- 対象: 管理職
- テーマ: マネジメント
- 更新日:
管理職は罰ゲームなのか?なり手不足を招く3つの原因と対策
「管理職になりたくない」と考える社員が増えています。ある調査では、一般社員の約77%が管理職への昇進を望んでいないという結果も出ており、もはや組織全体が向き合うべき共通課題です。責任ばかりが増え、見合った報酬や権限が得られない。そんな状況が続く中で、管理職は「罰ゲーム」と揶揄されるようになりました。
このままでは、組織の中核を担う人材が育たず、現場の生産性や意思決定の質にも影響が及びかねません。なり手不足を解消するためには、その背景にある構造的な課題を整理し、組織として見直していくことが求められています。
この記事でわかること
- 管理職が罰ゲームと呼ばれる3つの原因
- 管理職になりたくない社員の本音と調査データ
- なり手不足を解消する具体的な対策
- 昇進後に管理職へのイメージが変わる人の特徴
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管理職が罰ゲームと言われる理由を調査データで読み解く
管理職の罰ゲーム化は感覚的な話ではなく、複数の調査データが裏付けています。ここでは実際の数字をもとに、社員が管理職を避ける実態を確認していきましょう。
7割以上が「管理職になりたくない」と回答
日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)アンケート調査※1によると、一般社員の7割から8割近くが「管理職になりたくない」と回答しています。数年前と比較してもこの割合は高止まり、あるいは上昇傾向にあると分析されており、昇進を必ずしもポジティブなキャリアアップと捉えない層が厚くなっています。
特に若い世代においては、ワークライフバランスの重視や責任の重大化を懸念し、管理職を敬遠する傾向が顕著です。この意識は今や若手だけでなく中堅層にも広がっており、組織の次世代リーダー育成における深刻な課題として浮き彫りになっています。
※1 調査概要:管理職2026名(課長クラス1442名、部長クラス618名)、非管理職1030名を対象に2025年10月、インターネットによるアンケート調査を実施
「自分は向いていない」という自己評価が最多理由
管理職になりたくない理由として最も多かったのは、「自分は管理職に向いていない(適正がない)」という回答でした。これは能力の問題ではなく、管理職の仕事内容が見えにくいことや、十分な準備の機会がないまま昇進を求められることへの不安、また給与やワークライフバランスの問題が背景にあると考えられます。
一方で、管理職を引き受ける動機にも差が見られます。前向きに志望する層は「自身の成長やスキルの向上」を重視するのに対し、周囲の期待や立場上やむを得ず引き受けた層は「周囲からの評価や要請」を理由に挙げるなど、動機の源泉に違いが見られるのも特徴です。
昇進後にポジティブへ変わるケースも半数以上
興味深い調査結果があります。昇進前に管理職に対して消極的だった層であっても、実際に役割を担った後には、その多くが仕事の捉え方に変化を感じているという点です。「部下の成長を実感できた」「管理者の権限でトラブルを解決できた」といった声が多く報告されています。
つまり、管理職への抵抗感の多くは「やってみる前の不安」に過ぎない可能性があります。この事実は、育成の仕組みや環境を整えることで状況を変えられるという希望を示しています。
| 調査項目 | 結果 |
|---|---|
| 管理職になりたくない割合 | 約77.3%(JMAM調査) |
| 最多理由 | 「自分は向いていない」46.6% |
| 昇進後にポジティブ変化 | 半数以上 |
| 昇進後にネガティブ変化 | 約1割程度 |
出典:JMAM 77%が「管理職になりたくない」【調査レポート】ポジティブな管理職を育てるために人事が押さえたいポイントとは?
