- 対象: 全社向け
- テーマ: DX/HRTech
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2030年問題とは?企業に与える影響と今後求められる3つのスキルを解説

2030年問題とは、労働人口の急激な減少により企業経営に深刻な影響をもたらす社会課題です。高齢化率が30%を超え、人材獲得競争の激化、社会保障費の増大、国内市場の縮小という3つの影響により、従来の経営戦略では対応が困難になります。
今回は、2030年問題の基本概要から企業への具体的影響、今すぐ取り組むべき4つの対策、そして2030年を生きるビジネスパーソンに求められる3つのスキルまで、人材戦略の見直しに必要な情報を解説します。
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2030年問題とは
2030年問題とは、労働人口の急激な減少により、GDP(国内総生産)の減少、医療・介護費の増加、社会保険の支出増加などが懸念される社会問題の総称です。
まずは、その概要と2025年問題、2040年問題との違いについて解説します。
2030年問題の概要
2030年問題の核心は、高齢化の進行と労働人口の減少にあります。
内閣府「令和6年版高齢社会白書」によると、高齢化率(65歳以上の人口割合)は2023年時点で29.1%でしたが、2030年には30.8%まで増加すると予測されています。これは総人口の約3人に1人が高齢者になることを意味します。
この変化により、労働力不足が深刻化し、経済活動の維持が困難になるおそれがあります。
現在の中堅社員である団塊ジュニア世代が退職時期を迎える中、従来型ビジネスモデルの知見を持つ人材が流出するリスクが高まっています。
出典:
・内閣府「令和6年版高齢社会白書「第1章 高齢化の状況」」
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2024/zenbun/pdf/1s1s_01.pdf
2025年問題・2040年問題との違い
2030年問題は、類似する「2025年問題」「2040年問題」とは発生時期と影響範囲が異なります。
2025年問題は、団塊の世代(1947年~1949年生まれ)が後期高齢者(75歳以上)になることで発生する問題です。医療・介護需要の急増が主な課題となります。
2040年問題は、団塊ジュニア世代(1971年~1974年生まれ)が65歳以上の高齢者になる年に起こる問題の総称です。
超高齢社会がさらに進行し、労働人口の落ち込みにより、経済や医療などの社会システムの持続が困難になる懸念があります。
一方、2030年問題は、これらの中間段階として位置づけられ、労働人口減少の本格化と高齢化率30%超えという節目を迎える重要な転換点です。
2030年問題への対応が、その後の2040年問題への準備期間としても機能します。今後5年間の取り組みが企業の将来を左右する可能性があるのです。
2030年問題が企業に与える影響
2030年問題は企業経営に3つの重大な影響をもたらします。人材獲得競争の激化、社会保障費の増大による負担増加、そして国内市場の縮小です。
それぞれどのように影響するのかを詳しく解説します。
人材獲得の競争激化
労働人口の減少により、企業間の人材獲得競争はさらに激化し、採用コストと人件費の大幅な高騰が予想されます。
現在すでにDX人材の確保が困難な状況で、2030年に向けてこの傾向はより深刻化します。
優秀な人材を獲得するための条件は年々厳しくなり、従来の採用手法では対応が困難になる可能性があるのです。
社会保障費の増大
超高齢社会の進行で、年金や医療・介護費などの社会保障費は大幅に増加し、現役世代の負担はより深刻化する見込みです。
企業にとっては、社会保険料の負担増加が人件費を押し上げる要因となります。
限られた人材予算の中で、効率的な人材活用と育成を進めることがより重要になってきます。
国内市場の縮小
人口減少により国内市場のさらなる縮小が予想され、従来のビジネスモデルの転換が迫られます。
場合によっては海外市場への展開が成長戦略の要となり、グローバル基準の確保とグローバル人材の採用・育成が急務となります。
2030年問題に向けて企業がとるべき施策
2030年問題に対応するための対策として、人材育成の強化、職場環境の見直し、DX推進、シニア人材の活用などがあげられます。
具体的な施策の内容について解説します。
人材育成の強化
現在の中堅社員である団塊ジュニア世代の多くは従来型ビジネスモデルで成功体験を持っているため、今後ビジネスで必須となるDXやAIの知識やスキル習得がポイントになります。
そのため、リスキリングプログラムを実施し、スキル習得を支援することが重要です。
