コラム
  • 対象: 全社向け
  • テーマ: マネジメント
  • 更新日:

スキルベース組織とは何か?その構築と効果なマネジメントを徹底解説

スキルベース組織とは何か?その構築と効果なマネジメントを徹底解説

変化の激しい現代のビジネス環境において、従来の役職や部署中心の組織運営では、変化への対応力や個々の人材の能力最大化が困難になっています。そこで注目されているのが「スキルベース組織」という新しい組織運営のアプローチです。この手法は、従業員一人ひとりのスキルを中心に据えた組織運営を行うことで、適材適所の人材配置、柔軟なプロジェクト編成、そして公正な評価制度の実現を目指します。
本記事では、スキルベース組織の基本概念から具体的な構築方法、効果的なマネジメント手法まで、実践的な観点から詳しく解説していきます。

関連資料

自律的なキャリア形成を促進するキャリア支援施策とは

関連資料

キャリア形成支援の重要性から具体的な施策まで詳しく解説

スキルベース組織の基本概念と背景

スキルベース組織とは、従業員が持つ具体的なスキルや能力を基準として、人材配置や業務アサインを決定する組織運営の手法です。従来の部署や役職を中心とした組織運営とは異なり、個々の従業員が持つ技能や知識を詳細に把握し、それらを最大限に活用することを目的としています。

スキルベース組織が注目される背景には、いくつかの重要な要因があります。

「1つめは深刻な人材不足。高度な専門性を持つ人材の獲得競争はいよいよ厳しさを増しています。獲得できない場合は、社内人材や中途採用人材をアップスキリング、リスキリングしなければならない。いずれにせよ、各ジョブの細かいタスクや個人が持つスキルを見える化する必要があります」
2つめはイノベーション創出のため、よりいっそうのコラボレーションが求められていることだ。社内外の多様なメンバーをうまく組み合わせるには、ジョブ単位ではなく、スキル単位によるきめ細かなチーム編成が求められる。
複雑化した課題、テクノロジーの進展に伴うスキルの変化、そして人材の多様化。「What(仕事)」と「Who(人)」のデータベースをもとにマッチングを行うことで、最適解を探るモデルが、スキルベース型といえるだろう。

引用元:スキルで照らす人の力、企業の未来「スキルベース型組織」がジョブ型を回す
https://jhclub.jmam.co.jp/acv/magazine/content?content_id=22699

こうした背景から、多くの企業がスキルの可視化やタレントマネジメントシステムの導入を進め、スキルベースの人材活用体制を整えつつあります。

スキルベース組織の定義と特徴

スキルベース組織の核となるのは、各従業員が持つ技術的スキル、対人スキル、リーダーシップ能力、専門知識などを詳細に記録・管理するスキルデータベースです。このデータベースを活用することで、プロジェクトの要件に最適な人材を迅速に特定し、配置することが可能になります。

従来型組織との根本的な違い

従来の組織では、部署や役職が人材配置の基準となっていました。しかし、スキルベース組織では、個人の能力と業務要件のマッチングが最優先されます。これにより、組織の壁を超えた人材活用が可能になり、プロジェクトの成功確率も向上します。

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用との違い

スキルベース組織を理解するためには、既存の雇用形態との違いを明確にする必要があります。ここでは、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用との比較を通じて、スキルベース組織の特徴を詳しく見ていきましょう。

ジョブ型雇用の特徴と限界

ジョブ型雇用は、明確に定義された職務記述書に基づいて人材を採用・配置する手法です。欧米企業で一般的に採用されています。しかし、職務が細かく定義されているため、業務範囲を超えた柔軟な対応が困難になることがあります。

また、ジョブ型雇用では、職務要件に完全に適合する人材を見つけることが困難な場合があり、とくに変化の激しい業界では、職務記述書の更新が追いつかない問題も発生します。

メンバーシップ型雇用の特徴と課題

メンバーシップ型雇用は、日本企業で伝統的に採用されてきた雇用形態です。従業員は特定の職務に限定されず、組織の一員として様々な業務に従事します。この手法は、チームワークの向上や長期的な人材育成に有効ですが、専門性の向上や個人の能力発揮という点で課題があります。

現代のビジネス環境では、専門性の高いスキルがますます重要になっており、メンバーシップ型雇用だけでは対応しきれない状況が生まれています。

スキルベース組織の独自性

スキルベース組織は、ジョブ型の限界を克服する形で、新しいアプローチを提供します。具体的には、従業員のスキルを詳細に把握することで、必要に応じて柔軟な配置転換を行いながら、同時に専門性の向上も図ることができます。

