- 対象: 全社向け
- テーマ: DX/HRTech
- 更新日:
DX推進はなぜ進まない?成功させるポイントと6つのステップ

デジタル化の波が押し寄せるなか、多くの企業がDX推進を始めています。しかし、DX推進には部署横断的な連携やDX人材の存在が必要であり、場当たり的な対応では思うように進めることができません。
今回は、DX推進の重要性や課題、成功のポイント、そして実際に成功を収めた企業の事例について紹介します。効果的なDX推進の道筋を見出すヒントとして、参考にしてみてください。
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DX推進の目的・重要性
企業がDXに取り組む理由は多岐にわたりますが、主要な目的と重要性を理解することで、組織全体の方向性が定まり、具体的な戦略を立てられるようになります。
まずは、DX推進の目的と重要性について解説します。
業務の仕組み化による生産性の向上
デジタルツールの活用により情報共有が円滑化され、業務効率が飛躍的に向上します。結果として、リソースの有効活用によるコスト削減、仕組み化が進むことで人に依存しない業務改善が実現できるでしょう。
また、業務プロセスの最適化に直結するため、作業時間の短縮や長時間労働の是正が可能となり、より働きやすい環境の構築にもつながります。
企業の競争力向上
DX推進は、企業の競争力を大幅に向上させる重要な戦略です。デジタル技術を活用することで、手作業では実現が難しかった、より緻密で正確な分析も迅速に行えるようになります。また、デジタル技術を組み合わせて、既存サービス・商品を改良するなど新しいアイデアが生まれることもあります。
DX推進は、多様化する市場環境に柔軟に対応する基盤づくりともいえるのです。
ニューノーマルな働き方への対応
デジタル技術を活用することで、場所や時間に縛られない柔軟な勤務体制が実現できます。業務の継続性が確保されるだけでなく、従業員の働き方の選択肢も広がるでしょう。また、オフィスコストの削減のような、新たな経営効率化の機会も生まれます。
近年、テレワークやオンライン会議の普及により、従来のオフィス中心の働き方が大きく変化しました。ニューノーマルな働き方に対応できる組織体制をつくることは重要な経営戦略となります。
2025年の崖問題(レガシーシステム問題)の解決
DX推進は2025年の崖問題の対策にもつながります。「2025年の崖」とは、多くの日本企業が直面するレガシーシステム(※)問題のことです。
レガシーシステムは企業の基幹システムなどで多く見られ、システム障害やメンテナンス費用・運用コストの増大などさまざまな問題を引き起こします。新技術の導入を妨げ、ビジネスの柔軟性を損なう問題です。
経済産業省の試算によると、この問題への対応が遅れると2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があります。DX推進がうまく進めば、レガシーシステムへの対処にもつながり、企業の持続的成長を確保することができます。
※レガシーシステム・・・古い技術や仕組みのこと。
企業のDX推進はなぜ遅れる?進まない3つの理由
多くの企業がDXの重要性を認識しながらも、推進に苦戦しています。DX推進が遅れる理由や直面する課題は企業によってさまざまですが、いくつかの共通点があります。
DX推進が進まない典型的な3つの理由を、詳しくみていきましょう。
全社的なDXの取り組みができていない
DXに取り組む企業は増加していますが、全社的に取り組んでいる企業は全体の3割以下にとどまっています。DXの全社戦略がなく横断的な取り組みができていないことが、企業のDX推進が遅れる大きな理由のひとつです。
特定の部署だけでDXが進んでいる企業もありますが、既存のシステムがブラックボックス化しているケースもみられます。その結果、部署間の連携が難しく、充分にデータ活用も進まず、改善できないといった問題が起きています。
出典:経済産業省「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf
DX人材が社内にいない
デジタル技術を使いこなせる人材の不足により、内製でシステム開発をしておらず、アイデアを形にできる人が社内にいないことが、DX推進が遅れる要因のひとつです。
実際に自社内で開発を行っている企業は25%ほどしか存在しません。この状況下で、人材減少と需要増加が相まって、今後DX人材を確保することはさらに難しくなると予想されます。
DX推進には継続的なリソース確保が必要ですが、人材不足によりプロジェクトが中途半端な状態で頓挫してしまう可能性も高くなるでしょう。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構「DX白書2023」
https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/dx-2023.html
短期視点での教育施策しかできていない
