日本能率協会マネジメントセンターでは、新入社員を対象とした「イマドキ新入社員の仕事に対する意識調査」を毎年実施しています。最新の調査結果からは、過去最高となった「定着意欲」の高さと、その一方で低下が見られる「キャリア自律」の意識、さらにデジタルネイティブ世代特有の「ビジネスITスキルへの不安」という、新たな課題が浮き彫りとなりました。本コラムでは、最新の調査データをもとに、2025年新入社員の特徴と、企業が求められる育成のポイントについて解説します。(調査概要は以下参照)
■調査概要
調査方法: インターネット調査
調査地域: 全国
有効回答: 2,674名(新入社員1,085名、上司・先輩社員1,589名)
調査期間: 2025年6月
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「キャリアは会社任せ」の傾向が強まる
就社志向が高まる一方で、「キャリアは自ら切り拓く必要がある」と回答した割合は65.3%にとどまりました。2020年の89.2%から比較すると、20ポイント以上も低下しています。
この2つのデータから読み解けるのは、今の新入社員が「今の会社で長く働きたいが、キャリア形成については会社に導いてほしい」という、受動的な姿勢を持っている可能性です。変化の激しいビジネス環境において、企業は社員に対し「自律的なキャリア形成」を求める傾向にありますが、新入社員の意識とはギャップが生じています。
単に長く在籍してもらうだけでなく、組織の戦力として活躍し続けてもらうためには、企業側からの働きかけが重要です。具体的には、新入社員一人ひとりが「自分のありたい姿(Will)」と「組織への貢献領域(Must)」の重なりを見出せるよう、対話や研修を通じて支援していく必要があります。
テレワーク下の課題1位は「PC・ITスキルの欠如」
もう一点、2025年調査で注目すべきは「ビジネスITスキル」に関する意識です。Z世代は生まれた時からインターネットやデジタルデバイスに触れている「デジタルネイティブ」と呼ばれますが、ビジネス現場でのIT活用においては課題を抱えていることが明らかになりました。
新入社員が抱える不安・課題についての調査では、「パソコンやITのスキルがない」という項目が、配属前・配属後を問わず上位にランクインしています。特に、入社1年目の主な勤務場所が「在宅(テレワーク)」中心だった層においては、この「パソコンやITスキルの欠如」が課題・不安の第1位となりました。
スマホやSNSの操作には長けていても、業務で使用するPC操作、Officeソフト、ビジネスチャット、セキュリティへの配慮といった「ビジネスITスキル」には不慣れなケースが少なくありません。特に在宅勤務では、オフィスのように周囲へ気軽に操作方法を聞くことが難しいため、業務遂行の大きなボトルネックになっていると考えられます。
企業としては、「デジタル世代だからPCも使えるだろう」という予断を持たず、入社直後の段階から基本的なビジネスITスキルの習得支援(リスキリング)を行うことが、新入社員のスムーズな立ち上がりと不安解消につながると言えるでしょう。
「失敗への恐れ」と「受け身」の狭間で
前述したビジネスITスキルの不足などが業務の停滞に直結してしまう背景には、Z世代特有の「心理的な板挟み」の状態が浮かび上がってきます。
まず注目すべきは、「失敗を恐れ、新しいことに挑戦するのをためらうことがある」ということです。「正解」を求め、失敗を極端に回避しようとする傾向は、裏を返せば「確信が持てるまで動けない」という行動抑制につながります。
さらに、「わからないものは教えてもらえるものだと思った」という項目も特徴的です。 ここからは、「(自分から聞きに行かなくても)必要なことは会社や先輩が教えてくれるはずだ」という、受動的な姿勢が見え隠れします。
つまり、彼らは「失敗したくないから、勝手なことはしない」という慎重さと、「誰かが教えてくれるのを待つ」という受け身の姿勢が重なり合うことで、結果として「わからなくても質問できず、ただ立ち止まってしまう」という状況に陥っているのです。
この沈黙を破るために必要なのは、先輩社員からの「お節介」とも言える介入です。彼らの「教えてもらえるもの」という期待を逆手にとり、「わからないことは聞いていい(失敗ではない)」というルールを最初に伝え、こちらから声をかけ続けることで、彼らの心理的なハードルを下げていく必要があります。
2025年新入社員の育成計画に向けて
本コラムでご紹介した通り、2025年の新入社員は「高い定着意欲」を持つ一方で、「受動的なキャリア観」や「ビジネスITスキルへの不安」、そして「質問することへの心理的ハードル」という課題を抱えています。
彼らのポテンシャルを最大限に引き出し、組織に定着させるためには、従来の研修内容をそのまま実施するのではなく、これらの特性(つまずきポイント)を先回りしてフォローするような育成施策のアップデートが求められます。
今回ご紹介したデータ以外にも、調査報告書では「2020年入社組との意識比較」や「文系・理系別の傾向」など、より詳細な分析結果を掲載しています。今後の採用・育成計画の立案における基礎資料としてご活用ください。
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