https://www.jmam.co.jp/hrm/column/0095-kanrishokuchousa.html
管理職の罰ゲーム化を招く3つの原因
管理職のなり手不足は、個人の意欲の問題ではなく、組織の構造的な問題です。ここからは、罰ゲーム化を生み出している3つの原因を一つずつ見ていきましょう。
原因1 責任と報酬のバランスが崩れている
管理職になると、部下の育成や評価、チームの目標達成、コンプライアンス対応など責任の範囲が一気に広がります。しかし多くの企業では、その責任に見合う報酬や権限が十分に与えられていません。残業代が支給されない「報酬と役割の不均衡」の問題も依然として残っています。
さらに深刻なのが、プレイング・マネージャー化の常態化です。マネジメント業務に加えて自分自身もプレイヤーとして成果を求められるため、本来の役割であるチーム運営や部下育成にも責任を負うという「二重の負荷」が、管理職の負担感を強める大きな要因となっています。
原因2 育成体制が整っていない
多くの企業では、管理職候補に対する段階的な育成が設計されていません。十分な準備がないまま「いきなり管理職」になってしまうケースが後を絶たず、マネジメント未経験のまま部下指導やチーム運営を任される人が増えています。
管理職のなり手不足の本質は「人材が足りない」のではなく「育てられていない」という育成機能の不全にあります。昇進前にプロジェクトリーダーや後輩指導などを経験する機会が意図的に用意されていないことが、不安や敬遠につながっているのです。
原因3 心理的安全性が低く孤立しやすい
挑戦や失敗が許容されない組織風土の中では、管理職になること自体がリスクと見なされてしまいます。特にハラスメントへの配慮や不安から、約管理職の過半数が「部下への指導をためらった経験がある」と回答しているデータもあり、適切な指導すら難しくなっている現状があります。
経営層からは成果を求められ、部下には配慮を求められる板挟みの状態で、相談相手もいない。こうした孤立感が管理職の負担感をさらに強める要因となっています。
- 責任に見合う報酬・権限が不足している
- 管理職候補への段階的な育成が設計されていない
- 失敗を許容しない風土が挑戦を妨げている
罰ゲーム化を防ぐために企業が取り組むべき対策
原因がわかれば、打つべき手も見えてきます。ここでは、人事・育成担当者がすぐに検討できる実践的な対策を紹介していきます。
職務の再設計でプレイング・マネージャーから脱却する
まずは管理職の仕事そのものを見直すことが第一歩です。マネジメント業務とプレイヤー業務の比率を明確に定義し、管理職が本来の役割に集中できる体制を整えましょう。部下への業務委譲を進め、管理職がチーム全体を見渡す余裕を持てる環境づくりが重要です。
あわせて、責任に見合った権限の付与と報酬の適正化も欠かせません。予算配分や採用の提案権など、実質的な権限がなければ責任だけが重くのしかかります。
育成ロードマップで「いきなり管理職」を防ぐ
管理職候補を育てるには、昇進前から計画的な経験を積ませる仕組みが必要です。プロジェクトリーダーの経験、後輩の指導役、部門横断のタスクフォースへの参加など、段階的にマネジメント業務に触れる機会を設計しましょう。
新任管理職には、先輩管理職とのメンター制度や定期的な1on1ミーティングなど、相談できる環境を整えることも効果的です。「一人で抱え込まなくていい」と思える仕組みが安心感につながります。
ロールモデルの見える化で管理職の魅力を伝える
管理職を敬遠する社員にとって、身近にいる管理職の姿が最大の判断材料になります。生き生きと働いている管理職がロールモデルとして見えるようにすることが大切です。社内イベントでの体験共有や、メンター制度を通じた日常的な交流が効果を発揮します。
そのためにも、まず現役管理職が本来の職務を果たせる環境を整えることが先決です。疲弊した姿を見せてしまっては逆効果になりかねません。
心理的安全性の確保で挑戦しやすい風土をつくる
失敗や試行錯誤を組織として受け入れる文化を育てることが、管理職への挑戦を後押しします。特にハラスメントに関しては、指導とハラスメントの境界線を明確なガイドラインで示し、適切な指導は組織として支持するというメッセージを発信しましょう。
心理的安全性が高まれば、チームメンバーの自律性も育ち、管理職一人がすべてを抱え込む必要がなくなっていきます。
| 対策 | 目的 | 具体的なアクション |
|---|---|---|
| 職務の再設計 | 業務負荷の適正化 | マネジメント比率の定義、権限の付与 |
| 育成ロードマップ | 準備不足の解消 | 段階的な経験設計、メンター制度 |
| ロールモデルの可視化 | 管理職の魅力発信 | 体験共有の場づくり、環境改善 |
| 心理的安全性の確保 | 挑戦しやすい風土 | ガイドライン整備、組織メッセージ |
管理職の罰ゲーム化を放置するとどうなるか
管理職のなり手不足は、放置すればするほど組織全体に悪影響を及ぼします。ここでは、対策を先送りにした場合に起きる問題を具体的に見ていきましょう。
マイクロ・マネジメントの悪循環が生まれる
管理職の負荷が高まると、部下に考えさせる余裕がなくなり、細かく指示を出すマイクロ・マネジメントに陥りがちです。すると部下は指示待ちになり、自分で考えて動かなくなります。その結果、管理職の負担がさらに増えるという悪循環が発生します。
この連鎖を断ち切るには、管理職自身の負荷を減らし、部下の自律性を育てる余裕を確保することが不可欠です。
次世代リーダーが育たず組織力が低下する
