コラム
  • 対象: 全社向け
  • テーマ: ビジネススキル
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PEST分析とは?目的から実践の手順まで徹底解説

PEST分析とは?目的から実践の手順まで徹底解説

PEST分析は、外部環境を分析する重要な手法として、多くのビジネスパーソンに活用されています。

しかし、その本質的な価値は単なる分析ツールとしてだけではありません。従業員一人ひとりの視野を広げ、組織の戦略立案能力を高める効果がある点においても評価されています。

今回は、PEST分析を実践する目的やメリット、実践の手順について紹介します。効果的な人材育成を行うための参考になれば幸いです。

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PEST分析とは

PEST分析は、企業が直面する外部環境を包括的に理解し、戦略立案に活用するためのフレームワークです。

下記の4つの要素から、自社を取り巻く外部環境を分析します。

Politics
(政治)
国内の政策や規制強化・緩和、市民団体の動向、税制改正、最高裁判所の判決、外交関係などを分析
Economics
(経済)
景気や為替相場、金利の変動、日銀短観、経済成長、失業率などを分析
Society
(社会)
人口動態や環境問題、暮らしの変化、健康問題、教育問題、文化、世論などを分析
Technology
(技術)
技術革新や特許の動向、投資動向などを分析

外部環境を分析するフレームワークは、マクロ環境分析とミクロ環境分析に分けられます。

マクロ環境分析は自社に間接的に影響する要因を、ミクロ環境分析は自社に直接的に影響する要因を分析します。PEST分析は、マクロ環境分析に該当する分析方法です。

なお、PEST分析とあわせて用いられることが多い分析手法としては、SWOT分析とファイブフォース分析があります。いずれも、外部環境と内部環境を分析するフレームワークです。

PEST分析の目的・メリット

PEST分析の主な目的は、組織の意思決定と戦略立案の質を向上させることです。

断片的な情報収集ではなく、構造化して環境を理解することで、戦略の妥当性を適切に評価したり、効果的なリスク対策を実施したりするスキルが養われます。

そのため、PEST分析の実践は部門や役職を問わず、すべてのビジネスパーソンに求められる汎用的なスキルを育てることにもつながります。

例えば、人事部門においては、働き方改革関連法制(政治的要因)、人件費動向(経済的要因)、価値観の多様化(社会的要因)、HRテクノロジーの進展(技術的要因)など、さまざまな外部環境の変化を把握し、人事戦略の立案に活かすことができます。

これは、従業員の視野を広げ、経営的な思考を養うのにも適した考え方です。

マクロ環境を体系的に分析する習慣を身に付けることで、日々の業務における意思決定の質が向上しやすくなり、より戦略的な提案や施策の立案をすることが可能となります。

PEST分析の活用シーン

PEST分析は、どのような状況での活用に向いているのでしょうか。

PEST分析が適した場面と適さない場面について解説します。

適した場面

PEST分析は、自社の都合や既存の前提にとらわれることなく、マクロな視点からトレンドを読み解く手法です。

この考え方が特に効果を発揮するのは、下記のような場面です。

  • 商品・サービスの設計のタイミング
  • マーケティング戦略策定のタイミング
  • 経営戦略の見直しのタイミング
  • 新規プロジェクトの立ち上げのタイミング など

また、PEST分析は管理職も積極的に活用することをおすすめします。

部署ごとの業務戦略を環境変化に適応させる際の指針として活用できるほか、チーム戦略を策定する際の重要な参考資料として活用できます。

適さない場面

PEST分析が必ずしも適さない場面もあります。

まず、PEST分析は主に長期的なトレンドを捉えるための手法であるため、短期的な分析には向いていません。PEST分析が対象とするマクロ環境の変化は、その性質上、数年規模でゆっくりと進行するケースが多いためです。

短期的な変化に対応するためには、別の分析手法と併用することが有効です。

また、内部環境の分析にも不向きといわれています。これは、PEST分析があくまでも企業の外部環境の変化を分析対象とする手法だからです。

内部環境の分析には、SWOT分析などの別のフレームワークを活用することが推奨されます。

PEST分析を実践する手順

PEST分析の実践には、体系的なアプローチが必要です。

具体的なステップは下記の通りです。

  • 1.目的を明確化し共有する
  • 2.情報を収集する
  • 3.収集した情報を4つの要素に分類する
  • 4.「事実」と「解釈」を分けて整理する
  • 5.事実を「機会」と「脅威」に分類する
  • 6.各項目の対応時期(優先度)を明確化する
  • 7.事業戦略に反映する