組織形態 配置基準 柔軟性 専門性
ジョブ型 職務記述書
メンバーシップ型 組織の需要
スキルベース 個人スキル

スキルベース組織導入のメリットとデメリット

スキルベース組織の導入には、多くのメリットがある一方で、注意すべき課題も存在します。ここでは、実際の導入を検討する際に考慮すべき要素を詳しく説明します。

導入によるメリット

スキルベース組織の最大のメリットは、従業員のスキルを詳細に把握することで、プロジェクトの要件に最適な人材を迅速に特定・配置し、適材適所を実現できる点です。これにより、プロジェクトの成功確率が向上し、業務効率化も図れます。

また、従業員の多様性推進にも大きく貢献します。従来の組織では見過ごされがちだった個人の能力や経験を適切に評価し、活用することで、組織全体のパフォーマンス向上が期待できます。

生産性向上と従業員エンゲージメント

スキルベース組織では、従業員が自分の得意分野を活かせる機会が増えるため、従業員エンゲージメントの向上が期待できます。自分のスキルが適切に評価され、活用されることで、仕事に対するモチベーションが高まり、結果として生産性向上にもつながります。

さらに、スキル開発支援制度と組み合わせることで、従業員の継続的な成長を促進し、組織の競争力強化にも貢献します。

導入時の課題とデメリット

一方で、スキルベース組織の導入には、いくつかの課題も存在します。最も大きな課題は、従業員のスキルを正確に把握し、管理するためのシステム構築です。スキルデータベースの構築と維持には、相当な時間と資源が必要になります。

また、従来の組織文化からの変革が必要となるため、従業員の理解と協力を得ることが重要です。とくに、長期間同じ部署で働いてきた従業員にとっては、新しい働き方への適応が困難な場合があります。

スキルベース組織の具体的な構築方法

スキルベース組織の構築は、段階的なアプローチが効果的です。ここでは、実際の構築プロセスを詳しく説明し、成功に向けた具体的な手順を示します。

スキルデータベースの構築

スキルベース組織の基盤となるのは、包括的なスキルデータベースです。このデータベースには、技術的スキル、対人スキル、リーダーシップ能力、業界知識、言語能力など、業務に関連するあらゆるスキルを記録します。

データベースの構築においては、スキルの標準化と客観的な評価基準の設定が重要です。同じスキルでも、評価者によって基準が異なると、適切な人材配置ができなくなります。そのため、明確な評価基準を設定し、定期的に見直しを行うことが必要です。

段階的な導入アプローチ

スキルベース組織の導入は、一度に全社で行うのではなく、段階的に進めることが推奨されます。まず、特定の部署やプロジェクトチームでパイロット運用を開始し、効果を検証してから全社展開を行います。

パイロット運用では、スキルデータベースの使い勝手や評価制度の妥当性を確認し、必要に応じて調整を行います。この段階で得られた知見を活用することで、全社展開時のリスクを最小限に抑えることができます。

業務のモジュール化

スキルベース組織を効果的に運用するためには、業務を細かく分割し、モジュール化することが重要です。これにより、各業務に必要なスキルを明確に定義し、適切な人材をアサインすることが可能になります。

業務がモジュール化され、必要なスキルが明確になることで、所属部署に関わらずそのスキルを持つ最適な人材をアサインでき、組織の壁を超えた人材活用が可能になります。

タレントマネジメントシステムの活用

スキルベース組織の運用には、適切なタレントマネジメントシステムの活用が不可欠です。このシステムにより、従業員のスキル情報の管理、プロジェクトへの最適な人材配置、スキル開発の進捗管理などを効率的に行うことができます。

最新のタレントマネジメントシステムでは、AI技術を活用して、プロジェクトの要件に最適な人材を自動的に推奨する機能も提供されています。

効果的なマネジメント手法

スキルベース組織を成功させるためには、従来とは異なるマネジメント手法が必要です。ここでは、効果的なマネジメントのポイントを詳しく説明します。

プロジェクト型組織の運営

スキルベース組織では、プロジェクトベースでの人材配置が中心となります。各プロジェクトの要件に応じて、最適なスキルを持つメンバーを集めてチームを編成し、プロジェクト完了後は次のプロジェクトに向けて再編成を行います。

継続的なスキル評価とフィードバック

スキルベース組織では、従業員のスキル評価を継続的に行い、データベースの更新を怠らないことが重要です。プロジェクトの完了後には、メンバーのスキル向上や新たな能力の発見を評価し、データベースに反映します。

また、従業員に対する定期的なフィードバックも欠かせません。自分のスキルがどのように評価されているか、どのような成長機会があるかを明確に伝えることで、従業員のモチベーション維持と能力開発を促進します。

スキル開発支援制度の整備

スキルベース組織では、従業員のスキル開発を積極的に支援する制度が必要です。これには、社内研修プログラム、外部研修への参加支援、資格取得支援などが含まれます。

とくに、リスキリングの推進は重要な要素です。技術の進歩により、従来のスキルが陳腐化する可能性があるため、従業員が新しいスキルを習得できる環境を整備することが組織の競争力維持に不可欠です。

