企業の成長の停滞を乗り越える「DX推進人材」の育成

――JMAMが、DX人材育成を強化している背景には、どのような社会やビジネス環境や人材育成の変化を捉えているのでしょうか？

萩谷：多くのビジネスパーソンが当たり前にIT技術を使っているものの、ITに関して学んだことはないのが大半であり、基礎的なリテラシーがないままリスクを抱えているのではないかという問題意識がありました。

「企業の成長のためにはDXが重要」と多くの企業が認識していると思いますが、今のシステムでは遅れているといった現状維持の状態では、問題が可視化されないまま、企業の成長速度を妨げている可能性があります。

だからこそ適切に判断できるDX人材は、今後さらに重要性を増すと考えています。
私たちが提供すべきは、現場からの基礎のボトムアップと、エンジニアなどITの専門家と対話する知識を備えた「繋ぐ人（DX推進人材）」の育成であると考えました。

DXを全社横断的な取り組みとして実現するには、全社員のDXリテラシー教育による意識変革や土台作りと、「繋ぐ人」の育成の両方が必要です。JMAMは、事業と技術の両面を理解する「繋ぐ人」に必要なスキルを定義し、ビジネスの加速を支援しています。

「初学者にも分かりやすい」を重視し、心理的ハードルを下げる

――研修開発において、受講者がDXを「難しい」と感じる要因をどのように分析し、どのようなアプローチでその壁を乗り越えようとしているのでしょうか？

萩谷：多くの企業が「DXは難しい」「知らない言葉が多く入りづらい」と感じている状況を踏まえ、JMAMでは「分かりやすさ」を最優先に研修を設計しています。特に意識しているのは、情報量のコントロールです。IT領域は専門用語も多く、正確さを追求するほど内容が複雑化してしまいます。そこで「正しい／正しくない」よりも「分かりやすい／分かりにくい」を基準に、横文字に頼らず噛み砕いて説明することを重視しています。

また、研修を開発する我々自身が「繋ぐ人」として現場で悩みを経験してきたメンバーで構成されているため、初学者がつまずくポイントを高い解像度で理解し、共感しながら教材化できる点も特徴です。教材のデザインにもこだわり、イラストや図解を多用して視覚的に理解しやすくすることで、情報量を適切に整理しています。

こうした工夫によって、DXに初めて触れる受講者でも内容を負担なく吸収でき、「DXは難しい」という心理的ハードルを下げることを目指しています。

DX人材育成の進化と深化：基盤教育から実務直結へ

――「すでにDXの学びを取り入れている企業」と「これからDXに取り組みたい企業」、それぞれの違いやJMAMとしての支援の違いはありますか？

萩谷：「DX人材の活用・育成」の重要性が叫ばれてから時間が経ち、ここ数年のDX人材育成フェーズは２周目・３周目に入り始めていると感じています。

１周目は「DXとは何か」「自社にはどんなDXが向いているのか」「必要なDX人材ってどんな人だろう？」というDX導入のどの企業にも必要な初期フェーズです。その場合、まずは「繋ぐ人」の育成をご支援しています。

――初期段階を終えて次のフェーズに進んでいる企業にはどのような支援を行っていますか？

2周目・3周目へ進んでからは、取り組むテーマも必要な人材像も企業ごとに大きく異なり、より 細分化・高度化したニーズに応える必要があります。その中で特徴的なのは、「人事向けの基盤教育」と「DX部門向けの実務直結スキル」の二つに道が分かれてきたことです。

まず人事部門では、従来人事が行っていた階層別研修そのものにITの要素を組み込む基盤教育のアップデートが求められています。今は「デジタル化されていく過渡期」であると思っていますので、全社員の ITリテラシーを底上げし、DXを進めるための土台をつくるベースアップ型教育が求められています。

一方、DXの専門部署では、「実務に直結するスキルをどう獲得させるか」が最大のテーマです。まず「小規模か」「中規模以上か」という規模感と、それに掛け合わせて目的を以下の４つに分類しています。

・業務改革・業務改善
・新規事業・事業開発
・データ活用
・プロジェクトマネジメント

例えば、規模の小さなチームを率いる人材であれば「ノーコードで自分の手を動かせるリーダー」が適しているケースもありますが、外部ベンダーと数ヶ月にわたりシステム開発を進める場合には、「要件定義やベンダーコントロールができる人材」が必要です。こうした違いを丁寧に切り分け、実務に結びつくテーマ設定を行うことが 2 周目以降の企業様には不可欠になっています。

DX 人材育成はこれまで「とにかく幅広く学ぶ」傾向がありましたが、現在企業が求めているのはより明確に定義された「実践型人材」の育成です。

JMAMとしても、「基盤教育としての 全社ベースアップ研修」「即業務につながる スキルアップ研修」の両軸で、より企業ごとの状況に合わせ最適な育成プランを提案しています。

――２周目に入っている企業は、１周目での課題は解決したのでしょうか？

萩谷：いえ、企業の課題は1周目から本質的には変わっていないとも感じています。多くの企業は「完全に課題が解消された」と言える状態には至っていないため、本質的な課題は残り続けています。ただし１周終え個別の知識を得たことにより、「次に進もう」とテーマだけが変わってしまいがちです。

