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  • 対象: 全社向け
  • テーマ: ビジネススキル
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スキルマップとは?目的と作り方を徹底解説!

スキルマップとは?目的と作り方を徹底解説!

従業員のパフォーマンスを最大限に引き出すためには、一人ひとりのスキルや経験などに適した役割で活躍してもらう必要があります。また、意欲を引き出し、自社の業務に必要なスキルを強化していくことも重要です。

職種や階層によって必要とされるスキルは多岐にわたり、企業によっても異なります。人材のスキル可視化は最適な人材育成を行うためにも重要です。

本記事では、スキルマップの目的や作り方、ポイントなどについて詳しく解説します。

関連資料

人材ポートフォリオとスキルマップ作成のポイント

関連資料

経営戦略に基づく必要人材の分析、適切な人材配置の検討時に活用できる

スキルマップとは

スキルマップは、従業員のスキルとそのレベルを記載した一覧表です。

従業員一人ひとりのスキルと習熟レベルが具体的に把握できるため「仕事を遂行する上で必要なスキルがあるか」「適性があるか」などを可視化できます。

海外ではスキルマトリックス(Skills Matrix)と呼ばれ、企業によっては、能力マップ、力量管理表などといわれることもあります。

スキルマップの目的

昇格・昇進を決める人事考課の参考にすることも活用事例のひとつですが、最大の目的は従業員の育成です。足りないスキルを可視化して必要な教育施策を実施し従業員を育成することがスキルマップの目的です。

また企業によって求められるスキルや考え方は異なります。

「顧客ファーストを実現するために必要なスキルは備わっているか?」
「技術革新を実現するために必要なスキルが備わっているか?」

など、自社の理念を実現するために必要となるスキルを可視化するためにも重要な役割を果たします。

スキルマップと人材ポートフォリオとの違い

スキルマップと似た言葉に「人材ポートフォリオ」があります。どちらも人材マネジメントを支援する手法です。

人材ポートフォリオは将来のビジョンや経営計画に基づいて、企業が必要とする人材を可視化する手法です。組織が求めるスキルや資質を定義することで、条件に合致する人材を見つけ出しやすくなり、適切な配置や雇用人数を策定できます。また、条件に合致する人材がいない場合は、育成によって埋めるというアプローチもあります。
スキルマップは従業員を軸に、人材ポートフォリオは組織を軸に、整理されたものです。

スキルマップと人材ポートフォリオの違い、役割や活用方法については下記の資料で詳しく解説していますのでご覧ください。

厚生労働省のテンプレート

スキルマップのテンプレートとして提供されている厚生労働省の「キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード」を紹介します。

スキルマップのテンプレートの種類としては、「職種別」「業種別」に分けてファイルが用意され、レベル1からレベル4に階層分けがされています。

企業の業務内容や目指す方針によって必要なスキルマップは異なります。このテンプレートをそのまま使用することは難しいですが、まだスキルマップを作成したことがないという場合には、どのようなものか参考にみてみるのもいいでしょう。

スキルマップを作成するメリット

スキルマップを作成することには、次のようなメリットがあります。

効果的な従業員の教育を設計できる

効果的な従業員教育の設計に、スキルマップが役立ちます。

従業員一人ひとりのスキルレベルを可視化できるため、強みや課題を把握しやすくすることが可能です。従業員のスキルアップにつなげることもでき、研修を的確かつ効率的に行えるようになります。

公平・公正なスキルの可視化につながる

従業員一人ひとりを的確に把握することは容易ではありません。スキルマップを作成することで、スキルやそのレベルが明確になり、客観的かつ公正な配置や育成が可能となります。

特に幅広い知識が求められるIT業界では、スキルマップが広く採用されています。

従業員のモチベーションが向上する

スキルマップに基づいた人材配置によって、ミスマッチが起こりにくくなります。各従業員のスキルや習熟レベルを容易に把握できるようになれば、従業員が能力を発揮できる業務が割り当てられるため、ミスやストレスが軽減されます。

同時に、自身が目指すべき方向性やそのステップが明確になり、モチベーションアップにつながるでしょう。

モチベーションが高まることで能力を十分に発揮できるようになり、結果として組織全体のパフォーマンスが向上します。

スキルギャップを解消する

スキルギャップとは、企業が事業を推進し展開する上で必要とするスキルと、実際に従業員が持つスキルとが釣り合っていない状態を指します。

特に、近年ではデジタル化が急速に加速し、コロナ禍で日常業務や取引先との打ち合わせがオンラインで行われるようになるなど、非エンジニア人材でも新しいデジタルツールを使いこなすスキルが求められるようになりました。

DXに対応できる人材不足が課題となる企業も多く、DX(デジタルトランスフォーメーション)が喫緊の課題として注目されるようになりました。

こうしたスキルギャップを解決するために、まずは従業員のスキルを可視化できるスキルマップの活用が推奨されています。

多能工化による人材不足の解決

多能工とは1人で複数の幅広い仕事ができる作業者のことです。多能工が多くなれば需要や現場の状況に応じて仕事を多くの作業者で分担でき、フレキシブルな対応が可能になります。

