- 対象: 全社向け
- テーマ: DX/HRTech
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DXリテラシーとは?企業のDX推進に必要な能力や人材育成のポイントも解説

デジタル技術の急速な進展により、ビジネスの在り方が大きく変化しています。特に生成AIの台頭は、私たちの働き方や必要とされるスキルに大きな変革をもたらしています。このような時代において、企業が競争力を維持・強化していくために不可欠なのが「DXリテラシー」です。
しかし、その具体的な定義や、実際に必要とされる知識・スキルについては、まだ十分な理解が進んでいないのが現状ではないでしょうか。
今回は、DXリテラシーの基本的な考え方から、企業における人材育成の方法まで、実践的な視点で解説します。
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DXリテラシーとは
DXリテラシーとは何か、ITリテラシーとの違いもあわせて解説します。
DXリテラシーの定義
DXリテラシーとは、DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義を正しく理解し、それを実現するために必要となる知識やスキルのことです。
IT技術を理解することにとどまらず、DXを企業の競争力強化や業務改革に活用するために必要な基本的な能力を意味します。
その中には、ビジネスにおけるデジタル化の意義を認識し、具体的にどのように適用するかを考案して実行する能力が含まれます。
なお、DXリテラシーは経済産業省が2022年12月に発表(2024年7月改定)した「デジタルスキル標準」で定義されています。
デジタルスキル標準は、データ活用やデジタル技術の進化に伴う産業構造の変化に対応し、企業が競争優位性を確立するために必要なスキルを定めたガイドラインです。具体的な枠組みとして、DXリテラシー標準とDX推進スキル標準が設けられています。
DXリテラシー標準ではすべてのビジネスパーソンが身に付けるべき能力やスキルが示され、DX推進スキル標準ではDXを推進する人材が習得すべき知識やスキルが示されています。
デジタルスキル標準を参考にDXリテラシーを正しく理解し、社内での育成強化を進めることが、企業の未来にとって不可欠なステップであるといえるでしょう。
出典:経済産業省・独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「デジタルスキル標準 ver.1.2」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/skill_standard/20240708-p-1.pdf
ITリテラシーとの違い
DXリテラシーとITリテラシーは、どちらもデジタル技術に関する知識やスキルを指しますが、その範囲と目的には違いがあります。
ITリテラシーは、IT技術を効果的に活用するための基本的な知識やスキルを指します。具体的には、コンピューターやソフトウェアを使いこなすための能力、ネットワークやセキュリティに関する基礎知識、データの管理や処理に必要な技術が含まれます。
言い換えれば、ITリテラシーは主に「DX推進の手段としてのIT技術に対するリテラシー」です。
一方で、DXリテラシーは、デジタル技術を活用して組織を変革(デジタルトランスフォーメーション)するために必要な知識やスキルを指します。
単なる技術的な理解にとどまらず、企業戦略や業務プロセスの変革、データ駆動型の意思決定やイノベーションを支える能力を含みます。
つまり、DXリテラシーは、ITリテラシーを超えて、「企業全体のデジタル化を推進するための広範なスキルセット」を求めるものです。DXリテラシーの一部にITリテラシーが含まれているという位置づけです。
DXリテラシーはなぜ重要なのか?
