コラム
  • 対象: 人事・教育担当者
  • テーマ: 採用
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【2024年版】製造業が人手不足になる根本的な原因は?実態と対策を徹底解説

【2024年版】製造業が人手不足になる根本的な原因は?実態と対策を徹底解説

少子高齢化による労働人口の減少や後進が育たないことなどの減少を理由に、製造業の人手不足は年々深刻さを増しています。現場の人手が足りず、「従業員の心身の健康を損なっている…」「自社の技術を後世に受け継いでいけるのか?」と不安を抱える人事・採用担当者の方もいるのではないでしょうか。

このようなネガティブな状況を打開するためには、実態を正しく捉え、適切にアプローチすることが重要です。

今回は、製造業の現状や、人手不足に関する実態や原因、対策についてくわしく解説します。

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製造業の人手不足の実態

製造業は人手不足の状況でありながら、新規求人数が減り人材確保が難しい状況です。多くの企業が積極的な採用活動に踏み出せない理由について、製造業の実態をもとに解説します。

(1) 2023年12月の有効求人倍率は1.74倍

厚生労働省が調査した「一般職業紹介状況(令和5年12月分及び令和5年分)について」によると、製造業の有効求人倍率は約1.74倍です。

全業界の全体平均は1.27倍であるため、他業種よりも深刻な人手不足に陥っているといえます。背景については後述しますが、製造業界は特に人材獲得が厳しいのが現状です。

出典:「一般職業紹介状況(令和5年12月分及び令和5年分)について」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37525.html

(2) 人手不足にもかかわらず、原材料高騰により採用を控える企業は増加

人材が足りていない状況下であるにもかかわらず、製造業の新規求人数は減少しつつあります。

同調査によると、2023年3月以降は前年比-5%以上が続いており、12月の新規求人数は対前年比で-10.5%との結果でした。

背景にあるのは、製造業におけるコストの大半を占める材料費・エネルギーコストの高騰です。

特に中小企業は大きな打撃を受けており、多くの企業が利益創出に苦戦しています。十分な採用予算が確保できないため、新規雇用を控えざるを得ない状況が続いているのです。

出典:「一般職業紹介状況(令和5年12月分及び令和5年分)について」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37525.html

(3) 製造業関連の仕事は増えている

採用状況が厳しい一方で、アメリカを中心とする好景気経済により、製造業関連の受注数は増加しています。

製造業界はこの需要を満たすためひとりでも多くの人手が必要であるものの、新規で採用するだけのコストを生み出すのが難しいという非常に苦しい状況に陥っているといえます。

製造業が人手不足に陥る根本的な原因

製造業の人手不足が深刻化している背景には企業のリソース不足があります。しかし、社会情勢による影響は長く続いている人手不足の根本的な原因ではありません。

製造業で人手が足りなくなる理由には、以下が挙げられます。

  • 離職率が高い
  • 応募数が少ない

実際に定着率が悪く悩んでいる人材担当者の方もいるのではないでしょうか。その原因は業界特有の労働環境にあります。

次に、製造業における人材不足の根本的な原因について解説します。

(1) 「見て覚える」という教育手法が根付いている

業務に必要な知識や技術を体系的に身につけられる教育体制を構築している企業は、ごく一部に限られているのが実情です。

OJTを導入しているといっても実態は「見て覚える」教育手法で、新人のストレスが溜まっているという現場も少なくありません。

また経済産業省が発表している「2022年度ものづくり白書」によると、約6割の製造関連事業社が人手不足の原因を「指導者となるベテラン人材の退職」と回答したとのことでした。

経験豊富なベテラン人材が担う一部の業務が属人化していた企業では、退職により技術継承が上手くいかず若手が育てられないという状況も見られます。製造業就業者数の減少に加え、製造業の若者離れを示唆する決定的なデータが報告されています。

体系的なスキル・知識を習得するための教育体制が整っていないことから、従業員はスキルアップができずモチベーションが下がり、離職に繋がっています。

2002年を起点とした約20年間において、34歳以下の若年就業者数は約121万人と大幅な減少が確認されており、一方、65歳以上の高齢就業者数は33万人に増加しています。製造業全体での人手不足および若い就業者の減少、高齢化が顕在化する結果が示されています。

スキルを持ったベテラン社員が定年退職を控えるなか「若年層への技能継承・育成環境の提供が難しい」といった問題は、製造企業の多くが抱えているようです。

出典:「2022年版ものづくり白書」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/index.html

(2) 製造業に対するネガティブな3Kのイメージ

製造業には3K「きつい」「汚い」「危険」のネガティブな労働環境のイメージが根付いています。このようなネガティブな印象も、人材が集まりにくい理由のひとつです。

実際、24時間稼働の現場や、作業の特性上、薬品や油などの臭いが強い環境で働かなければならない、作業服も汚れやすいといった仕事では、良い印象をもたれにくいこともあるでしょう。

