コラム
  • 対象: 管理職
  • テーマ: マネジメント
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そのマイクロマネジメントは危険!悪影響を防ぐ方法を解説

そのマイクロマネジメントは危険!悪影響を防ぐ方法を解説

管理職がマイクロマネジメントを行うことは、従業員のモチベーション減退や生産性の低下、離職率の増加につながることがあります。チームを成功に導くためには、管理職が適切なマネジメントのバランスを取ることが重要です。

今回は、マイクロマネジメントが及ぼす悪影響を解説し、それを防ぐための実践的な方法を紹介します。管理職のマネジメントスタイルを見直し、従業員の成長とチームの生産性向上につなげましょう。

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マイクロマネジメントとは

マイクロマネジメントとは、管理者が部下の業務を細部まで把握し、管理するマネジメント手法を指します。

実際の組織では、管理者による細かな作業手順の指示や、頻繁な進捗確認、些細な決定事項への介入などの行動として現れます。メールの文面チェックや、会議での発言内容の事前確認など、本来部下に任せられる範囲にまで管理が及ぶことも少なくありません。

この管理手法は、現場における課題のひとつとなりがちですが、状況によっては効果的に機能するケースもあります。

例えば、新入社員の研修期間や、高度な品質管理が必要な製造工程では、マイクロマネジメントによる詳細な指導とフィードバックが有効です。

反対の概念として、上司が大きな方向性や目標を示し、実行の詳細は部下に任せるマネジメント手法を「マクロマネジメント」といいます。

このマネジメントスタイルにもメリットとデメリットがあり、部下の問題解決能力や主体性が育まれる一方で、業務の質にばらつきが出る可能性や、組織としての一貫性が保ちにくい点が課題です。

マネジメントの本質は、チームメンバーの成長を支援しながら、組織目標の達成を実現することにあります。

マイクロマネジメントをはじめ、それぞれの手法の課題に対しては、単なる管理手法の是非を問うのではなく、自社や部下にとってどのようなマネジメントが効果的であるかという視点で捉えることが大切です。

上司がマイクロマネジメントをしてしまう背景

上司がマイクロマネジメントをしてしまう背景は、大きく分けて2つ考えられます。

心理的な背景

1つ目は、人事評価に対する不安や自己顕示欲、信頼関係の欠如など、心理的な背景によるものです。

このような心理が働く根本的な要因のひとつは、自己効力感の欠如(自信がない)にあります。過去の失敗体験や信頼関係の欠如から、自己防衛的な思考や過度な管理意識が生まれてしまうのです。

下記では、具体的な心理について詳しく説明します。

人事評価に対する不安

部下のミスは上司自身の評価に直結すると考えた結果、少しでも失敗を避けようとして、マイクロマネジメントを行うケースがあります。

自分のマネジメント能力に自信をもてないため、「細かく指示を出せば問題が起こらないはず」と思い、過度に干渉してしまうことが考えられます。

自己顕示欲

自分の意見や指示が正しい、管理能力が優れていると周囲に示したいという思いが強く、その結果、部下の仕事に過度に介入してしまう場合もあります。

例えば、細かい指示を出したり、業務の進め方を逐一確認したりすることで、「自分がいなければ仕事が回らない」という印象を与えようとすることが考えられます。

部下への不安や疑いからくる不確実性を排除したいという欲求

部下の判断や行動を信用できず、不安や疑いが生まれ、「自分がしっかり管理しなければ」と考えてしまう方もいるようです。

主に、上司と部下との信頼関係の欠如が原因です。このケースでは、業務のあらゆる部分に細かく指示を出し、進捗を頻繁にチェックするなど、管理すること自体が安心材料になっていると考えられます。

状況的な背景

2つ目は、働き方の変化や業務量の増加といった、状況的な背景です。

自組織において、適切なマネジメントが実践しやすい環境が構築できているかも含めて確認していきましょう。

リモートワークの普及など働き方の多様化

リモートワークは部下がどのように仕事を進めているのかが見えにくく、「ちゃんと働いているのか」「仕事が滞っていないか」といった不安を感じやすくなります。

その結果、細かい報告を求めたり、頻繁にオンラインミーティングを設定したりすることで、業務状況を把握しようとする傾向があります。

業務量過多

人手不足などによって業務量が増えている場合、上司自身に余裕がなくなる場合があります。

その結果、部下に任せることが不安になり、少しでもミスを減らすために過剰に介入してしまうケースがあります。

マイクロマネジメントが及ぼす悪影響

マイクロマネジメントは、部下、組織の両方にネガティブな影響を与える場合があります。

下記では、マイクロマネジメントが及ぼす悪影響について詳しく解説します。

部下に与える悪影響

マイクロマネジメントが部下に与える影響としては、下記の3つがあげられます。

  • 部下のモチベーションを下げる場合がある
    上司から信頼されていないと感じると、「自分には能力がない」「信頼に値しない人間かもしれない」という否定的な自己認識が強まることがあるためです。これは仕事への意欲や主体性を大きく損なう要因となります。
  • 部下のキャリア形成を阻害する可能性がある
    キャリア形成には「経験を通じた成長」が不可欠ですが、マイクロマネジメントはこの成長機会を制限してしまいます。その結果、失敗から学ぶ姿勢を養えなかったり、新しいアイデアを生み出す力が育たなかったりします。
  • メンタルヘルスに悪影響を及ぼす場合がある
    「指示に従わなければいけない」「ミスをしてはいけない」といったプレッシャーから、精神的に追い詰められてしまうことがあります。

