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  • 対象: 全社向け
  • テーマ: 研修/教育
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ハラスメント研修の効果を高めるポイントやカリキュラム例を紹介

ハラスメント研修の効果を高めるポイントやカリキュラム例を紹介

近年、職場におけるハラスメントの相談が増えており、未然防止の重要性が高まっています。企業がハラスメント行為を放置すると、離職率の上昇やイメージの低下だけでなく、法的・賠償責任を負うなどのリスクも発生します。そのため、全従業員がハラスメントに関する正しい知識を身に付け、未然に防止することが重要です。

今回は、ハラスメント研修の必要性や種類、カリキュラム例や研修の成果を高めるポイントについて紹介します。

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ハラスメント研修の必要性

厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和6年3月公表)によると、過去3年間でハラスメントの相談があった企業の割合は下記の通りでした。

  • パワハラ 64.2%(令和2年度比:+16.0%)
  • セクハラ 39.5%(令和2年度比:+9.7%)
  • 顧客等からの著しい迷惑行為 27.9%(令和2年度比:+8.4%)
  • 妊娠・出産・育児休業等ハラスメント 10.2%(令和2年度比:+5.0%)
  • 介護休業等ハラスメント 3.9%(令和2年度比:+2.5%)
  • 就活等セクハラ 0.7%(令和2年度比:+0.3%)

出典:厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40277.html

上記の調査より、いずれのハラスメントも令和2年度と比べて発生割合が増加していることがわかります。

企業を健全に運営するためには、従業員に対してハラスメント研修を行うことが重要です。ここでは研修の必要性について具体的に説明します。

従業員がハラスメントに対して正しい認識をもつため

ハラスメント研修が必要な理由のひとつは、従業員一人ひとりがハラスメントに対する正しい認識を持ち、未然に防ぐことにあります。

ハラスメントが起きる原因のひとつは、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)であるといわれています。本人にハラスメントの意識がなくても、個人の価値観を押し付けてしまうケースは少なくありません。

ハラスメント研修では、個々に多様な価値観が存在することを理解し、ハラスメント行為に関する知識を身に付けられます。正しい認識が広まるだけでなく、意識改革にもつながるため、ハラスメントを未然に防止できるのです。

ハラスメントの発生による悪影響を未然に防止するため

ハラスメントは、企業にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、職場の環境悪化による生産性の低下や離職者の増加などです。企業のイメージが低下することで、応募者が減少して採用コストが増加するリスクもあります。

人材流出や企業のイメージの低下などの悪影響を未然に防ぐためにも、ハラスメント対策として研修を実施することは重要です。

ハラスメントによる企業への悪影響については、下記のコラムで詳しく解説しています。

ハラスメント防止措置の一環となるため

労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法が、2020年6月に改正されました。この改正により、事業主に対して職場におけるハラスメント防止のための措置を講じることが義務付けられました。

事業者においては、下記の措置を講じなければならないことが明記されています。

①事業主の方針を明確にし、その周知や啓発を行うこと

パワーハラスメントにあたる内容や行ってはならないという方針を明確にする。また、パワーハラスメントの行為者については厳正に対処する旨の方針・その対処内容を就業規則等の文書に規定する。これらを管理監督者を含む社員に周知や啓発すること。

②相談に応じるとともに、適切な対応のための体制を整備すること

苦情を含む相談窓口を設置して、担当者が状況に応じて適切に対応できるようにすること。

③ハラスメントの事後の迅速かつ適切な対応をすること

職場においてハラスメントが発生した場合には、迅速に事実関係を確認し、速やかに被害者に対して適正な措置を行い、再発防止を講じること。

④あわせて講ずべき措置

プライバシーを保護するための措置、相談などを理由に解雇のような不当な扱いがされない旨を定めて周知・啓発すること。

出典:厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策、セクシュアルハラスメント対策、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です︕」
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/pdf/pawahara_gimu.pdf

ハラスメント研修の主な種類

企業が実施すべきハラスメント研修には、主に下記のような種類があります。

  • パワーハラスメント研修
  • セクシュアルハラスメント研修
  • モラルハラスメント研修
  • マタニティハラスメント研修
  • カスタマーハラスメント研修

