- 対象: 管理職
- テーマ: マネジメント
- 更新日:
管理職にはストレスマネジメントが重要!その理由と実践のノウハウを徹底解説

ビジネス環境が急速に変化するなか、組織の目標達成、部下の育成、経営層との調整など、多岐にわたる業務をこなす管理職の役割と責任はさらに重要性を増しています。そんな多忙な管理職を支えるのが、ストレスマネジメントのスキルです。
しかし、多くの管理職は自身のストレス状態に気づきにくく、メンタルに不調をきたすケースも少なくありません。
今回は、管理職に求められるストレスマネジメントの意義と、その具体的な実践方法について、わかりやすく解説します。
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管理職のストレスマネジメントとは
ストレスマネジメントとは、従業員が自らのストレス状態を理解し、適切にコントロールするための取り組みです。
近年、企業におけるメンタルヘルス対策の重要性は増しています。
厚生労働省の調査によると、精神障害による労災支給決定件数は年々増加傾向にあり、令和5年度には883件と過去最多を記録しました。
また、メンタルヘルス不調により1か月以上の休業や退職をする従業員がいる事業所の割合も1割を超えて推移しており、企業における大きな課題となっています。
このような状況下で注目されたのが、管理職のストレスマネジメントです。管理職は自身の業務に加え、部下のメンタルヘルスケアも担う立場にあるため、その習得は必須といえるでしょう。
出典:
・厚生労働省「「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」の中間とりまとめを公表します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44880.html
管理職がストレスマネジメントを実践する重要性
管理職にとってストレスマネジメントの実践は、自身の健康維持とパフォーマンス向上のためにも重要です。
ここでは、管理職がストレスマネジメントを実践する重要性について解説します。
業務量が多く、責任も重いため
管理職は、自身の業務遂行者(プレイヤー)としての役割と、部下を統括するマネジャーとしての役割を同時に担っています。
日々の業務では、部門の目標達成に向けた戦略立案、経営層への報告、部下の育成指導など、多岐にわたる責任を負っています。
さらに、部下の急な相談対応やトラブル処理、頻繁な会議への出席など、予定外の業務が発生することも少なくありません。
その結果、自身の本来の業務が後回しになり、長時間労働を余儀なくされる……という毎日を過ごしている管理職は多いはずです。
このような過重な業務負担は、慢性的なストレスの原因となります。
ストレスマネジメントを実践することで、業務過多の状況下でも上手にストレスを発散する方法を身に付けたり、感情をコントロールしやすくなったりします。
安定したパフォーマンスを発揮するためにも、ストレスマネジメントの実践が重要です。
ストレスの状態に無自覚であることが多いため
管理職は責任感が強く、仕事に没頭するあまり、自身のストレス状態に気付きにくい傾向があります。
この「ストレスへの無自覚」は、さらなるストレスの蓄積を招き、深刻な事態を引き起こすこともあるでしょう。
ストレスマネジメントを実践することで、自身のストレス状態を早期に察知し、適切な対処行動を取ることができるようになります。
また、ストレスによる感情的な言動が減ることで、部下へのハラスメント防止にもつながり、健全な職場環境の維持にも貢献できます。
ストレスの蓄積はメンタル不調の原因となるため
管理職の過度なストレス蓄積は、深刻なメンタルヘルスの悪化を引き起こす可能性があります。
最悪の場合、休職や離職に至り、キャリアの中断を余儀なくされることもあります。
そこで、ストレスマネジメントの知識を身に付けることで、ストレスと適切に向き合い、早期に必要な対策を講じることができます。
メンタル不調による欠勤を防ぐことは、持続的な生産性の維持・向上にもつながるでしょう。
ストレスによってメンタル不調を起こす仕組み
管理職のメンタルケアを効果的に行うためには、「日々の業務でストレスが蓄積して、メンタル不調に至る」場合のメカニズムを理解することが重要です。
下記では、ストレスによってメンタル不調を起こす仕組みについて具体的に解説します。
ストレッサーによってストレスが溜まる
ストレッサーとは、私たちの心身に影響を及ぼす外部からの刺激のことを指します。
特に管理職が直面しやすいストレッサーは、主に下記の3つに分類されます。
●物理的ストレッサー
職場環境に関連する刺激です。例えば、オフィスの温度管理の不備による暑さや寒さ、開放型オフィスでの騒音、通勤ラッシュでの混雑などが該当します。
●化学的ストレッサー
職場環境における化学物質への接触や、空調の不調による酸素不足、オフィスの換気不足による二酸化炭素濃度の上昇などが関係します。
