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  • 対象: 全社向け
  • テーマ: ビジネススキル
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ビジネスコーチングとは?メリットや導入方法、注意点まで解説

ビジネスコーチングとは?メリットや導入方法、注意点まで解説

近年、企業における人材育成の手法として「ビジネスコーチング」が注目を集めています。従来型の一方的な指導とは異なり、対話を通じて個人の潜在能力を引き出し、自律的な成長を促す手法です。このアプローチは、予測困難なビジネス環境において、より重要性を増しています。

今回は、ビジネスコーチングの基本概念から具体的な導入方法、実施する際の注意点まで、企業の人材育成に携わる方々に向けて詳しく解説します。

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ビジネスコーチングとは

「コーチング」の一分野である「ビジネスコーチング」とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。まずは、その概要と対象者について解説します。

ビジネスコーチングの概要

コーチングとは、対話を通じて対象者の強みを見出し、自己成長や自発的な行動を促すコミュニケーション手法です。ビジネスやスポーツ、教育など、幅広い分野で活用されています。

主な目的は、自己認識を深め、潜在能力を最大限に引き出すことで、最終的な目標達成を支援することです。

そしてビジネスコーチングは、ビジネス分野に特化したコーチングです。企業における個人やチームを対象に、ビジネス上の目標達成や課題解決のために、自ら考え、行動できる従業員を育成する手法を指します。

なお、同じ人材育成の手法であるティーチングは、コーチングとは別物です。

ティーチングは指導者が知識やスキルを提供し、対象者がそれを学ぶ形式であるのに対し、コーチングは双方向の対話を通じて対象者本人から答えを引き出すことを重視します。

コーチングとティーチングの違いについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

ビジネスコーチングの対象者

企業内でのコーチングは、主に従業員を対象として、人材育成に関わる現場の管理職が行うものというイメージがあるかもしれません。

しかし、ビジネスコーチングになると、新入社員からエグゼクティブに至るまで、幅広いビジネスパーソンを対象とします。

ただし、対象者によって目的やテーマは異なります。

▼ビジネスコーチングの対象者別テーマ

対象者 テーマ 目的
新入社員・若手社員 仕事の進め方、社内コミュニケーション、問題解決、目標設定、自己管理とメンタルヘルス ・業務の生産性の向上
・問題解決に対して主体的に行動できるようにする
・自己管理能力を高める
・キャリアの基盤を形成する
中間管理職 リーダーシップ、部下の育成、社内コミュニケーション、業務過多の解消 ・効果的なリーダーシップを発揮できるようにする
・部下の成長を促進し、チームの生産性を向上させる
・コミュニケーションスキルを強化し、円滑なチーム運営を支援
・業務の優先順位を適切に管理し、過負荷を避ける
経営者・役員 意思決定能力の向上、タイムマネジメント、企業の持続的成長 ・重要な経営判断を迅速かつ効果的に下せるようにする
・時間の使い方を最適化し、戦略的なリーダーシップを発揮
・組織の持続可能な成長を目指し、長期的な視野での経営を支援

ビジネスコーチングが企業に注目されている背景

将来の予測が困難なVUCAの時代に突入し、急激な環境変化にさらされている企業にとって、複雑な問題への対応力やスピード感のある意思決定がこれまで以上に求められています。

もはや従来のトップダウンによる指示のみでは、急速な変化に対応することは困難です。ボトムアップやミドルアップダウンも取り入れた柔軟な組織マネジメントが不可欠といえるでしょう。