組織に与える悪影響

マイクロマネジメントが組織に与える悪影響として、下記の3つがあげられます。

  • 組織全体の生産性が低下する場合がある
    管理者が部下の細かな業務まで管理することで、本来注力すべき戦略的な業務に時間を割けなくなると、意思決定のプロセスが遅延し、業務の停滞が発生してしまいます。
  • 管理者の過労やメンタルヘルス悪化につながる
    常に部下の業務を監視し、把握していなければならない状況は、過労を招くだけでなく精神的負担につながります。メンタルヘルスを悪化させる可能性もあり、組織にとっては多大なリスクとなってしまいます。
  • 次世代のリーダー育成が停滞する場合がある
    部下が主体的に判断し、実行する機会が制限されることで、次世代のリーダー育成が困難になることもあるでしょう。これは、組織の持続的な成長を阻害する要因になる場合も少なくありません。

過度なマイクロマネジメントを防ぐための5つのポイント

マイクロマネジメントは、状況によってはメリットがあるものの、基本的にはデメリットのほうが多い手法です。

部下への指導が過剰にならないよう、管理職の意識やマネジメントの方法を変えていきましょう。

下記では、マイクロマネジメントを是正するためのポイントを5つ紹介します。

個々に合わせたマネジメントを考える

部下それぞれの性格や能力に応じて、任せる部分と細かくチェックする部分を使い分けることが、過度なマイクロマネジメントを防ぐことにつながります。

例えば、経験が豊富で自信のある部下には大きな責任を任せ、まだ経験が浅い部下にはしっかりとサポートをして成長を促す、などです。

一人ひとりの「育成タイプ」を理解することを心がけましょう。

相手の性格やコミュニケーションのスタイルを把握すれば、関わり方も変わり、効果的に部下をサポートできるようになります。

特に、多様な価値観を尊重する傾向があるZ世代の育成においては、一人ひとりの性質に合わせた接し方が効果を発揮します。

各育成タイプの詳細や指導のポイントについては、下記のページをご覧ください。

部下の良いところを褒める・意見を取り入れる

管理者である上司は、部下の良いところを積極的に褒めることが大切です。

具体的な成果や行動を認め、評価することで、部下は自身の仕事に自信を持ち、より主体的に業務に取り組むようになります。

部下の成功事例を部署や企業全体で共有することも有効です。組織に貢献できているという実感が得られるだけでなく、信頼関係の構築にもつながります。

モチベーションを高めるフィードバックのコツは、下記の記事で詳しく解説しています。

また、部下の考えやアイデアを尊重し、積極的に取り入れる姿勢を持つことも重要です。各メンバーが「自分の意見には価値がある」と感じられることで、自発的に組織改善に向けたアイデアを考えることを促せます。

その結果、上司が過度に干渉しなくても、部下が自己判断で仕事を進められるようになり、組織の生産性が高まることが期待できます。

適切な頻度でフィードバックする

定期的なフィードバックの機会を設け、部下との対話を定着させましょう。

具体的には、定期的な1on1や週次ミーティングなど、予測可能で安定したコミュニケーションの機会を設定することで、突発的な確認や介入を減らすことができます。

フィードバックを行う際は、その目的と共有すべき情報の範囲を明確にすることが重要です。不必要な報告や確認を避けられるため、効率的なコミュニケーションが可能になります。

また、定期的なフィードバックを通じて相互理解を深め、期待値を明確にすることで、信頼関係を構築することができます。

その結果、部下一人ひとりの成長段階に応じたアプローチを選択しやすくなるため、効果的なチームマネジメントの実現にもつながるでしょう。

このような効果的なフィードバックを行うためには、JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)が提供している1on1支援サービスも活用できます。対話の質を評価し、効果的なフィードバックを提供するツールです。

詳しくは下記からご覧ください。

コミュニケーションをオープンにする

部下が自由に相談できる環境をつくることで、業務上の問題や悩み、提案を早期に把握し、迅速に対応できるようになります。

「困ったときにすぐ相談できる」と感じられる環境では、上司が過度に管理しなくても、部下が自発的に動きやすくなります。

当社が実施しているコミュニケーション研修でも、このような考え方を取り入れています。個の違いに適応するスキルを実践的に学ぶことが可能です。人材育成の施策として、ぜひご検討ください。

少しずつ権限を移譲する

最初からすべての業務を任せるのではなく、小さなタスクから徐々に権限を移譲し、部下が自主的に業務を進められるようにすると、無理なく自立を促せます。

例えば、最初は簡単な報告業務や調整業務を任せ、慣れてきたら企画や意思決定の一部を担当させるといった方法が効果的です。

権限を移譲することは、部下の育成にもつながります。自分で判断し、業務を進める経験が得られるため、責任感や課題解決能力が育つのです。

これは、管理者と部下の双方にとって、持続可能な関係性を構築する重要な要素となります。

まとめ

マイクロマネジメントは、管理者が部下の業務を細部にわたって管理する手法です。新入社員の研修期間や、高度な品質管理が必要な製造工程では有効に機能する一方、過度な実施は部下の成長機会の制限や組織の生産性低下を招く可能性があります。

これは心理的要因や働き方の多様化といった背景から生じやすく、組織への影響も広範におよびます。

より効果的な組織運営を実現するには、管理者が部下の状況に合った最適なマネジメントスタイルを実践することが重要です。各部門の特性や課題を踏まえながら、持続可能な人材育成の仕組みづくりに取り組みましょう。

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