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  • 対象: 全社向け
  • テーマ: キャリア
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キャリアブレイクとは?企業が導入するメリット・デメリットも解説

キャリアブレイクとは?企業が導入するメリット・デメリットも解説

近年、日本企業においても「キャリアブレイク」への関心が高まっています。まだ制度として十分に整備されているとは言えないものの、導入を検討する企業も増えているようです。

今回は、キャリアブレイクの意味や注目されている背景、導入する際の注意点などを詳しく解説します。

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キャリアブレイクとは?

まずは、キャリアブレイクの意味や類似概念との違いについて詳しく解説します。

キャリアブレイクとは

キャリアブレイクとは、従業員が現在の仕事を一定期間離れ、自身のキャリアを主体的に見つめ直す期間のことを指します。

この言葉は「career(経歴、職業)」と「break(中断、休憩)」という英単語から派生しており、単なる休暇とは異なる、戦略的なキャリア形成の機会として捉えられています。

キャリアブレイクの期間の活用方法は、個人のニーズや目標によって多岐にわたりますが、多くの場合、下記のような活動に充てられます。

  • 新たな職務や業界に必要なスキルの習得
  • 資格取得やビジネススクールへの通学による専門性の向上
  • 心身のリフレッシュによるモチベーションの再構築
  • 海外留学や語学研修によるグローバルスキルの向上

キャリアブランクとの違い

人事実務において、「キャリアブレイク」と「キャリアブランク」は明確に区別する必要があります。

キャリアブランクは、主に就業の空白期間を指し、無職の状態が継続していた期間を表現する際に使用されます。

多くの場合、履歴書上でネガティブな印象を与える要素として認識されがちです。

一方、キャリアブレイクには「計画的な休息を取り、より高次のキャリアステージへ進んでいく」という前向きな意味合いが込められています。

このため、企業はこの概念の持つポジティブな側面を十分に理解し、従業員の成長機会として効果的に活用することが重要です。

キャリアブレイクが日本で注目されている理由

次に、キャリアブレイクを導入する企業が増えてきている背景について解説します。

リカレント教育の推進につながる

キャリアブレイクは、リカレント教育の推進にもつながるとして注目されています。

リカレント教育は、「仕事と学びを繰り返すこと」を意味し、生涯を通じて職業能力の向上を図る教育モデルです。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速や新しいビジネスモデルの台頭により、従業員の継続的な学習がこれまで以上に重要となっています。