デジタル化が急速に進む現代において、企業が競争力を維持し、変化に柔軟に対応するためには、DXに関する知識やスキルが不可欠です。
特に、日本企業は「2025年の崖」と呼ばれる問題に直面しています。この問題は、2025年以降に、現在の古いシステムを使用し続けることによって、年間最大12兆円の経済損失を被る可能性があるという警告を意味します。
このままでは、デジタル化の波に乗り遅れ、競争力が損なわれてしまうかもしれません。
しかし、多くの日本企業では、DXを推進するための人材が不足しているのが現状です。デジタル化の進展に追いつけず、事業の変革や新しいビジネスモデルの構築が難しくなるおそれがあります。
企業が社会的課題の解決や変革に対応し、かつ競争力を維持または強化していくには、社員のDXリテラシーの向上が必須といえます。
出典:経済産業省「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~(サマリー)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf
DXリテラシーを身に付けるための4要素
経産省の「デジタルスキル標準 ver.1.2」では、DXリテラシーを養うために必要な4つの要素が示されています。
下記では、各要素と、それを身に付けるための学習項目の例を紹介します。
出典:経済産業省・独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「デジタルスキル標準 ver.1.2」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/skill_standard/20240708-p-1.pdf
マインド・スタンス
マインド・スタンスは、デジタル化による社会の変化に対応して新たな価値を創出するための意識や姿勢、行動のことです。
DXを自分ごととして捉えるための学習項目として、下記の7つが推奨されています。
変化への適応 | 既存の価値観を尊重しつつ、環境や働き方の変化に適応するために主体的に学ぶこと |
---|---|
コラボレーション | あらゆる専門性を有する人々との協働の重要性を理解し多様性を尊重すること |
顧客・ユーザーへの共感 | 顧客・ユーザー視点での理解を深め課題を発見すること |
常識にとらわれない発想 | 既存の概念や価値観にとらわれずにアイデアを生み出すこと |
反復的なアプローチ | 新たな取り組みなどについて、フィードバックから試行錯誤や改善を繰り返すこと |
柔軟な意思決定 | 多様な視点から柔軟かつ臨機応変な意思決定を行うこと |
事実に基づく判断 | 適切かつ客観的なデータから物事を判断すること |
Why(DXの背景)
Why(DXの背景)は、社会やユーザーにおけるDXの必要性を理解するために求められる知識のことです。
下記の3つの観点から理解を深めることが推奨されています。
社会の変化 | 社会の変化を理解し、社会課題の解決のためにデータやデジタル技術の活用が有用であることを理解する |
---|---|
顧客価値の変化 | 顧客価値について理解を深め、デジタル技術の進展でどのように変化してきたか理解する |
競争環境の変化 | デジタル技術の進展で、ビジネスにおける競争力の源泉や国境を越えた競争が広がりをみせていることを理解する |
What(DX で活用されるデータ・技術)
What(DXで活用されるデータ・技術)は、DX推進のために必要なデジタル技術などに関連した知識のことです。
下記の8つの学習項目が推奨されています。
社会におけるデータ | 社会で活用されるさまざまなデータを理解する |
---|---|
データを読む・説明する | データの分析手法や読み取り、適切な説明について理解する |
データを扱う | データの抽出や加工、デジタル技術に活用しやすいデータの整備について理解する |
データによって判断する | データ分析のアプローチや分析結果の見方について理解する |
AI | AIの仕組みや可能性、精度を高める使い方を理解する |
クラウド | クラウドとオンプレミスの違いやサービスの提供形態を理解する |
ハードウェア・ソフトウェア | PCなどが動作する仕組みや社内システムの仕組みを理解する |
ネットワーク | ネットワークやインターネットの仕組みを理解する |
How(データ・技術の利活用)
How(データ・技術の活用)は、デジタル技術をビジネスで利用する方法や、その際の留意点などを指します。
下記の5つの学習項目からツールの活用方法を身に付け、業務で利用することが推奨されています。
データ・デジタル技術の活用事例 | ビジネスでのデジタル技術の活用事例を知り、自社への適用場面を想像する |
---|---|
ツール利用 | ツールの利用方法を理解し、適切なツールを選択できる |
セキュリティ | セキュリティ技術や個人が取るべき対策を理解する |