●心理・社会的ストレッサー
管理職が最も頻繁に遭遇するストレッサーです。上司からのプレッシャー、部下との人間関係の軋轢(あつれき)、過度な業務量、難易度の高い仕事への対応、さらには仕事と家庭の両立における葛藤なども含まれます。
生じたストレスがストレス反応として表れる
ストレッサーによる刺激は、心理面、身体面、行動面においてさまざまなストレス反応を引き起こします。
特に管理職は責任が重く、複数のストレッサーに同時にさらされやすい立場にあるため、これらの反応が複合的に表れることがあります。
●心理面に表れるストレス反応
仕事への意欲低下、些細なことへのイライラ、将来への不安、気分の落ち込みなどが表れます。部下の育成や業務管理に支障をきたす可能性があるため、早期発見が重要です。
●身体面に表れるストレス反応
頭痛や肩こり、胃痛、腰痛などの身体の痛みや、動悸や息切れ、不眠などの自律神経の不調など、さまざまな症状が表れます。
●行動面に表れるストレス反応
ストレス解消と称したアルコール摂取量の増加、集中力低下による業務ミスの増加、判断力の低下によるヒヤリハット事例の増加などがみられます。
このようなストレス反応が継続的に表れる状態を放置すると、深刻なメンタルヘルスの不調につながるおそれがあります。
そのため、早期にストレス反応のサインを認識し、適切な対処を行うことが重要です。
ストレスマネジメントの実践方法
管理職のストレスマネジメントには、いくつかの効果的な手法があります。
重要なのは、ストレスを完全になくすことを目指すのではなく、うまく「対処する」という意識を持つことです。
下記では、管理職が実践できる特に効果的な2つの手法について詳しく解説します。
セルフモニタリング
セルフモニタリングは、自身のメンタル状態を継続的に観察し、記録する手法です。
日々の出来事や感情の変化をノートやスマートフォンアプリに記録することで、ストレスの原因や反応パターンを可視化できます。
効果的なセルフモニタリングのために、下記の4つの観点から記録を取ることが推奨されます。
1. 現在の状況
(例)業務内容、締め切りの有無、人間関係の状態など
2. 想定されるストレッサー
(例)部下の育成における課題、上司からの要求、業務の締め切りなど
3. ストレス時の感情
(例)焦り、不安、怒り、落ち込みなど
4. ストレス反応
(例)集中力の低下、頭痛など
自分の状態を記録するだけなので一見簡単そうに見えますが、普段から自分を客観視する習慣がない方にとっては難しく感じたり、適切に記録できなかったりすることがあります。
管理職が自分のことを顧みる第一歩として、JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)の「ストレスに強い人材を見極めるWeb適性試験 Q-DOG」を試してもらうのもひとつの手です。
Q-DOGとは、ストレス耐性(処理力や安定性など)とストレスの自覚度(感情的な反応や不安傾向など)の両面から診断を行うWeb適性検査です。人材育成担当者にはもちろん、管理職本人にもフィードバックを提供でき、能力発揮や組織適応の面から現在の状態が把握できるようになっています。
Q-DOGの詳細は、下記からご覧ください。
ストレスコーピング
ストレスコーピングとは、ストレス反応を軽減させるための具体的な対処法です。
状況や個人の特性に応じて、下記の5つの方法から適切なものを選択して実践します。
1. 情動焦点型コーピング
ストレスによって生じた感情を適切に表現し、周囲と共有することでストレスを軽減します。例えば、信頼できる同僚に悩みを相談するなどの方法があります。
2. 認知的再評価型コーピング
ストレス状況に対する見方や考え方を変えることで、ストレスの軽減を図ります。例えば、困難な状況を成長の機会として捉え直すなどの方法があります。
3. 問題焦点型コーピング
ストレスの原因となっている問題に直接取り組み、解決を目指します。例えば、業務の優先順位を見直したり、効率化を図ったりする方法があります。
4. 社会的支援探索型コーピング
上司や同僚、専門家などに支援を求め、ストレス状況の改善を図ります。例えば、産業医に相談したり、メンターに助言を求めたりする方法があります。
5. ストレス解消型コーピング
趣味や運動などの活動を通じて、心身をリフレッシュします。例えば、休日に好きな運動をしたり、読書や音楽鑑賞で気分転換を図ったりする方法があります。
これらの手法は、状況や個人の特性によって効果が異なります。複数の方法を組み合わせて実践することで、より効果的なストレスマネジメントが可能となります。
JMAMでは、ストレス耐性診断の結果をもとに、ストレスとの向き合い方を学ぶ公開セミナーを実施しております。管理職自身がどのように自らのストレスに対処するべきかについて理解を深めるための学習から、実践的なトレーニングまで実施可能です。
詳細は下記からご覧ください。
企業がストレスマネジメントの実践を支援するには?