各項目について、より詳しく説明します。

ステップ1|目的を明確化し共有する

まずは、PEST分析を実践する目的の明確化と共有から始めます。

PEST分析は最終的に組織の戦略策定につながるため、分析の目的と背景をチーム全体で共有することが重要です。

ステップ1を通して、何を考え、どのような視点で分析を進めるべきかについて、組織内で共通認識を持つことができます。

ステップ2|情報を収集する

次に、情報収集の段階に移ります。政治、経済、社会、技術の4つの視点に基づいて、チームメンバーで情報を収集します。

この際、政府などの公的機関が発表している資料や学術雑誌に掲載されている論文など、信頼性の高い情報源を活用することで、より正確なデータを得ることが可能です。

調査対象をチームメンバーに割り振って情報を収集すると、効率良く情報を集められます。

ステップ3|集めた情報を4つの要素に分類する

公的なデータなどをもとに集めた情報を、Politics(政治)、Economics(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの要素に分類します。

この作業はアナログまたはデジタルの手法で行うことができ、チームの規模や好みに応じて選択しましょう。

アナログは、情報を付箋などに書き出して、4つの要素に区分したホワイトボードに貼り付けて分類する方法です。

デジタルは、ドキュメントソフトなどのアプリケーションを利用して分類する方法です。

ステップ4|情報を「事実」と「解釈」に分類する

分類した情報を「事実」と「解釈」に区分します。PEST分析では、実際に起きている客観的な事実にフォーカスすることが重要です。

主観的な解釈や客観的データの裏付けがない情報は、分析の精度を下げる要因となるため、この段階で除外します。

ステップ5|事実を「機会」と「脅威」に分類する

ステップ4で整理した4つの要素すべての事実を、それぞれ機会と脅威の2種類に分けます。

機会とは、自社にとっての新たなチャンスなどプラスになる要因のことです。脅威は、社会的に注目されている問題など自社にとってマイナスになる可能性がある要因を指します。

ここで重要なのは、同じ環境変化でも、企業の業種・規模・戦略によって与える影響が異なる点です。

例えば、高齢化の進展は若者向けのサービスを提供する企業にとっては脅威(主要顧客層の減少)となりますが、介護サービスを提供する企業にとっては機会(市場拡大の可能性)となる場合があります。

そのため、他社の分析結果をそのまま適用するのではなく、自社独自の視点で「機会」「脅威」の判断を行う必要があります。

ステップ6|各項目の対応時期を明確化する

ステップ5で分類した機会と脅威について、それぞれ自社への影響レベルや実行可能性などを考慮しつつ、取り組みの優先度に応じて「即時対応(1年以内)」「中期対応(1~3年)」「長期対応(3年以上)」に分類します。

これは、具体的な戦略や施策を検討する際、どのようなタイムスパンで取り組むべき課題かを明確にするために行います。

ステップ7|事業戦略に反映する

ステップ6までの分析結果をもとに、PEST分析の目的である事業戦略に落とし込んでいきます。

特定された脅威を回避しながら、機会を活かして事業成長を図る方法を模索します。

この際、PEST分析自体は手段であって目的ではないことを認識しておくことが重要です。

分析結果にとらわれすぎず、得られた情報をいかに戦略に活用していくかという視点を常に持ちながら進めることが成功の鍵となります。

まとめ

PEST分析は、企業の外部環境を政治、経済、社会、技術の4つの視点から体系的に分析し、戦略立案に活用するフレームワークです。マクロ環境を構造的に理解することで、組織の意思決定と戦略立案の質を向上させることができます。

新入社員から管理職まで、すべての従業員の戦略的思考力を養う育成プログラムにPEST分析を取り入れることで、組織全体の環境分析力と意思決定の質を高める効果が期待できます。

まずは部門ごとの勉強会や研修に取り入れ、実践的なワークショップを通じて、このスキルを定着させていきましょう。

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