成果評価制度の見直し

スキルベース組織では、従来の年功序列や部署別評価とは異なる成果評価制度が必要です。個人のスキル活用度、プロジェクトへの貢献度、スキル向上の努力などを総合的に評価する仕組みを構築します。

また、チーム全体の成果と個人の貢献のバランスを適切に評価することで、協力的な組織文化を維持しながら、個人の成長も促進することができます。

成功事例と失敗要因の分析

スキルベース組織の導入における成功事例と失敗要因を分析することで、自社での導入に向けた重要な知見を得ることができます。

成功事例にみる共通要素

スキルベース組織の導入に成功した企業には、いくつかの共通要素があります。まず、経営層の強いコミットメントと明確なビジョンの共有が挙げられます。組織変革には時間がかかるため、継続的な支援と投資が必要です。

また、従業員の理解と協力を得るための丁寧なコミュニケーションも重要です。変革の目的と個人にとってのメリットを明確に説明することで、従業員の積極的な参加を促すことができます。

テクノロジー活用の成功パターン

成功する企業では、適切なテクノロジーの活用が重要な役割を果たしています。AI技術を活用したスキルマッチング、クラウドベースのタレントマネジメントシステム、データ分析による人材配置の最適化などが効果的に活用されています。

とくに、DX推進と人材戦略を連携させることで、組織の競争力強化と従業員の能力開発を同時に実現している事例が多く見られます。

失敗要因と対策

一方で、スキルベース組織の導入に失敗した企業の事例からは、いくつかの共通する要因が浮かび上がります。最も多い失敗要因は、スキル評価の主観性や不正確性です。評価基準が曖昧だったり、評価者による偏りがあったりすると、適切な人材配置ができなくなります。

また、既存の組織文化との摩擦も大きな課題です。従来の部署制度を急激に変更すると、従業員の混乱や抵抗を招く可能性があります。段階的な導入と十分な準備期間を設けることが重要です。

まとめ

スキルベース組織は、従来の組織運営の限界を克服し、変化の激しい現代ビジネス環境に対応するための有効な手法です。個人のスキルを基準とした柔軟な人材配置により、組織の競争力強化と従業員の能力最大化を同時に実現することができます。

  • スキルベース組織は従業員のスキルを中心とした新しい組織運営手法
  • ジョブ型・メンバーシップ型の両方の利点を活かした柔軟なアプローチ
  • 適材適所の配置により生産性向上と従業員エンゲージメント向上を実現
  • 段階的な導入とスキルデータベースの構築が成功の鍵
  • 継続的なスキル評価とフィードバックが組織の成長を促進

スキルベース組織の導入を検討している企業は、まず自社の現状分析から始め、段階的なアプローチで導入を進めることをお勧めします。従業員のスキルを最大限に活用し、組織の競争力を高めるための第一歩を踏み出してください。

一人ひとりの成長が組織の力になる 自律的キャリア形成支援

JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)が提供する「キャリア形成支援」は、社員一人ひとりの主体的なキャリア開発を促し、組織全体の持続的成長を目指す、人事・人材育成ご担当者様向けのソリューションです。エンゲージメント向上と人材定着を実現するために、効果的なキャリア支援の考え方や具体的な施策の導入をサポートします。

解説資料|自律的なキャリア形成を促進するキャリア支援施策とは

一人ひとりのキャリア形成がなぜ重要か

キャリア形成支援の重要性から具体的な施策まで詳しく解説した無料の解説資料をご用意いたしました。

  • 個人のキャリア形成が組織にもたらすメリット
  • 効果的なキャリア支援施策の具体例
  • JMAMが提供する「キャリア形成 個別支援プログラム」のご紹介
自律的なキャリア形成を促進するキャリア支援施策とは
JMAM HRM事業 編集部

文責:JMAM HRM事業 編集部
人事・人材教育に関する情報はもちろん、すべてのビジネスパーソンに向けたお役立ちコラムを発信しています。

関連商品・サービス

あわせて読みたい

Learning Design Members
会員限定コンテンツ

人事のプロになりたい方必見「Learning Design Members」

多様化・複雑化の一途をたどる人材育成や組織開発領域。
情報・交流・相談の「場」を通じて、未来の在り方をともに考え、課題を解決していきたいとの思いから2018年に発足しました。
専門誌『Learning Design』や、会員限定セミナーなど実践に役立つ各種サービスをご提供しています。

  • 人材開発専門誌『Learning Design』の最新号からバックナンバーまで読み放題!
  • 会員限定セミナー&会員交流会を開催!
  • 調査報告書のダウンロード
  • 記事会員制度開始!登録3分ですぐに記事が閲覧できます