従業員のストレスマネジメントを効果的に支援するためには、組織的なアプローチが必要です。
そこで最後に、管理職のストレス耐性を向上させ、そして定着させるための具体的な施策について紹介します。
メンタルヘルス研修
メンタルヘルス研修は、ストレスの仕組みや対処法について学び、実践的なワークを通じて理解を深めるための研修です。
管理職向けの研修では、自身のストレスマネジメントに加えて、部下のメンタルヘルスケアについても学ぶ機会を作ると良いでしょう。
レジリエンス研修
レジリエンスとは、困難な状況から立ち直る力、しなやかな回復力を指します。特にプレッシャーの強い立場にある管理職には、高いレジリエンスが求められます。
レジリエンス研修では、ストレス状況下での思考パターンの理解や、効果的な対処法の習得を目指します。
具体的には、逆境を成長の機会として捉える考え方や、困難な状況でも冷静に判断する技術、周囲のサポートを適切に活用する方法などを身に付けることが大切です。
なお、JMAMの公開セミナー「Q-DOG診断付き ストレス耐性を知って高める レジリエンスコース」では、事前のQ-DOG診断で自身のストレス耐性と自覚度を客観的に把握した上で、レジリエンスの身に付け方を学ぶことができます。
詳細は下記からご覧ください。
1on1ミーティング
定期的な1on1ミーティングは、管理職のストレス状態を把握し、適切なサポートを提供する重要な機会です。
上司と部下が1対1で対話する機会を定着させることで、業務上の課題やストレス要因について率直な意見交換が可能になります。
また、業務の進捗確認だけでなく、メンタルヘルスの状態や必要なサポートについても話し合うことで、部下一人ひとりの適切な接し方やマネジメント方法が見えてきます。
しかし、「効果的な1on1をするにはどうすれば良いのか?」「対話の質を向上させるには何が必要か?」といった悩みをお持ちの企業様も多いのではないでしょうか。
そんな課題を解決するのが、AI技術を活用した1on1支援ツール「KizunaNavi(キズナナビ)」です。1on1での対話を科学的に分析し、課題や改善点を具体的に示すため、より効果的なサポートが可能になります。面談内容の自動記録・解析機能により準備や記録の手間を大幅に削減できるため、マネジャーの負担を軽減するのにも役立ちます。
組織全体の対話力を高め、パフォーマンス向上につなげたい担当者様は、ぜひ下記からKizunaNaviの詳細をご覧ください。
産業保険スタッフ、外部EAPなどの相談窓口を設置する
専門家による相談窓口の設置は、ストレスマネジメントを組織的にサポートする重要な施策です。
産業医や保健師などの産業保健スタッフ、また外部のEAP(従業員支援プログラム)サービスを活用することで、従業員は必要に応じて専門家のアドバイスを受けることができます。
悩みの受け皿があることで、管理職は早期にストレスの兆候に気づき、適切な対処法を見出しやすくなるでしょう。
まとめ
ストレス自体は必ずしも悪いものではなく、成長を促す前向きなストレス(ユーストレス)と有害なストレス(ディストレス)があります。
社会人として、自身の健康と生産性を維持していくには、ディストレスを軽減しながら、ユーストレスも含めた総合的なストレスマネジメントを実行していくことが重要です。
また、企業としてはストレスマネジメントの実践を促すだけでなく、実践を継続させるための工夫も取り入れることが大切です。
メンタルヘルス研修やレジリエンス研修の実施、1on1ミーティングの活用など、管理職一人ひとりがストレスと上手く付き合える環境づくりに取り組み、組織全体の生産性向上とメンタルヘルスケアの充実を目指しましょう。
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本プログラムでは、ストレスマネジメントに関する基礎知識から実践的なテクニックまで、体系的に学習することが可能です。管理職は自身のペースで学習を進められるため、多忙な業務の合間を縫って学習時間を確保できます。
また、ストレスマネジメント以外にも、リーダーシップ、コミュニケーション、目標管理など、管理職として必要な幅広いスキルを網羅的に学ぶことができます。
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