キャリアブレイク制度の導入により、従業員は一定期間仕事から離れ、大学院への進学や専門的なトレーニング、資格取得などに注力できます。

この集中的な学習期間を通じて、新たな専門知識やスキルを獲得し、より高度な職務への挑戦や、異なる分野での活躍機会の創出につながります。

リカレント教育について詳しくは、下記の記事もご覧ください。

キャリア自律を促進させる

従業員のキャリア自律を促したい企業にも、キャリアブレイク制度の導入が注目されています。

キャリア自律とは、従業員が自身のキャリアに対して主体的な意識を持ち、自発的にキャリア開発を行うことを指します。

終身雇用や年功序列といった従来の日本的雇用慣行が変化する中、組織依存から脱却し、自律的にキャリアを構築できる人材の育成が急務となっています。

キャリアブレイク期間中、従業員は日常業務から離れることで、自身の価値観や将来のキャリアビジョンを客観的に見つめ直す機会を得られます。

この内省的なプロセスを通じて、自分にとって真に重要な要素や、今後習得すべきスキル、経験を明確化できます。

また、この期間を活用して、新たなキャリアパスの可能性を探索することも可能です。

キャリア自律の重要性については、下記の記事をご覧ください。

キャリアブレイクを導入するメリット・デメリット

キャリアブレイク制度にはメリット・デメリットが存在します。これらを総合的に判断し、自社の状況や目指す方向性に合わせて、制度設計を行うことが重要です。

ここでは、キャリアブレイク制度の導入によって得られる効果と、直面する可能性のある課題について詳しく解説します。

キャリアブレイクを導入するメリット

企業にとって、キャリアブレイク制度の導入は主に3つの観点から大きな効果が期待できます。

①従業員のモチベーション向上につながる

キャリアブレイク制度を企業が前向きに捉え、積極的に導入することは、従業員全体のモチベーション向上につながります。

自己啓発や新しいスキル習得の機会を提供することで、従業員の成長意欲が高まり、業務への取り組み方もより積極的になります。

②新しい働き方を社内外に示せる

リスキリング支援の一環として、キャリアブレイク制度を導入することで、時代に即した新しい働き方のモデルを社内外に示すことができます。

キャリアブレイクを経験した従業員が活躍する姿は、一社での長期勤続や既定のキャリアパスにとらわれない、柔軟な働き方のアピールにもつながります。

③多様な人材の確保につながる

キャリアブレイク制度の存在は、従業員が長期的なキャリア形成を前向きに捉えるきっかけとなり、定着率の向上に役立ちます。

ワークライフバランスを重視する従業員にとっても、このような制度の存在は企業の魅力度を高める要素となるでしょう。

また、キャリアブレイク経験者まで採用枠を広げることで、これまでアプローチできなかった優秀な人材の獲得機会が広がります。

多様なバックグラウンドを持つ従業員が活躍する姿は、求職者の関心を引き付け、採用活動の母集団形成にもプラスの効果をもたらします。

キャリアブレイクを導入するデメリット

一方で、制度導入に伴うリスクも考慮する必要があります。主に2つの観点から慎重な検討が必要です。

①人材が流出する場合もある

キャリアブレイク中、従業員は新しいスキルを習得したり、他の業界や企業とのネットワーキングを通じて新しい知見に触れたりする機会を得ます。

その結果として、人材流出のリスクも高まります。

特に、専門性の高い人材が他社へ転職するケースや、キャリアブレイクを通じて価値観や方向性を見直し、まったく新しいキャリアパスを選択するケースもあります。

②コストが発生する

制度運営に関わる経済的なコストも無視できません。

まず、キャリアブレイク中の従業員の代替要員確保に関わる採用・育成コストが発生します。

特に専門性の高い職種では、適切な人材の確保が困難で、時間とコストが増大する傾向にあります。

また、従業員が会社に復帰する際の再教育やスキルの更新にも一定のリソースが必要です。

キャリアブレイクを導入する際のポイント

キャリアブレイク制度を効果的に導入するには、メリット・デメリットをふまえたステップが必要です。

最後に、キャリアブレイク制度の制度設計から運用まで、段階的に解説していきます。

明確な目的と方針を設定する

キャリアブレイク制度を導入する際、まず重要なのは目的と方針の明確化です。

人材流出のリスクを最小限に抑えるため、制度の目的(リカレント教育の推進、キャリア自律支援など)を明確化し、「なぜ導入するのか」を従業員に示す必要があります。

経営層から現場の従業員まで、制度の意義について共通認識を持てるようにしましょう。

また、コストの発生に関しても、目的を明確にすることで、適切な予算配分の判断が可能になります。

制度に柔軟性をもたせる

従業員のモチベーション向上や多様な人材確保というメリットを最大化するために、個々の従業員のニーズや状況に応じた柔軟な選択肢を用意することが大切です。

例えばキャリアブレイクの期間については、数週間程度の短期から数か月以上にわたる長期まで、考慮すると良いでしょう。

また、学び直しや資格取得に限らず、家庭の事情やボランティア活動なども含めた幅広い用途を許容することで、より多くの従業員が活用しやすい制度となります。

そして特に重要なのが、復職後の支援体制です。

キャリアブレイク後のスムーズな職場復帰を支援するため、復職時のオリエンテーションやフォローアップ面談など、具体的なサポート施策を整備することが大切です。

制度利用への心理的障壁を取り除く

せっかくの制度も利用されなければ、従業員のモチベーション向上や新しい働き方の提示というメリットを得られません。

効果的に機能させるためには、従業員が躊躇することなく制度を利用できる環境づくりが重要です。

まず、制度が昇進やキャリアに悪影響を与えないことを明確に示し、むしろ個人の成長機会としてポジティブに評価される文化を醸成しましょう。

また、上司や同僚の理解を深めるため、キャリアブレイクの意義や効果に関する周知を行うことも大切です。企業全体で、制度利用者へのサポート意識を高めましょう。

従業員の選択をサポートする

従業員がキャリアブレイクを効果的に活用できるよう、適切な支援体制を整備することが重要です。

専門のキャリアカウンセラーやコーチによる相談窓口を設置し、個々の目標や状況に応じた適切なアドバイスを行いましょう。

また、人事部門による相談対応も並行して行うことで、より身近な相談の機会を確保できます。

さらに、過去の活用事例や利用可能な学習機会に関する情報を定期的に提供することで、従業員が具体的なイメージを持ちやすくなり、より効果的な制度活用につながります。

制度の運用・改善を行う

制度の持続的な発展のためには、運用状況の定期的な評価と改善が欠かせません。

キャリアブレイクの導入後は、利用者のスキルアップ状況や復職後のパフォーマンスを継続的に評価し、制度の効果を客観的に測定しましょう。

また、制度利用者や管理職からのフィードバックを積極的に収集し、運用面での課題や改善点を早急に特定することが大切です。

まとめ

キャリアブレイクは、従業員が一定期間仕事を離れ、自身のキャリアを見つめ直す機会として注目を集めています。

導入企業が増加している背景には、リカレント教育の推進やキャリア自律の促進といった効果が期待できることがあげられます。

また、異業種や新たな分野での体験を通じて新しいスキルや知見を獲得する越境学習も、キャリアブレイクの手段のひとつです。

一方で、人材流出のリスクや運営コストなど、慎重に検討すべき課題も存在します。

各企業の状況や目指す方向性に合わせて制度設計を行い、効果的な運用を目指すことが重要です。まずは自社の課題や従業員のニーズを把握し、キャリアブレイク制度の導入について、前向きに検討を始めてみてはいかがでしょうか。

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JMAM HRM事業 編集部

文責:JMAM HRM事業 編集部
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