多くの企業では、DX推進にあたって場当たり的で短期的な教育施策しか打ち出せていない状況です。
「DX」の範囲が広いことから、教育範囲が明確になっていないことが原因として考えられます。個人・事業会社・IT企業など、さまざまな観点での「DX」があり、企業で認識を統一できていないのです。
DX推進の目的が定まっていなければ、目標や具体的なアクションプランを明確に設定することはできません。そのため、単なる業務のデジタル化や効率化に留まり、全社的なDX推進に至っていない企業が多いのが現状です。
DX推進を成功させる4つのポイント
DX推進が遅れる理由を踏まえ、企業がDX推進を効果的に進めるためのポイントを4つ紹介します。これらのポイントを押さえることでDXの取り組みをより円滑に、そして成功へと導くことができるでしょう。
経営陣主導で全社的な意識改革をする
経営陣がDXの目的と意義を明確に全社に伝え、従業員の意識変革を促す必要があります。まず経営陣がDX推進に取り組む意義を本質的に理解し、自分の言葉で「なぜ自社でDXを推進すべきなのか」を説明できるようにすることが大切です。
同時に、経営陣が主導して、DX推進組織の整備を行うことも重要です。各事業部門が主体的にDXを推進する一方で、全社DX推進組織を設置し、この組織が後方支援や環境整備、技術的・専門的な支援を行う体制を築きましょう。
DXがもたらす変化と必要な協力について、繰り返し従業員に浸透させることがポイントとなります。
経営戦略にもとづいたゴールを設定する
DXを成功させるには、まず自社でDXの定義とゴールを明確にし、社内で共通認識を形成することが重要です。経営ビジョンと現状のギャップを分析し、そのギャップを埋めるための具体的なDX戦略を策定します。
例えば、5年後のあるべき姿を経営ビジョンとして掲げ、そこから逆算してDXの目標を設定するアプローチが効果的です。明確なビジョンやゴールなしにDXに着手すると、失敗のリスクが高まります。
自社にとって「DXの成功」とは何かを分かりやすい言葉で定義し、全社で共有することが成功への第一歩となるでしょう。
DX人材の育成
システムの内製化ができていない企業でも、アイデアを具体化し、開発者と対等に会話ができる「繋ぐ人」の育成が重要です。
DX推進では、現場を知らないIT担当者がシステムを導入するために実務に即さないものになってしまい、一方で現場はITスキル不足で意見や企画ができないという課題がよく起こります。
現場をよく知る従業員が一定の知識・スキルを身に付けることで「繋ぐ人」の役割を果たし、両者の橋渡しが効果的にできるようになります。
株式会社日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)ではDX推進のコアとなる変革をリードする人材育成を支援する「DX推進支援サービス」を提供しています。DM推進者の育成に課題を感じている企業様は、ぜひ一度お問い合わせください。
スモールスタートで実行する
DX推進を成功させるには、スモールスタートで段階的に進めることが重要です。いきなり大規模なシステム導入を行うと、現場の混乱や業務の停滞を招くおそれがあります。まずは一部の部署や業務からデジタル化に着手し、成功事例を作ってから横展開していくアプローチが効果的です。
小さな単位で実装とテストを繰り返す手法を使うことで、仕様変更に柔軟に対応できます。DX推進の過程では、想定外の変更や方向転換が必要になることも多いため、この柔軟性は非常に重要です。
DX推進の基本ステップ
次に、DX推進を効果的に進めるための6つの基本ステップを紹介します。組織全体のDX推進をより確実に、そして効率的に進めるために、順を追って実行していきましょう。
【STEP1】目的を設計する
DX推進にまず必要となるのが、目的設計です。事業戦略や組織のビジョンに結びついた具体的な目標を設定し、デジタル技術の活用方法を検討しましょう。組織全体の意識統一につながりもつながります。
この際、目標と現状のギャップを分析し、適切なデジタル技術やITツールを選定することが重要です。従業員の意見も考慮しつつ、経営的観点とのバランスを取りながら目的を設計することが求められます。
【STEP2】現状を把握する
従業員のITスキルを測定する試験を導入し、自社の状況を客観的に評価、把握しましょう。不足している知識やスキルを把握すれば、効果的な育成計画を立てることができます。
同時に業務の棚卸しを行い、既存の社内システムと各業務の関係性、業務プロセスの全体像を把握します。現場の担当者へのヒアリングを通じて具体的な課題を明らかにし、必要に応じてシステムの改修や業務プロセスの改善を検討することが大切です。
【STEP3】従業員の育成を行う
DX推進には、従業員の育成が不可欠です。部門間や個人によってDXスキルの差が大きいため、必要な知識・スキルを教育し、DX推進の土台を作ることが重要です。
同時に、専門的なスキルが必要な分野では、外部の専門家の活用も検討しましょう。ただし、プロジェクト全体を統括する役割は、会社や業界を理解している自社従業員が担うことが望ましいです。