それぞれの研修内容やポイントについて説明します。

パワーハラスメント研修

パワーハラスメント(パワハラ)研修は、企業における職場での不適切な行動や言動に対しての理解を深め、防止するための研修です。パワハラとは、職場での優位性を利用して他者に対して不適切な言動や圧力をかける行為を指します。パワハラに該当する代表的な言行は下記のとおりです。

  • 身体的な攻撃
  • 精神的な攻撃
  • 人間関係からの切り離し
  • 過大な要求
  • 過小な要求
  • 個の侵害

また、これらは上司と部下の関係だけでなく、同僚間でも発生する可能性があります。

研修の目的は、健全な職場環境を保ち、従業員全員が安心して働けるようにすることです。主に管理職やリーダー層が受講対象となりやすく、研修を通して自身の言動を振り返り、適切なコミュニケーションが取れるようになることを目指します。

研修の実施にあたっては、下記のコラムも参考になります。

セクシュアルハラスメント研修

セクシュアルハラスメント(セクハラ)研修では、セクハラに該当する行動の理解を深め、未然に防ぐためのスキルや対応策を学びます。セクハラとは、職場で行われる性的な言動により、従業員が不利益を受けたり、就業環境が害されたりすることをいいます。個人の性的固定観念を押し付けることも該当します。

研修の目的は、職場での性に関連した不適切な行動や言動を防止することです。研修での学びを通して、相手の意図や感情を理解し、適切に対応できるスキルを習得してもらいましょう。

モラルハラスメント研修

モラルハラスメント研修は、職場での倫理や道徳的な問題に関連した不適切な行動を理解し、これを防止することを目的とした研修です。モラハラとは、人格や尊厳を傷つけるような言動を指します。主に言葉や態度で相手を貶めたり、無視したりすることで、長期的に精神的ダメージを与えることが特徴です。モラルハラスメントは力関係にかかわらず、どのような関係でも発生する可能性があります。

研修を通して相手を尊重する意識を醸成し、適切なフィードバックを提示するスキルやコミュニケーションスキルを習得してもらうことが、効果を高めるポイントです。

マタニティハラスメント研修

マタニティハラスメント(マタハラ)研修は、妊娠中・育児休業中などの従業員に対する不適切な対応や言動を防ぐための研修です。従業員が妊娠や育児休暇を理由に差別や嫌がらせを受けないようにするための理解を深め、適切な対応を学びます。

カリキュラムを作成する際は、組織全体でサポート体制を強化することも意識しましょう。関連する法律やマタハラに該当する行為について理解を深めてもらった上で、より良い職場環境を構築するためのポイントなどを指導します。

カスタマーハラスメント研修

カスタマーハラスメント(カスハラ)研修は、顧客や取引先からの理不尽なクレームや圧力に対処するための研修です。カスタマーハラスメントとは、従業員に精神的なストレスを与える、顧客からの不当または悪質なクレームや過剰な要求のことです。長時間にわたる居座り、大声での暴言や罵声、従業員の氏名がわかる形でのSNSへの投稿、悪質な金銭の要求、不法侵入などがカスタマーハラスメントに該当します。

研修を通じて、カスハラの兆候を早期に察知し、冷静に対応する方法を習得してもらいましょう。従業員の精神的な負担を軽減し、業務の円滑な進行をサポートできます。

また、最終的には、組織全体でサポート体制を確立することを目指します。個人での対応に頼るのではなく、管理職やチーム全体で協力してカスハラに対応する体制を学び、従業員が安心して業務を続けられる環境をつくることが成功の鍵です。

なお、カスハラの詳細については、下記のコラムでも紹介しています。

JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)では、カスタマーハラスメント研修を受けられるeラーニングを提供しております。体系的な教育体制を構築したいとお考えの担当者の方は、ぜひ一度下記から詳細をご覧ください。