また、変化の激しい時代の中、自律して成果を出せる人材の育成が急務です。
キャリア自律支援の体制を整備し、従業員が中長期に成長できる環境を提供しましょう。育児・介護と仕事との両立に悩む従業員のキャリア開発も促すことが可能です。
ビジネスモデルのピボットが必要になった際も、多様なスキルを持つ人材がいれば柔軟に対応できます。
一人ひとりの能力底上げが、組織全体の適応力向上につながります。
職場環境の見直し
より良い職場を求めて転職する人材が増加する傾向にあるため、魅力的な職場環境の整備は人材確保の重要な要素です。
働きやすい職場環境を構築し、従業員の定着とエンゲージメント向上を図りましょう。
特にDX人材は転職市場での需要が高く、優秀な人材の流出を防ぐためには職場環境の差別化が必要です。
具体的な取り組みとして、フレックスタイム制やリモートワークの導入、スキルアップ支援制度の充実、心理的安全性の確保などがあげられます。
DX推進
DXを推進し、従業員がより創造的な業務に集中できる環境を整備しましょう。
デジタル技術を活用し無駄な作業をできるだけ削減することで、限られた人材をより付加価値の高い業務に配置できます。
DX推進は単なる業務効率化にとどまらず、人材不足という根本的な課題に対する解決策でもあります。
また、DXを通じて新たなビジネスモデルの構築が可能になれば、国内市場縮小の影響を補う新たな収益源の確保にもつながるでしょう。
シニア人材の活用
改正高年齢者雇用安定法に基づき、65歳までの雇用確保に加えて70歳までの就業確保が努力義務となっています。
定年延長や嘱託社員制度により、就業意欲の高いシニア人材に長く働いてもらえる環境を提供しましょう。
シニア人材の活用は、人材不足を補うだけでなく、豊富な経験と専門性を活かせるメリットがあります。
特に団塊ジュニア世代の退職が本格化する前に、彼らの持つ業務知見や人脈を組織に残すことが重要です。
出典:
・厚生労働省「高年齢者雇用安定法 改正の概要」
https://www.mhlw.go.jp/content/11700000/001245647.pdf
2030年を生きるビジネスパーソンに求められる3つのスキル
英オックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授が2017年に発表した論文「THE FUTURE OF SKILLS EMPLOYMENT IN 2030(2030年におけるスキル雇用の未来)」でトップ3にあげたのは、戦略的学習力、心理学、指導力の3つでした。
企業成長を目指す人材育成担当者へ向けて、これから求められていく3つのスキルを解説します。
戦略的学習力
戦略的学習力とは、何を、どのように学ぶべきかを見極める力です。
変化の激しい現代社会で活躍し続けるためには、自分自身が社会の中でどのような役割を果たすべきか、そして、どんな知識やスキルを、どのような方法で身につけるべきかを正しく判断することが非常に重要です。
この能力は、AIにはない、私たち人間ならではの強みといえるでしょう。
心理学
心理学は、相手の心理を理解して人を動かす力と、自分の感情をコントロールする力を身につけるための知識体系です。
DX推進においても、システムの導入や業務プロセスの変更に対する従業員の抵抗感を理解し、変化を受け入れてもらうためのコミュニケーションが重要です。心理学は、それを実現するための鍵となります。
指導力
指導力は自分の意図を相手に伝え、相手が行動できるようにする力を指します。
相手にわかりやすく伝える能力と、相手の力量を見極めて任せる能力が必要です。
2030年に向けて労働人口が減少する中、一人ひとりの生産性向上が重要になります。そのためには、効果的な指導で従業員の能力を最大限に引き出すことが不可欠です。
また、人材の価値観や働き方が多様化していく中、柔軟な思考と適応力を高めていくことが求められます。JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)では、この点に着目したマネジメント研修をご用意しています。
実習やグループワークを取り入れた実践的な研修で、現場で直接役立つスキルの習得を目指せます。
まとめ
2030年問題は、労働人口の減少により企業経営に深刻な影響をもたらす重要な社会課題です。
従来の人材戦略では対応が困難になっていくため、人材育成の強化によるスキル底上げ、職場環境の見直しによる人材定着、DX推進による生産性向上、そしてシニア人材の活用による知見継承などの施策実行が急務です。
2030年までの限られた時間の中で、これからの人材戦略の見直しと実行が企業の将来を左右します。長期的視点に立ち、人材育成への投資を検討しましょう。
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