モラル | データ活用の禁止事項や流出の危険性を知り、適切にインターネット上でコミュニケーションが図れるようにする |
コンプライアンス | ・データ活用の規制や利用規約について理解し、業務上でも注意する ・主に個人情報(プライバシー)の適切な取り扱い、知的財産権の保護、著作権侵害への対策などの重要な要素について理解している |
社内のDXを進めるために必要な能力・スキル
社内でDXを進めていく人材には、主に下記のような5つの能力やスキルが求められます。
- デジタル技術を活用して新たなビジネスアイデアを企画する力
- DXプロジェクトを効果的に管理・推進する力
- データを活用してビジネスの意思決定を支援する力
- ビジネスに適したデジタル技術を選び、システムやサービスを設計する力
- 企画したシステムやサービスを実現し、ビジネス価値を創出する力
これらのスキルを備えた人材が社内のDXを推進することで、変革のスピードが加速しやすくなり、競争力を維持・向上させることにつながります。
DX人材を育てる人材育成のポイント
DXの成功を目指すには、企業全体でDX人材の育成に取り組むことが重要です。
最後に、DX人材を育成するための4つのポイントを紹介します。
なお、DX人材の育成事例を知りたい方はこちらをご覧ください。
DX人材の育成事例5選|育成を成功させるステップから注意点まで解説
経営者主導で意識改革を行う
DXの意義や目的を、経営陣が主体となり社員に伝え、企業全体で意識改革を促す必要があります。
そのためには、経営陣がDX推進の本質を理解することが重要です。なぜ自社にとってDXが不可欠なのか、どのようなビジネス課題を解決できるのかを自らの言葉で語り、社員を巻き込むことが成功の鍵となるでしょう。
また、経営者自らがDX推進のための専任組織や体制を整備することで、より意識改革のスピードが高まります。
全社的な目標を設定する
DX推進を成功させるには、社内におけるDXの定義と目標を明確にしておくことが重要です。
DXがもたらすべき成果を定義し、経営戦略と連携させた上で、全社員が共通のビジョンを持てるようにしましょう。
目標設定には、現状と理想のギャップを正確に把握し、それを埋めるための具体的なアクションプランを策定することが求められます。
DXに関する研修を実施する
DXの実現には、社員一人ひとりのデジタルリテラシーの向上が不可欠です。そのためには、社員が自分の業務にどのようにデジタル技術を活用できるかを学べる場を提供することが重要です。
オンライン研修やオフラインでのワークショップ、eラーニングなど、さまざまな形式の研修を通じてDXの基礎から応用までを学べる機会を提供しましょう。
なお、JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)では、DXリテラシーの向上に役立つeラーニングを提供しています。ぜひご活用ください。
DX推進の第一歩 全社員に必要なDXの基礎が身につく 法人向けeラーニング
なお、上記のパンフレットは無料でご覧いただけます。
DX関連の資格取得を支援する
社員がDXに関する知識を深め、スキルを身に付けるためには、資格取得を支援することも効果的です。資格取得を通じて、社員は体系的に知識を学び、実務に活かせる能力を養うことができます。
特に、データサイエンティストやITパスポート試験、G検定など、DXに関連する資格を取得することで、社員はデジタル技術をビジネスに活用するための基本的な能力を高めることができます。
また、資格取得に対してサポートやインセンティブを提供し、社員が積極的に学び続けられる環境を整備することも重要です。
まとめ
DXリテラシーは、デジタル時代を生き抜くためにすべてのビジネスパーソンに求められる必須のスキルです。ITスキルの習得にとどまらず、マインド・スタンスの醸成から実践的な技術の活用まで、幅広い要素を含んでいます。
企業がDXを成功させるためには、経営層主導での意識改革、明確な目標設定、そして体系的な人材育成が不可欠です。
研修の実施や資格取得の支援など、具体的な施策を通じて企業全体のDXリテラシー向上を図ることで、持続的な競争力を獲得することにつながるでしょう。
DX基礎能力試験
日本能率協会マネジメントセンターのDX基礎能力試験は、ビジネスパーソンが身に付けるべき、DXの知識やスキルを測定し、企業の現状を可視化できる試験です。
経済産業省が定義した「DXリテラシー標準」に準拠し、さらに、当社のDXに関する多様な知見を組み合わせています。
経済産業省定義「DXリテラシー標準」に準拠 DX基礎能力試験
自社のITリテラシーを定量化し、社内DX促進の基盤を作る
DX基礎能力試験は、全てのビジネスパーソンが身につけるべきDXの知識、スキルを測定し、組織の現状を可視化できる試験です。
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