また、経営陣直轄のプロジェクトチームを組織し権威を持たせることで、現場の協力を得やすくなります。
【STEP4】自分ゴト化の醸成
DXを成功させるためには、全従業員が自分の問題として捉える「自分ゴト化」が重要です。各従業員が自身の業務に落とし込み、具体的な改善点を考えることで、DXへの理解と積極的な参加を促進できます。
経営陣はDXの目的や意義を明確に伝え、従業員の声に耳を傾けながら、現場の実情に即した施策を展開することが求められます。また、小規模なプロジェクトから始め、成功事例を積み重ねることで、組織全体の意識改革と自発的な取り組みを促すことができるでしょう。
JMAMでは、現場担当者がDXを自分ゴトと捉えることを第一歩として、これからDXを牽引することを期待するDX推進リーダー向けの研修を行っております。
「自分ゴト化DXでビジネス・業務を変えるDX自分ゴト化ワークショップ」はこちらをご覧ください。
【STEP5】推進人材”繋ぐ人”の育成
アイデアを具体化し、開発者と対等に会話ができる人材「繋ぐ人」の育成も行いましょう。
教育方法としては、DX推進における役割を明確にし、それに必要な知識・スキルを身につける体系的な教育が効果的です。全従業員のDXリテラシー向上と変革風土の醸成には、人事部門主導で適切な人材配置とキャリアデザインに応じた学習設計を行うことが望ましいでしょう。
DX人材の育成を体系化したい企業様や、社内に教育のリソースがないという企業様は、ぜひ一度JMAMへご相談ください。
【STEP6】意欲を引き出す
DX推進の成功には、従業員の意欲を引き出すことが重要です。DXの知識とスキルの習得により、DX推進人材としてのキャリアパスを明確に示すことで、モチベーションの向上につながります。
また、試験制度を導入し、個人のスキルを公正に評価することで、学習意欲を刺激することができるでしょう。これらの取り組みにより、従業員は自身の成長とDX推進の成果を実感でき、組織全体のDXへの積極的な参加を促進できるはずです。
DX推進を成功させた企業事例3選
経済産業省は、東京証券取引所および独立行政法人情報処理推進機構と共同で「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」を選定し、「DX銘柄2024」および「DX注目企業2024」を発表しています。DX推進において優れた取り組みを行っている企業として注目されている企業が選定されるものです。
出典:経済産業省「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/keiei_meigara/dx_meigara.html
これらの選定企業を中心に、DX推進の成功事例を紹介します。各社の取り組みから、成功のヒントを探ってみましょう。
株式会社LIXIL
株式会社LIXILは、「デジタルの民主化」を目指して従業員を価値創造の中核に据え、全従業員向けにノーコード開発ツールを導入するという取り組みを実施しています。その結果、導入から1年で2万件のアプリが開発され、そのうち1,500個以上が正式な業務用ツールとして活用されるという大きな成果を上げました。
若手社員や各部門が独自のアプリを開発し、部門を超えた活用が進んだことで、LIXILは「デジタルの民主化」を実現しています。
ヤマトホールディングス株式会社
ヤマトホールディングス株式会社は、特殊医薬品の厳密な品質管理と配送コスト低減が課題でした。
この課題に対し、IoTデバイスを活用したリアルタイムモニタリングシステムの導入と、自社ネットワーク上でのリカバリー対応体制の整備を行っています。さらに、医薬品専門資材によるエリア分けを徹底し、混載輸送を可能にしました。
安全性を確保しつつ配送コストを軽減することに成功し、新型コロナウイルスワクチンの輸送でも活躍しています。
イオンディライト株式会社
イオンディライト株式会社は、ファシリティマネジメント業界の人手不足と有資格人材の高齢化という課題に直面していました。
この課題に対し、全社的なDX推進とITリテラシー教育の強化に取り組みました。具体的には、DX動画学習の導入、ITパスポート取得の推進、そして推進人材に対しては選抜型の「DXアイデア創出研修」と段階的に施策を行っています。その結果、社員のDXに対する意識が変わり、自身の業務改善にDXを活用しようとする前向きな姿勢が醸成されました。
さらに、ITスキル向上によるキャリアアップを目指す社員も現れ、持続的成長への基盤が構築されつつあります。
まとめ
DXの推進には「アイデアを具体化させ、開発者と対等に会話ができる人(=繋ぐ人)」の育成が重要です。また、部門間、個人のITリテラシーを一定の水準まであげて土台を作ることで、全社的なDX推進が実現できます。
今回紹介した基本ステップや企業事例を参考に、効果的なDX推進を進めていきましょう。
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