コラム
  • 対象: 全社向け
  • テーマ: 組織風土・文化
  • 更新日:

エンゲージメントサーベイを効果的に実施・運用する2つのポイント

エンゲージメントサーベイを効果的に実施・運用する2つのポイント

従業員の企業に対するエンゲージメント(愛社精神)を把握するには「エンゲージメントサーベイ」が有効です。サーベイを通じて従業員の状況を分析することで、職場環境や組織文化、働き方の改善に役立つ具体的な問題点や課題を特定できます。ただし、組織の生産性向上や従業員の満足度アップにつなげるためには、いくつかの重要なポイントがあります。

今回は、エンゲージメントサーベイを効果的に運用するための2つのポイントと、その導入手順、メリットについて解説します。

関連資料

パフォーマンスにつなげるエンゲージメント調査

関連資料

エンゲージメントや満足度はどのように変化しているのか経年で比較調査

エンゲージメントサーベイとは

エンゲージメントサーベイとは、従業員と会社の心のつながりの強さ(=エンゲージメント)を測定する調査のことです。従業員が組織に対してどの程度の愛着や信頼感、意欲を持って働いているかを可視化できます。

具体的には、仕事への満足度や職場環境の評価、上司や同僚との関係、会社のビジョンに対する理解と共感など、さまざまな質問を従業員に投げかけ、組織の強みや課題を明らかにします。この調査を定期的に実施し、従業員の声を反映した施策を打ち出すことで、エンゲージメント向上に繋げることが可能です。

エンゲージメントサーベイと似た調査に「顧客満足度調査」がありますが、意味合いや目的が異なるため混同しないように注意しましょう。ここでは、顧客満足度調査との違いやエンゲージメントサーベイを実施する目的について解説します。

従業員満足度調査との違い

従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)調査は、主に従業員が給与や福利厚生、勤務条件などにどれだけ満足しているかを測定する調査です。従業員の不満を軽減し、離職率を下げることやモチベーションを高めることが目的であり、「従業員が快適に働けているかどうか」に注目します。

一方で、エンゲージメントサーベイは従業員が組織に対してどの程度の愛着や信頼、意欲を持って働いているか、またどれだけ積極的に貢献したいと感じているかを測定する調査です。従業員の働く意欲や会社への貢献意識を高めることを目的として実施するため、「従業員が会社や仕事にどの程度やる気や情熱を持っているか」が焦点となります。

実施する目的

エンゲージメントサーベイを実施する目的について、より詳しく解説します。

①組織の課題を把握する

エンゲージメントサーベイを実施することで、組織内の現状が可視化されます。具体的には、サーベイを通じて従業員が感じている働きやすさや不満点、組織への不信感などを数値で把握することが可能です。

これによって、組織全体が抱えるコミュニケーション不足やマネジメントの問題、職場環境の改善点など、組織の課題を特定することができます。

②人事施策に活用する

エンゲージメントサーベイの結果は、人事施策の改善や新たな施策を立案するためのデータとして活用できます。

例えば、従業員のモチベーションが低下している場合、その原因に基づいて研修や福利厚生の見直し、評価制度の改善を行うことが可能です。効果的なマネジメントが行えていない場合は、管理者に向けて研修を実施するなどの施策を打ち出すことができます。

このようにサーベイの結果に基づいた施策を実行することで、従業員のモチベーションが高まり、企業全体のパフォーマンス向上につながります。

エンゲージメントサーベイを導入する効果・メリット

エンゲージメントサーベイを導入する具体的な効果やメリットについて解説します。

生産性向上

エンゲージメントサーベイを通じて組織の改善点を明確にし、施策を実行することで、継続的に従業員のモチベーションを高めることが期待できます。

その結果、組織への愛着や信頼が強まり、主体的な行動が増えれば、業務効率や生産性の向上も見込めるでしょう。

定着率アップ

従業員が抱えている潜在的な不満や課題を把握できるため、適切な対策を実行しやすくなります。その結果、従業員のストレスが減り、定着率が高まることが期待できます。

従業員が離職を考える理由の多くは「仕事が合わない」「人間関係が悪い」などの表面的なものです。しかし、これらの理由は最終的な結果であり、離職に至るまでには複雑なプロセスや要因が絡み合っていると考えられます。エンゲージメントサーベイを活用することで、こうした問題の根本原因を特定し、早期に適切な対策を講じることができます。

組織の一体感が高まる

エンゲージメントサーベイを実施することで、組織の目標に対する従業員の理解度や、共通の目的に向かって協力して取り組む意識が強まります。

また、サーベイの結果をフィードバックすることで、従業員と組織の間に信頼関係が築かれるのもメリットのひとつです。特に、結果に基づいた施策が迅速に実行されると、従業員は組織が自分たちの意見を真剣に受け止めていると感じ、組織全体への信頼感や安心感が高まります。