管理職のなり手がいなければ、次の経営層や部門責任者の候補も育ちません。優秀な人材ほど昇進のコストを冷静に計算し、キャリアの選択肢として管理職を外す傾向が強まっています。最優秀層が管理職を避けるという、組織的な矛盾が生じています 。
数年後に経営上の深刻な課題として顕在化する前に、今から育成の仕組みを整えておくことが、長期的な組織の競争力を左右します。
働き方改革の負荷が管理職に集中する
部下の残業削減は進んでも、業務量そのものが減らなければ、その負担は管理職に集約されていきます。「部下の仕事を巻き取って自分が残業する」という状況は、働き方改革の本来の目的とはかけ離れた結果です。
真の改革には、業務プロセス全体の見直しと効率化が伴う必要があります。労働時間の削減だけでなく、仕事の量と質の両面から改善に取り組むことが求められています。
- マイクロ・マネジメントの悪循環で部下が育たなくなる
- 次世代リーダー不足で組織の競争力が低下する
- 働き方改革のしわ寄せが管理職に集中する
管理者の役割は「統率」から「対話」へ。次世代のマネジメントを築く育成のヒント
管理職の「罰ゲーム化」を防ぎ、組織の中核となる人材を自律的に育てるためには、従来のマネジメント観や育成方法そのものをアップデートする必要があります。多様性を活かしイノベーションを創出することが求められる昨今、マネジメントのあり方は「統率型」から「対話型」へと大きく変化しています。
マネジメントの変遷と、これからの管理職に必要なスキルを紐解
限定公開の電子ブック『これからの管理者育成の考え方』では、時代とともに変わる管理者の役割や、現代のマネージャーに求められる具体的なスキルについて詳しく解説しています。現場の負担を減らし、成果を出せる組織づくりのヒントが満載です。
特に「マネジメントの変遷」や「管理者の役割の変化」に焦点を当て、なぜ今これほどまでに管理職の負担が増えているのか、その構造的な背景を浮き彫りにしながら、これからの時代を生き抜くために必要なスキルを提示します。
人事・経営幹部必見!自社のマネジメント力を強化する育成のご提案
本資料は、次世代リーダーの育成に悩む人事・人材育成部門のご担当者様や、自社のマネジメント力を強化したい経営幹部の方に特におすすめです。これからの時代に即した育成アプローチや具体的な提案をまとめた一冊となっています。ぜひこの機会にご請求ください。
「管理職=罰ゲーム」というネガティブなイメージを払拭し、社員が前向きに挑戦したくなる組織風土をつくるために、どのような「管理者育成の変化」が必要なのか、具体的な解決策をわかりやすくご紹介しています。
よくある質問
Q: 管理職が罰ゲームと呼ばれるようになったのはなぜですか
働き方改革やコンプライアンス強化により管理職の責任が増え続ける一方で、報酬や権限が十分に付与されていないことが主な原因です。経営層と部下の板挟みになりやすく、プレイング・マネージャー化が進むことで負担が集中し、罰ゲームと表現されるようになりました。
Q: 管理職のなり手不足を解消するために最初に取り組むべきことは何ですか
まずは管理職の職務内容を見直し、マネジメント業務に集中できる体制を整えることが大切です。あわせて、昇進前から段階的にマネジメント経験を積ませる育成ロードマップの設計に取り組むと、候補者の不安軽減にもつながります。
Q: 管理職になりたくないと言っていた人が、昇進後に前向きになることはありますか
JMAMの調査では、昇進前に管理職を望んでいなかった人の半数以上が、昇進後にポジティブな変化を感じています。部下の成長を実感できたことや、管理者としての権限で課題を解決できた経験がきっかけになるケースが多く報告されています。
管理職の罰ゲーム化は組織改革で変えられる
管理職の罰ゲーム化は、個人の意欲の問題ではなく、責任と報酬のバランス崩壊、育成体制の不備、心理的安全性の低さという3つの構造的な原因から生まれています。しかし、昇進後に管理職への印象がポジティブに変わる人が半数以上いるという事実は、職場環境を整えることで状況を改善できる可能性を示しています。
大切なのは、管理職の職務再設計、段階的な育成の仕組み、ロールモデルの可視化、そして心理的安全性の確保を、個別にではなくセットで進めていくことです。個別の施策では限界があります。組織的な仕組みとして統合することで、管理職が『望まれる役割』へと転換する土台が築かれます。
なお、本記事で紹介した調査データの多くは、日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)が実施した調査に基づいています。JMAMは「学びのデザイン」と「時間(とき)デザイン」を事業の柱とし、企業の組織開発やマネジメント教育を長年にわたり支援している機関です。管理職育成に関する体系的な知見やプログラムを幅広く提供しており、人事・育成担当者にとって心強いパートナーとなるでしょう。
- 管理職の罰ゲーム化は責任・育成・心理的安全性の3つの構造問題が原因
- 昇進後にポジティブに変わる人が半数以上おり環境整備で改善できる
- 職務再設計と育成ロードマップの整備から着手しよう
- ロールモデルの可視化と心理的安全性の確保を同時に進めよう
解説資料|これからの管理者育成の考え方
マネジメント研究の変遷と現在の経営環境における管理者の役割を解説
本資料では、マネジメント研究の変遷と現在の経営環境における管理者の役割、そしてこれからの管理者育成の考え方についてご紹介します。
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