経営的な感覚を持って欲しい」という言葉の意味は、「会社は今どうなっているのか」「この会社をどうしていこう?」「自分にできることは何か?」という感覚を養ってほしいという意味です。
働く理由は、「家族のため」でも「社会のため」でも構いません。しかし、その大事なもののために自分は何をするべきなのか、どうすれば仕事を通して貢献できるのかを常に意識して欲しいと思っています。
全女性に活躍してもらうためには、制度の見直しや職場環境の改善など、経営としてやるべきことはやっていくつもりです。女性の皆さんに活躍してもらいたいというのは、男性化して欲しいということではなく、女性として、さらにいえば個人として力を発揮して欲しいという意味です。そのことが組織に厚みをもたせ、活動の幅を広げると確信しています。全員が活躍できる会社を、皆で作っていきたいと思います。

人事部長インタビュー 人事部長 工藤 博之 氏

積極的に情報交換する姿が印象的

人事部長
工藤 博之 氏

先日のフォーラムは全国から女性総合職がほぼ全員集まったという点で、意義深いものでした。フォーラムのプログラムも良かったのですが、私が印象に残っているのは休憩時間でのフリー・トークの盛り上がりです。普段、あまり横の連携がない地方の女性総合職同士で、積極的に情報交換をしていました。また、役員にも総合職の皆さんに混じって、隣り合うような席で参加していただいたのですが、女性総合職と役員が直接話し合うことはほとんどないため、とても良い機会だったと思います。女性が抱える悩みや問題を直接聞いて、役員の意識にも変化があったかもしれません。次は、部長・課長職層の意識をどう変えるかが課題だと思います。

公正(フェア)な制度運用をしつつ、一人ひとりがやるべき仕事を

フォーラムでは「2020年に女性の管理職(課長職)を3倍にする」、「2020年までに採用者に占める女性の割合を30%にする」という目標を掲げましたが、無理なことだとは思っていません。現在は過渡期であり、将来は女性を特別視しなくても管理職になる人が増えてくるようになると期待しています。
その時に重要なことは、“平等だからといって、全ての扱いにおいて同じではない”ということです。制度面では公正(フェア)な運用をしつつ、男女の違いを認識することも必要です。男性も女性も遠慮をせずに一人ひとりがやるべき仕事をやらなければなりません。人事部は、そのための下地作りをしっかりとしていきたいと思います。
目標達成への具体策として、現在、全体の3%しかいない女性総合職を増やす施策に取り組んでいます。まず、2016年4月には一般職を廃止し、希望者でかつ基準をクリアされた場合は「エリア総合職」に、希望しない場合は「(業務)特定職」という新しいクラスターに移ります。
また、採用については、2016年4月の新卒採用(総合職のみ)のうち22%は女性という結果になりました。これは、優秀な人材を採用した結果自然とこうなっただけで、特に女性を意識して採用したわけではありません。今後もこの採用方式は変わりはなく、「2020年までに採用者に占める女性の割合を30%にする」という目標の達成は難しいものではありません。職群の再編と、総合職採用を増やすことにより、女性総合職の数はこの数年で現在の3倍程度にはなる見込みですから、そこから管理職になる社員も当然増えるでしょう。そして入社後は、成長する機会をしっかり提供する。つまり「量の拡大」と「質の向上」の2つのサイクルを継続的に回していけば「2020年に女性の管理職(課長職)を3倍にする」という目標も、達成できると考えています。

ダイバーシティ推進室長インタビュー ダイバーシティ推進室 室長 越智 貴枝 氏

女性活躍推進調査の結果を 次世代へつながる一歩としたい

人事部
ダイバーシティ推進室 室長
越智 貴枝 氏

先日のフォーラムは、ダイバーシティ推進室を立ち上げてちょうど1年の節目に実施したので、感慨深いものとなりました。
フォーラムを実施する前に、女性活躍推進について“イメージしていること”を定量化しておく必要がありました。そこで、事前に「女性活躍推進調査」を実施しました。調査結果を見た印象は、8割は想定内、2割は想定外でした。想定していたのは「女性活躍推進は必要だけど、何をすれば良いのかわからない」「方針もよくわからない」というものです。トップの意志で女性活躍推進に取り組むことになったものの、まだ多くの社員は暗中模索という状況が、数値として表れていました。
意外だったのは「管理職に対する意識」です。“女性は管理職になりたがらない”といわれていますが、当社の場合は管理職を目指したいという女性総合職が多かったのです。これは嬉しい驚きでした。“女性社員は管理職になることに抵抗が少ない”という点は、経営陣にとっても新鮮でインパクトがあったようです。
調査結果は、上司に対する提案の根拠として使用したり、先日のフォーラムの内容をまとめる際に使いました。事前に調査結果で出た参加者の意識をパネル・ディスカッションのパネラーに伝えられたことで、より身近な例を入れ、参加者の心に響くパネル・ディスカッションができたように思います。
今後は、せっかく回答頂いた内容をより実のあるものとするべく、管理職層には研修と絡めて伝えていきます。データをうまく活用して、調査結果を次世代につながる一歩としたいと考えています。

コンサルタントの視点

調査を使って 「振り返り」の場を生成し 女性活躍推進を次のステップへ

JMAMシニアHRMコンサルタント
加藤 宏未

従業員アンケートで重要なのは、「調査結果を用いて誰が何のために何をするのか」を関係者でよく確認しておくことです。
本ケースでは、「フォーラム」でこの結果を公表する、ということが前提としてありました。調査のコンセプト決めは、フォーラムをどのような「場」に「する」のか、というダイバーシティ推進室の皆さまの「迷い」「試行錯誤」とともにありました。その過程で、フォーラムで「女性活躍」という大きな課題に向き合い解きほぐし、会社の潮流を創るきっかけとしていきたい、という皆さまの思いに触れました。必然的にフォーラムは「報告会形式」ではなく、双方向のやりとりを含んだものとなっていきます。そのねらいに貢献するためには「対話のきっかけ」を調査結果の中に組み込むことが重要であると気づきました。
そのような観点から、調査項目に「180度質問(本人の認識と他人の客観的な認識を比較する質問)」を多数組み込みました。そして、「女性部下のいる管理者」vs「女性部下」、「女性」vs「女性のいる職場の男性」と、女性活躍を取り巻く関係者の「認識の差異」として浮かび上がらせるようにしたのです。一般的に、自分(たち)と他人の認識のギャップを知ることは、「気づき」や「対話」を促す上で効果的です。その効果を用いて各々の「女性活躍」というテーマに対する認識や捉え方を引き出し、ぶつけ合うことこそが、フォーラムのねらいと合致すると考えたのです。
結果としてフォーラムでは、総合職の女性が認識のギャップを自覚し、「自責として」行動を変えていくための議論に結びつきました。今後は、周りの男性、女性部下の管理者、経営層などがこの調査を用いて振り返りの「場」を共有し、それが新たな動きにつながって行けば幸いです。

女性活躍推進のための取り組み

※掲載内容やご登場いただいた方の役職は取材当時のものです

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