エンゲージメントサーベイを実施する手順

エンゲージメントサーベイを実施する際には、事前準備や手順をしっかりと理解し、計画的に進めることが重要です。

下記の手順を参考に、サーベイの実施から結果の活用までをスムーズに実行しましょう。

1.実施目的の共有

エンゲージメントサーベイを実施する前に、組織全体で実施目的を共有し、従業員の理解を得ることが重要です。

「離職率を改善したい」「チームの生産性を向上させたい」など、組織として何を改善したいのか、どのような課題を把握したいのかを明確にして共有しましょう。

また、「上司や同僚に、自身の回答がみられることはない」ことをきちんと説明しておくことで、率直な回答を集めやすくなります。

2.設問決定

サーベイの設問は、エンゲージメントに関わる重要な要素をカバーするように設計しましょう。例えば、「仕事に対する満足度」「上司とのコミュニケーションの質」「職場環境の満足度」など、従業員が日常的に感じている点についての質問を作成します。

なお、回答は記述式ではなく、5段階評価や10段階評価といったように定量化できる選択肢を設けることが大切です。

3.調査の実施

サーベイは、できるだけ簡単な方法で実施するのが理想です。オンライン調査ツールを使用すれば、従業員が手軽に回答でき、集計もスムーズです。

しかし、質問文の表現が分かりづらいと従業員が回答しづらいだけでなく、意図した答えを得られない場合があります。アンケートの文章を考える際は、言葉の選定にも十分配慮することが大切です。

なお、サーベイの実施期間は適切に設定し、従業員が十分な時間をかけて回答できるよう配慮しましょう。

4.回答分析と課題の洗い出し

サーベイの回答を集計したら、結果を詳細に分析し、組織が抱える課題を洗い出します。回答の傾向や偏りを確認し、特にスコアが低い項目については、なぜそのような結果になったのかを深掘りすることが重要です。

また、浮き彫りになった問題・課題には優先順位をつけましょう。その際、短期的に解決できる問題と、中長期的な取り組みが必要な問題に分けて、どの課題が組織のエンゲージメント向上に最も効果があるかを検討します。

なお、この点において特に優先すべき事項は、従業員の離職リスクが高まる問題や、生産性に直結する課題です。

5.課題に対する施策の決定・実施

優先順位の高い問題・課題から、具体的な施策を決定していきます。課題を解決するためにどのようなアプローチを取るべきか、従業員の個性・スキルや組織の状況を考慮しながら適切な施策を決定しましょう。

例えば、コミュニケーションの課題がある場合は定期的な対話の機会を増やす、マネジメントの問題がある場合はリーダーシップ研修を実施するなど、具体的かつ実行可能な施策を設定します。

また、課題に対する施策は経営層や管理者層だけで決定するのではなく、現場の従業員と相談して決めることも重要です。より実態に合った施策を考えやすくなるほか、従業員からの理解を得ることで、スムーズに実行しやすくなります。

6.再調査の実施

施策の結果がどのように従業員のエンゲージメントや組織全体に影響を与えたかを評価することが最終段階です。再度エンゲージメントサーベイを行い、結果をもとに施策の効果を測定しましょう。

半年から1年の頻度でエンゲージメントサーベイを実施し、PCDAサイクルを回すのが理想です。

エンゲージメントサーベイを効果的に運用するポイント

エンゲージメントサーベイを効果的に運用するためには、単にサーベイを実施するだけでなく、結果をどのように活用し、組織の改善に役立てるかが重要です。

下記のポイントを押さえ、サーベイの効果を最大限に引き出しましょう。

結果のフィードバックを行う

サーベイに回答した従業員は、調査結果に対して高い関心を持っているはずです。サーベイの結果が組織にどのように反映されるのかを、できるだけ迅速に共有しましょう。

サーベイへの参加意識が向上するだけでなく、組織に対する信頼を高める上でも重要なポイントです。

また、部門ごとやチームごとにミーティングを実施し、具体的な行動計画を従業員と共に議論する場を設けることも有効です。組織内での双方向のコミュニケーションが促進され、従業員が改善プロセスに主体的に参加しやすくなります。

サーベイ慣れ・不満の発生を防ぐ

エンゲージメントサーベイは、繰り返し実施することで従業員が「サーベイ慣れ」してしまい、適切なフィードバックが得られなくなるリスクがあります。

特に、フィードバックや改善施策が実行されないまま同じようなサーベイを繰り返すと、従業員の間で不満が生じる可能性もあります。

こうした状況を防ぐためには、サーベイの意図や目的を事前にしっかりと説明し、従業員にとってもメリットがあることを理解してもらうことが重要です。

また、サーベイ結果を受けて策定した改善施策は、進捗状況を定期的に共有しましょう。具体的な行動がどのように進んでいるのかを公開することで、従業員の期待感を保つことができます。自分たちの声が反映されていると感じられることで、次回以降も積極的に協力する意識が高まるでしょう。