多能工化の考え方は大野耐一氏(元トヨタ自動車工業副社長)によって生み出されたといわれています。それまでの製造業では1人の作業者が1台の機械を作業することが一般的で、作業は属人化している状況でした。しかし、多能工化によって生産性が向上した結果、製造業を中心に多能工化の導入が進められてきました。

多能工化を進めるには「どの作業員が」「どのスキルを」「どの程度のレベルで持っているか」を把握する必要があるため、スキルマップが欠かせません。

労働人口の減少による人手不足も企業の大きな課題となっておりますので、製造業を中心に多能工化は今後も進み、同時にスキルマップの普及もますます広がっていくと考えられます。

スキルマップの作成方法

スキルマップを作成する際は、スキルの項目とレベル分けの基準を明確にすることが重要です。また、ひと目で情報を取得できるように、見やすさにもこだわることもポイントです。

ここでは、スキルマップの作り方について解説します。

手順1:スキルマップの目的を明確化する

スキルマップを有効活用するためには、目的をはっきりと定めることが重要です。

教育施策のうち何を解決したいのか、どのような効果を期待するのかなどを明確化します。

スキルマップを活用する目的を整理することで、設計の方針が決まります。

手順2:業務と必要なスキルを洗い出す

次は各業務に必要なスキルを洗い出します。

社内の業務に必要なスキルを職種別に洗い出していきましょう。例えば、営業職の場合は「企業倫理の遵守」「課題設定力」「解決能力」「顧客との関係構築能力」などです。

このとき、細分化しすぎると方法が煩雑になりますが、この段階では思いつく限りピックアップしましょう。

手順3:スキルマップの項目を設定する

手順2をもとに、スキルマップに設定するスキルを選定します。

より具体的でわかりやすい項目を作りましょう。まず大項目を設定して、小項目として細かいスキルを決めていくのがおすすめです。

手順4:スキルの基準を設定する

スキルの項目に続いて、レベルと基準を設定します。レベル階層を細分化しすぎると煩雑になる可能性があるため、通常は1〜5段階程度で設定します。

階層が決まったら、各階層に対する定義を具体的に設定しましょう。

手順5:スキルマップを作成・運用する

スキルマップの作成後はすぐに運用を開始するのではなく、試験導入を行います。

スキルマップを部分的に導入し、従業員からフィードバックを収集しましょう。フィードバックの内容に応じてスキルの種類やレベル、評価基準などを調整します。

試験導入でのフィードバックを反映し、運用マニュアルを作成してから、本格的な運用を開始しましょう。

継続的なフィードバックの収集と定期的な改善によって、より的確で運用しやすいスキルマップへと仕上げていきます。

効果的なスキルマップを作成するポイント

スキルマップを作成する際は、適切な項目と基準を設定するとともに、研修を行って適切に運用できる体制を整えることが重要です。

効果的なスキルマップを作成するためのポイントについて詳しく見ていきましょう。

自社に合った項目を設定する

スキルマップに定める項目は、組織によって異なります。

実際の業務の流れに基づいた項目設定が重要です。

  • 項目の粒度が自社の業務に沿っているか
  • 項目の名称は適切でわかりやすいか
  • 従業員が理解できるか

などを確認し、必要に応じて調整しましょう。

従業員のスキルレベルを誰が判断するかを決める

業務内容の洗い出しやレベルの設定はその部門の主にその業務を理解している管理職と設定し、従業員のレベルは上司や本人が判断します。

さらには、直属でない上司が評価する方法もあります。直属でない上司もくわえることで、見えにくかったスキルレベルが判明することもあります。職場の雰囲気や社風、または仕事の内容によって、誰が評価するのかを決めるとよいでしょう。

スキルマップの活用方法を考えておく

スキルマップを有効活用するためには、導入後の人材育成も合わせて考える必要があります。

可視化した強みや課題に合わせたキャリアプランを策定し、従業員の成長をサポートしましょう。

不足しているスキルや知識を習得できるように、スキル研修や勉強会を実施して組織全体の生産性向上を促進させることが重要です。

また、強みや課題などを基に個人目標を再設定すれば、モチベーションアップにもつながります。

まとめ

スキルマップは、従業員のスキルとレベルを速やかに確認するためのツールです。昇格・昇進を決める人事考課の参考にすることも活用事例のひとつですが、最大の目的は従業員の育成です。足りないスキルを可視化して必要な教育施策を実施し従業員を育成することがスキルマップの目的です。

労働人口が減少している日本においては、従業員の能力を引き出す重要性がますます高まっています。スキルマップを有効活用し、効率的な教育施策を実施しましょう。

JMAM(日本能率協会マネジメントセンター) では、従業員の育成を支援する研修や、自社にあったスキルマップ作成のご支援をしています。スキルマップを用いて自社に必要なスキルを見える化し、従業員の育成を行いませんか?

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人材ポートフォリオとスキルマップ作成のポイント

経営戦略に基づく必要人材の分析や適切な人材配置・人材育成を実現するために有用な「人材ポートフォリオ」と「スキルマップ」の活用方法や作成手順について解説します。

  • 人材ポートフォリオ、スキルマップの活用目的
  • 人材ポートフォリオ、スキルマップの作成手順
  • スキルマップ作成支援サービスのご紹介
人材ポートフォリオとスキルマップ作成のポイント
JMAM HRM事業 編集部

文責:JMAM HRM事業 編集部
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