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パタニティハラスメントとは?従業員の意識改革を促す4つの防止策

パタニティハラスメントとは?従業員の意識改革を促す4つの防止策

パタニティハラスメントは、男性従業員が育児や介護のために休暇を取得しようとする際に生じる組織の問題です。パタニティハラスメントを放置すると、職場環境悪化による従業員のモチベーション低下や企業のイメージダウンにもつながりかねません。

今回は、パタニティハラスメントの定義や事例を解説するとともに、職場での意識改革を促すための具体的な防止策を紹介します。

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パタニティハラスメントとは

パタニティハラスメントの定義と事例を解説します。

パタニティハラスメントの定義

パタニティハラスメントは、育児休暇や育児休業など、育児を目的とした制度を男性従業員が利用することを阻害したり、それを理由に嫌がらせをしたりする迷惑行為のことです。

「育児・介護休業法」では、事業主に対して、職場における育児休業に関する言動が就業環境に悪影響を及ぼすことを防止する措置も義務付けられています。パタハラ防止もその目的のひとつです。

この法律では、育児休業などの届出や取得などを理由とする不利益取扱いについて、下記のような例が明記されています。

  • 正社員を非正規雇用社員(パートタイム労働者など)とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと
  • 降格や減給をすること
  • 人事考課において不利益な評価を行うこと
  • 労働者が希望する期間を超えて、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限などを行うこと

出典:厚生労働省「職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137178.html

マタニティハラスメントとの違いは、ハラスメントを受ける対象が、女性か男性かという点です。パタニティハラスメントは「父性」を意味し、育児中の男性に対するハラスメントを指します。一方、マタニティハラスメントは「母性」を意味し、妊娠や出産、育児を行う女性に対して、仕事上で嫌がらせなど不適切な言動をすることを表します。

なお、パタニティハラスメントも含め、妊娠・出産・育児領域のハラスメント行為すべてをマタニティハラスメントと呼ぶこともあります。

パタニティハラスメントの事例

パタニティハラスメントは、主に3種類の行為に分類されます。具体例を通じて、職場でどのような問題が発生しているかを具体的にみていきましょう。

①不利益な取扱いをほのめかす行為

男性従業員が育児休業を申請しようとした際、上司が「育休を取るなら、次の昇進は見送りになるかもしれない」「育休を取った場合、他の部署に異動することを考えたほうが良い」といった暗示的な発言をするケースです。

このような発言で従業員に心理的な圧力をかけ、育児休業の取得をさせないようにします。

②「制度の利用を希望すること・利用すること」を妨害する行為

男性従業員が育児休業の申請をしようとした際、上司が「人手不足で育休を取るのは現実的ではない」「育児は妻がすれば良いだろう」といった発言で申請を阻止するケースです。

育児休業を利用する従業員に対して、職場の労働力を維持するために制度の利用を諦めさせようとする発言は、法的に保護されている権利を侵害しています。

③制度を利用したことを理由に、嫌がらせをする行為

育児休業から復帰した男性従業員が、「休業中にあなたの仕事をカバーしていた同僚に謝罪するべきだ」と上司から言われたり、業務量を過剰に増やされたりするケースです。

育児休業の制度を利用したことに対する報復的な行動は、不当な扱いにあたります。

パタニティハラスメントの防止策を講じる重要性

パタニティハラスメントを放置すると、法的リスクや職場環境の悪化、生産性の低下、企業イメージの損失など多くの悪影響が生じます。パタニティハラスメントの防止策を講じる重要性について、詳しくみていきましょう。

法的リスクがある

育児・介護休業法に基づき、事業主は従業員の育児や介護に関連するハラスメントを防止する義務を負っています。この法律に従わず、パタニティハラスメントを放置すると、厚生労働省から指導や勧告を受けるリスクがあります。

さらに、ハラスメントにより従業員が法的措置を取った場合、企業は損害賠償を求められる可能性も否定できません。

ハラスメント防止には総合的な対策が必要

ハラスメントは、パタハラだけでなく多くの種類がありますが、共通する原因も多くあります。主に、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)やコミュニケーション不足、マネジメント能力の不足などがあげられます。

そのため、パタニティハラスメントだけを個別に解決しようとするのではなく、総合的な対策を講じることが重要です。例えば、社内のすべての従業員に対してハラスメント防止研修を実施し、職場全体でハラスメントに対する理解を深める取り組みを行うことが効果的です。

従業員全員が問題意識を共有することで、職場全体でのハラスメント防止の意識が高まります。

生産性低下・企業イメージの悪化など業績の悪化を防ぐ

パタニティハラスメントを放置すると職場の生産性が低下し、企業の業績にも悪影響を及ぼす可能性があります。特に、ハラスメントを受けた従業員が職場でのモチベーションを失い、退職を選択した場合、企業は人材流出のリスクに直面します。

また、元従業員が転職サイトなどで企業の悪評を広めたり、厚生労働省から勧告や企業名の公表を受けたりすることもあります。このような事態は、企業の社会的信用を大きく損ない、新規採用や顧客獲得にも影響を与えることから、防止の取り組みが重要です。