しかし、必ずしも工場だからと3Kが当てはまるとは限りません。このようなネガティブな先入観を払拭するようなアピールができるかどうかが、人手不足解消のカギであるといっても過言ではありません。

製造業の人手不足を解消するための対策

外国人の採用や、アウトソーシングなどで単に人手やし労働力を増やすことは可能です。しかしマネジメントや教育する人材が足りないことを考えると、本質的な解決にはつながりません。

人手不足による生産力・品質の低下や、技術継承が滞るなど技術人材の確保の問題を解決するために企業ができる対策を4つ紹介します。

(1) DX推進による業務効率の改善

IT活用・デジタル化によって既存の業務効率を改善することで、従業員の負担軽減や生産性の向上などを目指せます。

たとえば、これまで人が行っていた単純作業をAIに代替して自動化することで、業務効率の向上が見込めます。さらには、知識やノウハウ、技能をデータベース化することにより、研修に費やす時間が削減できます。自動化のためのシステム導入は、初期費用など導入コストが必要になりますが、生産性向上に大きな効果が期待できます。

デジタルによる業務改善を行うには、まずは現場の業務をよく知っている人がIT・DXリテラシーを身に着け、自分ゴトとして業務改善のアイディアを検討することが重要です。そのうえで、IT部門と連携し、効率化できそうなツールやシステムがあれば導入を検討sます。現場の業務を理解している人が、従業員が使いこなせるか、運用しやすいかどうかという観点も含めて選定、システム開発の橋渡しをすることが大切です。

JMAMでは、従業員のDXリテラシーの向上支援、DX人材育成をご支援しています。DX推進特集をご覧ください。

(2) 多能工を育成する体制を構築する

多能工を育成する体制構築は、人材不足へのアプローチとして有効です。

多能工とは一人で複数の業務に対応できることを指し、「マルチスキル」とも呼ばれます。

人材が限られている場合でも、このような社員が複数人いれば人手が足りていない部署に配属したり、繁忙期にも柔軟な対応が可能になったりします。また、従業員のキャリアアップ・スキルアップにつながるため、モチベーション高く仕事ができるメリットもあります。

ただし育成には時間がかかります。体系的な教育体制を構築していない企業では、今から始めるのは難しいケースも多いでしょう。

ある程度コストをかけても現場力を高めたい、スキルの高い若手人材を育てる教育体制を構築したいという場合は外部の人材教育支援を受けるのがおすすめです。

JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)の「生産マイスター®シリーズ」は総合的な管理技術を体系的に習得できる個人学習プログラムです。対象者ごとにベーシック級コースから1級コースまで4段階の学習内容を用意しています。多能工人材の育成にも役立ちます。

詳細な内容については、以下のページからお問い合わせください。

(3) 人材育成の効率化を図る

上記で解説したとおり、従来の人材育成は「見て覚える」育成が主体だったため、一人前になるまでに時間がかかってしまうのが課題でした。

この問題を解決するためには、指導者となるベテラン人材のノウハウや優れた技術を共有するナレッジマネジメントと育成施策の効率化が重要です。

具体的な効率化の例としては、作業内容を説明する動画や資料の整備、データの一元管理ができる生産管理システムの導入などです。

また、生産に関するトータルな管理技術を体系的に学習させる研修や、教育を整えることが重要です。

JMAMでは、管理技術を体系的に学習できる「生産マイスター検定」の公式認定通信教育を提供しています。管理技術の基盤となるIE(インダストリアルエンジニアリング)を核とした、役割(Role)、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期・生産管理(Delivery)、安全管理(Safety)、環境管理(Environment)の6つを、若手・新人から管理者までR・Q・C・D・S・Eの共通軸で体系的な育成が可能です。詳しくはこちらの体系図をご参照ください。

(4) 企業イメージの改善

求人数を増やすうえで企業イメージの向上は欠かせません。

まずは、製造業に対するネガティブなイメージを払拭することが先決です。イメージと実態にギャップがあるのであれば、まずは自社の実態を知ってもらうことで昨今はSDGsに関する関心も高く、持続可能な取り組みをアピールすることでポジティブな印象を与えることができます。
またSNSや採用メディアなどで自社の働き方や従業員インタビューなどを発信することで、3Kのネガティブなイメージの払拭にもつながります。

自社がどのような企業なのか、他社と違った強みや、自社ならではの特長を積極的にアピールして応募者の増加を目指しましょう。

まとめ

人口減少による労働人口の減少は大きな社会問題ですが、特に製造業の人手不足の深刻さは業界特有の教育方法やネガティブなイメージが根本にあります。人材を確保して現場力を高め、自社の技術を後世につなげるためには、DXの推進や教育体制の構築に注力する必要があります。

JMAMでは、生産に関するトータルな管理技術を体系的に学習できる「生産マイスター®シリーズ」を提供しています。製造現場の人材育成をご支援しておりますので、お気軽にご相談ください。

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JMAM HRM事業 編集部

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