サーベイ自体を重要なコミュニケーションの手段として捉え、従業員との信頼関係を深めるきっかけとして活用する姿勢が大切です。

エンゲージメントサーベイのスコアを高める有効な施策

エンゲージメントサーベイのスコアが改善されない場合は、適切な施策が実施できていない可能性があります。

そこで、従業員のエンゲージメントを高めるのに有効な施策を紹介します。人事施策を改善する際の参考にしてください。

MVVの共有・浸透を図る

MVV(Mission、Vision、Values)は、企業の使命、ビジョン、価値観を意味する言葉です。これらの要素を従業員と共有し、浸透させることで、組織全体が一体となり、共通の目標に向かって働く意識が生まれます。

MVVの浸透を図るためには、経営陣が率先してその価値観を体現し、全社的にコミュニケーションを促進する取り組みが不可欠です。定期的な全体会議やイベントを通じて、従業員にMVVを意識させ、具体的な行動について話し合う機会を設けると良いでしょう。

組織としての方向性や価値観を明確にすることで、従業員は自分の役割を再確認し、より高いモチベーションをもって仕事に取り組めるようになります。

キャリアアップ支援を実施する

従業員のキャリアアップをサポートするためのプログラムや研修を実施しましょう。具体的には、キャリアデザインに関する研修や、リーダーシップ育成プログラム、階層別研修を実施することが有効です。

また、個別のキャリア相談やメンター制度を導入することで、従業員が自分の成長プランを描きやすくし、より長期的に組織に貢献する意欲を高められます。

このような施策を通して、従業員が自分のキャリアに対して前向きなビジョンを持つことで、エンゲージメントの向上につながります。

社内コミュニケーションを活性化させる

1on1ミーティングや社内イベントなど、従業員が自由に意見交換できる場を設けることで、組織内の透明性や協力体制の強化を図りましょう。社内のコミュニケーションが活発であると、従業員同士の信頼関係が強まり、仕事に対する満足度や貢献意欲が高まります。

これらの取り組みは心理的安全性の醸成につながり、離職率の低下やパフォーマンス向上にもつながります。心理的安全性とは、職場やチームのなかで、従業員が自分の意見やアイデアを自由に表現し、ミスや批判を恐れずに行動できる状態を指します。この環境では、従業員同士が互いに信頼し合い、個々の意見が尊重されるため、安心して自分らしく働くことができます。

心理的安全性を高める方法については、こちらの記事をご覧ください。

まとめ

エンゲージメントサーベイは、組織の健康状態を測定し、従業員の声を反映させる重要なツールです。サーベイを効果的に実施し、その結果を活用することで、組織の生産性向上や従業員の定着率アップ、トラブルの予防につなげることができます。

また、JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)調査では、従業員のエンゲージメントが高まると、ワークエンゲージメントが高まることが認められています。ワークエンゲージメントとは、従業員が仕事に対して前向きな感情をもち、充実している状態を指す言葉です。

同調査によると、従業員のエンゲージメントに関する項目の値が高い人は、ワークエンゲージメントに関する項目のポジティブな回答の割合が3割以上高いことも示されています。

適切な計画と準備を進めてエンゲージメントサーベイを実施し、従業員のエンゲージメントを高めましょう。

ワークエンゲージメントについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。

パフォーマンスにつなげるエンゲージメント調査

「従業員エンゲージメント」と「ワークエンゲージメント」から考える、エンゲージメント向上に向けた施策のヒントを紹介しています。また、エンゲージメントの高い人と低い人の違いとなる要素も解説しています。

この機会に下記より資料をご請求ください。

調査資料|パフォーマンスにつなげるエンゲージメント調査

エンゲージメントや満足度はどのように変化しているのか経年で比較調査

エンゲージメントを「従業員エンゲージメント」と「ワークエンゲージメント」に分けて、それぞれに影響を与える要素を「仕事」「職場」「報酬・評価」といったカテゴリー別に紹介しています。

  • 経年比較から見るエンゲージメント
  • 経年比較から見るカテゴリー別満足度調査
  • GAPで見るエンゲージメント
  • 調査結果から見るエンゲージメントを高めるポイント
パフォーマンスにつなげるエンゲージメント調査
JMAM HRM事業 編集部

文責:JMAM HRM事業 編集部
人事・人材教育に関する情報はもちろん、すべてのビジネスパーソンに向けたお役立ちコラムを発信しています。

関連商品・サービス

あわせて読みたい

Learning Design Members
会員限定コンテンツ

人事のプロになりたい方必見「Learning Design Members」

多様化・複雑化の一途をたどる人材育成や組織開発領域。
情報・交流・相談の「場」を通じて、未来の在り方をともに考え、課題を解決していきたいとの思いから2018年に発足しました。
専門誌『Learning Design』や、会員限定セミナーなど実践に役立つ各種サービスをご提供しています。

  • 人材開発専門誌『Learning Design』の最新号からバックナンバーまで読み放題!
  • 会員限定セミナー&会員交流会を開催!
  • 調査報告書のダウンロード
  • 記事会員制度開始!登録3分ですぐに記事が閲覧できます