ハラスメント研修の対象者や内容

ハラスメント研修の対象者は、基本的に全従業員です。役員から、管理職、一般職、非正規雇用者まで、すべての従業員が職場におけるハラスメントへの理解を深め、防止策を学ぶ必要があります。これは、職場全体でハラスメントのない環境をつくるための重要な取り組みです。

しかし、研修で扱う内容は、参加者がどの立場にあるかで異なります。これは職務や役割によって直面するハラスメントのリスクや対応方法が異なるためです。そのため、階層別に研修を実施して、各従業員が自分の立場に応じた適切な対応を学べるようにしましょう。

例えば、管理職であれば、部下からの相談に対する適切な対応などを含めた管理職研修を実施します。一般の従業員などに対しては、ハラスメント行為の周知や未然防止のための一般職研修を実施することが大切です。

また、実施タイミングも重要なポイントです。新入社員が入社する時期や、異動が発生するタイミングで研修を実施することで、最新のハラスメント対策や対応方法をタイムリーに学ぶことができます。特に、異動によって従業員が新しいチームに入る際は、職場の文化やルールを再確認する良い機会となるでしょう。

ハラスメント研修のカリキュラム例

JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)が提供する、パワーハラスメントとカスタマーハラスメントに関するeラーニング研修を紹介します。カリキュラム作成の際の参考にしてください。

パワーハラスメント防止コース

すべてのビジネスパーソンを対象とした、40分程度でパワーハラスメント(パワハラ)に対する理解を深められるカリキュラムです。厚生労働省が定義するパワハラの概念から最新事例、有効な防止策まで学べます。

科目
1 なくならないパワハラ
2 パワハラは他人ごとではない
3 パワハラとは?
4 どんな言動がパワハラになる?
5 どんな職場で、パワハラは起こりやすい?
6 パワハラの行為者にならないために
7 パワハラに悩んだら
8 相談窓口
9 パワハラを未然に防ぐために

会社と社員を守るために カスタマーハラスメント対策コース【顧客対応編】

個人対応になりがちなカスタマーハラスメント(カスハラ)の対策について、全従業員が共通意識をもって、会社全体で対策を考えるためのカリキュラムです。主に管理職を対象としてビジネスパーソン全般にも適用できる内容です。

カスハラについてどのような対策を講じるべきか具体的な方法を知り、従業員一人ひとりがカスハラに適切に対処できるようになることを目指します。

科目
1 すり減る人々―カスハラの及ぼす影響
2 正当なクレームとカスハラの違い
3 カスハラの定義を知る
4 カスハラのタイプを知る
5 カスハラへの対応と対策を考える
6 カスハラの初期対応を知る
7 カスハラのタイプ別の対応を知る
8 会社の安全配慮義務ととるべき対応を知る

ハラスメント研修の成果を高めるポイント

ハラスメント研修は、従業員一人ひとりがハラスメントの正しい認識を持ち、適切に行動してもらうために有効です。しかし、ハラスメント研修をただ実施しただけでは職場環境の改善につながらず、期待する効果を得られないこともあります。

ハラスメント研修の成果を上げるためのポイントを5つ紹介します。

経営トップからの強い意志を伝える

ハラスメントに対して、経営陣がどのような意思をもっているのか周知することが重要です。ハラスメント行為を許さないこと、ハラスメントが発生したら厳格に対処することなど、経営陣の強い意志を繰り返し伝えましょう。

相互理解につながる内容を盛り込む

ハラスメントに対する理解度や価値観は一人ひとり異なります。そのため、悪意なく発した言葉あるいは行為がハラスメントになる可能性があることを理解しなければなりません。

特に、コミュニケーションの行き違いや誤解がハラスメントにつながるケースは多くあり、知らず知らずのうちに相手を傷つけたり貶めたりしてしまいます。

また、最近ではハラスメントに過敏になりすぎるケースも見られるようになりました。部下からハラスメントと言われることをおそれ、上司が必要な指導をためらうケースが増加しています。

このような問題は、相互理解が不十分なことが原因です。研修では、個々の捉え方の違いによってハラスメントが生じることを理解した上で、相手を尊重しながらコミュニケーションを取るスキルを習得することが重要です。