パタニティハラスメントが職場で発生する原因

パタニティハラスメントが職場で発生する背景には、いくつかの要因があります。ここでは、主に「アンコンシャス・バイアス」と「労働環境の問題」の2つの観点から、なぜパタニティハラスメントが発生するのかを詳しく解説します。

アンコンシャス・バイアスによる発言・行動が見逃されている

アンコンシャス・バイアスは、パタニティハラスメントが起こる大きな要因です。男性が育児休業を取ることに対して「男性は家族よりも仕事を優先すべきだ」「男性が育休を取るのは非常識だ」などの固定観念を持つ従業員は現在でも少なくありません。

これらの思い込みや偏見が原因となり、育児休業を希望する男性従業員に対してネガティブな発言や行動をおこしてしまいます。

アンコンシャス・バイアスは本人も周りも気付きにくい特徴があるため、改善は組織全体で意識的に取り組む必要があります。

労働環境が慢性的に問題を抱えている

人手不足や長時間労働が常態化している職場は、パタニティハラスメントが発生しやすい環境です。例えば、慢性的な人手不足の中で育児休業を希望する男性がいると、他の従業員がその分の仕事を負担しなければならず、「自分だけ休むなんて無責任だ」といったネガティブな感情が生まれやすくなります。

さらに、長時間労働が当たり前になっている職場では、労働者一人ひとりの負担が大きいため、育児や介護のための休暇取得が敬遠される風潮が生じやすくなります。こうした環境では、育児休業を希望する男性従業員に対して、制度を利用すること自体が難しくなり、結果的にパタニティハラスメントが引き起こされます。

従業員の意識改革を促すパタニティハラスメントの防止策

パタニティハラスメントを防止するためには、従業員一人ひとりの意識改革が不可欠です。ここでは、具体的な防止策を4つ取り上げ、それぞれの有効性と実施時のポイントを解説します。

育休制度を整備する

育休制度の整備は、パタニティハラスメントを防ぐための基本的な対策です。育児休業の制度が整っていなければ、男性従業員は安心して育休を取得することはできません。

まず、育児休業制度の内容を見直し、最新の法規制に準拠して整備しましょう。育休中の代替要員を確保するための計画を立て、休業者が業務の負担を気にせずに休めるような環境を整えることも重要です。また、制度を利用しやすくするには、短期間でも取得可能な形にすることも有効です。

従業員のニーズに合わせて、企業独自の支援策を設けることも検討すると良いでしょう。例えば、育児休業中の従業員に対して、スキルアップ研修やキャリア相談を行うことが効果的です。育休後の職場復帰をスムーズにする施策を用意すると、育休制度の利便性が高まり、従業員の意欲向上につながります。

育休制度を社内周知・啓蒙する

育休制度の利用を促進するために、社内への周知・啓蒙を行いましょう。そうすることで、男性従業員が育休制度を利用するハードルを下げることができます。具体的には、社内ポータルサイトや社内報、説明会を通じて、育休制度の内容や手続き方法をしっかりと伝えましょう。

ポイントは、過去に育休を取得した従業員の声を紹介するなど、具体的な利用事例もあわせて周知することです。育休制度の実効性や職場復帰後のキャリアにどのようにプラスに働くかという理解を促します。

相談窓口を設置する

相談窓口の設置も有効な防止策です。従業員がパタニティハラスメントに直面した際に安心して報告・相談できる窓口があれば、問題の深刻化や再発を防ぎやすくなります。

相談窓口を設ける際は、利用を促すためにも、公正で匿名性が保たれることを従業員に伝えましょう。特にハラスメントに関する相談では、報復や周囲の目など気にしがちになるため、外部の専門機関を使うことも選択肢のひとつです。また、相談を受けた際には、迅速かつ適切に対応できるようマニュアルを整備しておく必要があります。

育休に関するセミナーや研修を実施する

育休に関するセミナーや研修の実施も、職場全体の理解を促すための効果的な対策です。
育休を取得することへの偏見が薄まることで、ハラスメントの発生を防ぐことができます。男性従業員に対して積極的に育休を推奨するという企業側のメッセージや姿勢を示しましょう。

社内のリソースでは対応が難しい場合は、外部の専門機関による研修を利用するのもひとつの手です。例えば、JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)が提供する「マタニティハラスメント防止コース」では、職場でのハラスメントの実態を理解し、防止策を学ぶことができます。ハラスメントをしない・させない組織を目指すためにも、ぜひ一度ご検討ください。

コースの概要や詳しいカリキュラムは下記からご覧いただけます。

まとめ

パタニティハラスメントは、男性従業員が育児休業などを取得する際に発生する問題です。法的リスクや労働環境の悪化に加え、企業のイメージダウンにもつながる可能性があるため、適切な防止策を講じることが重要です。

育休制度の整備や周知、相談窓口の設置、セミナーの実施など、具体的な対策を講じて、パタニティハラスメントを未然に防ぎましょう。

マタニティハラスメント防止コース

JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)が提供する「マタニティハラスメント防止コース」では、出産・妊娠・育児休業にまつわるハラスメントの実態を理解し、効果的な防止策を学べます。外部の専門的な知識を取り入れることで、職場全体の意識を向上させ、ハラスメントのない環境を実現するための具体的な行動指針を得ることができます。

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