例えば「AIが話題だからAIに取り組みたい」という声も多いですが、本来は業務プロセスの理解や課題設定が先にあるべきで、AIはあくまで解決策の一つです。JMAMとしては、流行りのツールの導入を提案するだけではなく、企業の真の課題と向き合いながらしっかりと伴走したいと考えています。

また、DXは専門性が高い分野であるので、各部署・部門により知識レベルが異なります。例えば採用を行う人事部門と情シスなどのDX部門では、求めているものやそもそもの専門知識の違いにより、コミュニケーションが噛み合っていないケースが見られることは課題の一つです。

私たちはこの間を繋ぐ役割が求められることが多いので、そこも課題解決の一つとして丁寧に両者を繋いでいきたいです。

現場で活きる「実践力」を育むDX研修の秘訣とは？

――JMAMがDX人材育成において「最も大切にしている考え方」は何でしょうか？

萩谷：「あえて固定した考え方を持たない」という姿勢です。DX領域は変化が激しく、必要とされるスキルや人材像も一年単位で大きく変わります。生成AIの登場によって、私たち自身も従来のやり方を見直し、常にアップデートし続ける必要性を強く感じています。人事領域そのものは大きく変わらない一方で、求められるテーマは時代によって変動します。数年後にはDXとは別の領域が必要になる可能性もあります。だからこそJMAMは、時代に合わせて柔軟に変化し続ける姿勢が重要だと考えています。

――JMAMの研修では「実践でも役立つDXの理解」や、「組織的な行動として落とし込む」といった点が強調されていますが、どのような工夫をされていますか？

萩谷：受講後に現場で実際に行動へ落とし込めるよう、演習やワークの設計に特に力を入れています。まず意識しているのは「ほどほどに使えるようになる」という実践レベルの設定。細部まで深掘りしすぎるとコンサルティング領域になり、研修としての汎用性を損なってしまうため、現場で再現しやすい実務レベルの習得を目指しています。そのために、研修内ではグループワークを中心に据えています。

グループワークでは、企業様ごとの業務内容にカスタマイズして自分ごと化できるよう工夫しているため、参加者同士で多いに議論が盛り上がりますね。とはいえ、その会社の課題そのものにしてしまうと、具体化しすぎてよくありません。そこで、例えば食品業界なら飲料をテーマにするなど、あえて「ちょっとずらす」ことで、自社そのものではないけれど業務に関連づけて考えることで、「1on1に近い相談」が発生したり、お互いの理解が深まります。

また、複数日程で構成する際には「持ち帰りワーク」を設定し、個人で考えた内容を次回持参して議論する流れをつくることで、学びの定着と実践への橋渡しを図っています。

生成AIソリューションとこれからのDX人材育成

――企業の生成AIの業務活用の実態や、活用推進について教えてください。

萩谷：生成AI活用は、ツールの操作スキルだけでは進みません。重要なのは、「AIをパートナーとして受け入れ、どう価値に変えるか」というマインドの変革。そして、個人ではなく組織全体で試し、学び、共有できる空気をつくるといった組織開発の視点が欠かせません。

一部の人が意欲的に使いこなしても、上の世代に「AIは手抜き」「AIではオリジナリティが出ない」といった固定観念が残れば、現場は萎縮し、かえって生産性は下がります。結果として、AIを武器にできる人材ほど「ここでは伸びない」と感じて離れていきます。生成AIは、導入の成否が“能力差”ではなく、“文化差”として表れる領域だと感じています。

その結果「AIに仕事をさせていかに人の仕事を効率化させるか」という視点で大きく二極化が進み、これは個人の利用レベルではなく企業、もっというと経営戦略の差になる喫緊の課題であると非常に焦りを感じています。

――生成AIの急速な進化は、DX人材育成の内容やアプローチにどのような影響を与えると予想していますか？

萩谷：AIを利用することで勉強や業務のコスパが上がり、意思がある人はどんどん伸びて底上げされていくと思っています。一方で、今はAIでなんでも作ってしまえるため、良い資料は簡単に作ることができます。だからこそ会ってみて「中身がないな」と感じることも多く、実際に学んでいることや人間の繋がりがあることが信頼や価値になっていくと思います。

JMAMはIT企業ではなく、長年人材育成を専門としてきた会社です。だからこそ単なる技術や使い方の提供ではなく、「人材の価値」という視点を持ちながらDX人材を育てていけるのが最大の強みだと考えています。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。
最後に、DX人材育成や生成AI活用に取り組む企業やに向けて、メッセージをお願いいたします。

萩谷：ITやDXはすべてのビジネスパーソンに関わるものであり、色々な理由をつけてやらないで済ませることはできない領域であり、企業の課題解決を支援をさせて頂くのが私たちの使命。既に学んでいる企業様はもちろん、「出遅れちゃったな」という企業様へのご支援にも強みを持っていますので、共に学び、変化を楽しんでいければ良いなと思っています。

JMAMでは、研修やeラーニング、従業員のDXリテラシーを可視化するDX基礎能力試験、生成AIの活用など、様々な手段、サービスでDX推進をご支援しております。企業課題を解決に最適なご提案をいたしますので、まずは気軽に「DX人材育成についてお問い合わせフォーム」よりご相談ください。

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