当事者意識をもたせるための工夫をする

ハラスメントに対して従業員一人ひとりが自分ごととして捉えなければ、ハラスメント研修の効果は低下してしまいます。座学だけでなく、研修では当事者意識をもたせるための工夫も意識しましょう。

例えば、実際に起きたハラスメントの事例を取り上げて、参加者同士でディスカッションしてもらうなどの方法が考えられます。講師への質問の機会を設ける、ロールプレイングで実演してもらうといったやり方もあります。

従業員が積極的に研修に参加して、一人ひとりが自分ごととして考えられるような研修の体制を構築することも重要です。

思い込みを排除するための仕掛けをつくる

思い込みは、中堅社員や管理職において起こりやすい事象です。過去の成功体験による思い込みがあると、いくら正しいハラスメント研修を実施しても、受け入れてもらえない可能性があります。

単に知識をインプットしただけでは研修の効果は薄れてしまいます。ハラスメントを防止する意識の醸成や、普段の言動を振り返る機会をつくることも重要です。

具体的には、内省や学習・実践の機会を設けて知識を学び直せるようにする「アンラーニング」を研修に取り入れる方法があります。アンラーニングとは、すでに身に付けたスキルや価値観、知識を意図的に「学びほぐす」ことを指します。

過去に成功した経験や慣れ親しんだ考え方を一度手放し、新しい知識やスキルを取り入れるための土台をつくるプロセスです。

研修内容を定期的にアップデートする

過去にはハラスメントとして顕在化していなかった事例も、時代の変化とともに問題として取り上げられることもあります。

例えば、近年は男性の育児に対する嫌がらせであるパタニティハラスメントやリモートワークに関するハラスメントなどが表面化するようになりました。会社として、ハラスメントに対する適切な対応を行うためにも、状況に合わせてハラスメント研修の内容を見直すことが求められます。

例えば、研修において社会問題として注目されているハラスメントを取り上げたり、受講者からの質問が多い事例を取り上げたりするのも効果的です。

ハラスメント防止の意識を定着させるには?

ハラスメント研修で正しい認識を習得しても、時間が経てばだんだんと知識が薄れていきます。職場でのハラスメントを防止するには、研修の実施だけでなく未然防止の意識を定着させるための工夫が必要です。

最後に、ハラスメント防止のために企業が取り組むべきことを紹介します。

ハラスメントを許さない組織文化をつくる

ハラスメントを防ぐためには、ハラスメントが起きにくい職場環境をつくる必要があります。

ハラスメントを許さない組織文化を醸成するには、経営陣が従業員に対して、ハラスメントを許さないメッセージを伝え続けることが重要です。

ハラスメントに対する企業の方針を明らかにしたうえで、経営陣自らがハラスメント防止のための取り組みを積極的に実践するようにしましょう。

ハラスメント研修は繰り返し行う

ハラスメント研修は、1度実施しただけではなかなか定着しません。組織文化の醸成やハラスメント防止のための行動を定着させるには、繰り返しハラスメント研修を実施して、十分に理解を深めてもらうことが重要です。

就業規則に禁止規定を設ける

就業規則にハラスメントの禁止規定を設けることは、パワハラ防止法でも義務付けられています。行為者への対処内容も含めて記載し、周知しましょう。

万が一ハラスメント行為が発生したとしても、就業規則に基づき、会社として厳正な対処を行うことで、再発の抑止力になるでしょう。

まとめ

職場におけるハラスメントの防止は、法律改正によって企業側の義務が明示されたことで重要度が増しています。全従業員がハラスメントの正しい認識をもち、未然に防止するためには、ハラスメント研修の実施が効果的です。

この際に意識すべきポイントは、時代とともに価値観が変化している点です。特に、40代から50代の従業員では、自身が経験してきた体験を部下や後輩社員にしてしまう傾向があります。そのため、これまでの価値観を見直し、新しい意識に切り替えるための働きかけを行う必要があります。

また、一度きりの研修では十分な変化を促すことは困難です。定期的な研修の実施を通じて、社内でのハラスメント防止の意識を定着させましょう。

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