その際に求められるのが、自らの意思で考え、能動的に業務を遂行できる自律型人材です。

上司からの指示を待つことなく、変化へ柔軟に対応し、主体的かつ積極的に行動できる自律型人材を育成することで、企業全体の競争力向上につながる可能性があります。

現在、企業における自律型人材を育成するための糸口として、ビジネスコーチングが強く求められているのです。

なお、従業員の自律を支援するサービスとしてコンサルティングもあげられますが、ビジネスコーチングとはアプローチが異なります。

コンサルティングではコンサルタント主導で明確な成果や目標達成を目指すため、業務効率化やコスト削減など、短期間での具体的成果が期待できます。

一方、コーチングはクライアント自身の内面から答えや解決策を引き出す手法です。個人の強みや弱み、価値観の理解を基盤として、パフォーマンスの向上やリーダーシップ能力の強化を目指します。

組織や個人が目指す目標や課題に応じて、適切な手法を選択することが重要です。

自律型人材の詳細については、こちらをご覧ください。

ビジネスコーチングを導入する具体的なメリット

次に、ビジネスコーチングを導入することにより、従業員や企業にもたらされるメリットを紹介します。

自発的に考え行動する力が身に付く

コーチングは、自分で考える力や行動する力を養う手法です。

コーチからの良質な質問で気づきや内省が促されるだけでなく、達成したい目標や達成方法を自ら考えることが動機づけとなり、自発的な行動変容へと導かれます。

キャリアの方向性・目標が具体化される

ビジネスコーチングでは、コーチとの対話を通じて自分自身の価値観や興味関心、保有スキルなどを掘り下げます。その過程で自己理解が進み、自分の強みや能力などを客観的かつ前向きに評価できるようになります。

自己理解のプロセスを経ることで、キャリアの方向性や社内で果たすべき役割などへの理解が深まる点は、ビジネスコーチングの大きなメリットです。

また、定期的な対話を繰り返すなかで新たな目標を発見し、達成に向けたステップの設定へとつながっていきます。

自己肯定感が高まる

ビジネスコーチングを通じて自己理解が深まると、自分自身を肯定的に捉え、価値のある存在だと認める気持ちが育まれます。

長所や成功体験だけでなく、短所にも目を向けて受け入れることで自信が生まれ、他人との比較ではない独自の価値を再認識し、ポジティブな自分像が確立されます。

その結果、困難に直面しても自分を信じて、前向きに行動できる精神が養われます。

組織の活性化につながる

社内で行うビジネスコーチングは、対象となる従業員にポジティブな影響を与えるだけでなく、コーチ役を務める上司にとってもビジネスパーソンとして成長できる良い機会です。

コーチには、傾聴力をはじめ、質問力や承認力、忍耐力など、幅広いスキルが求められます。

対象者の従業員もコーチ役の上司も双方が成長することにより、良好な人間関係の構築や強いチームの形成、組織全体の活性化などに寄与します。

ビジネスコーチングを導入する方法

ビジネスコーチングを導入する方法として代表的なものは、外部コーチに依頼する方法と、社内コーチを育成する方法です。

それぞれ詳しく解説します。

方法1|外部コーチに依頼する

1つ目は、外部コーチに依頼する方法です。

外部のコーチは社内の人間関係や文化に影響されることなく、完全に客観的な立場でコーチングを行うことができます。そのため、従業員が安心して自分の課題を話し、解決策を見つけやすくなることがメリットです。

また、多様な業界や職場での経験を生かした指導を受けられるため、従業員にとっては新しい刺激や学びを得る機会にもなるでしょう。

特に、経営トップや管理職などを対象とする、高いレベルのスキルが求められるエグゼクティブコーチングについては、外部の専門家に依頼するケースが多くみられます。

ただし、外部コーチを雇うには高額な費用がかかり、予算が限られている場合は大きな負担になります。

企業の文化や特性を深く理解していないことから、企業の実情に合ったコーチングが受けられるとは限らない点も注意しましょう。

方法2|従業員にビジネスコーチングのスキルを身に付けてもらう

2つ目は、従業員にビジネスコーチングのスキルを身に付けてもらい、コーチングを担当してもらう方法です。

この方法は特に、外部の専門家に依頼するコストを削減できるのが大きなメリットです。また、会社の文化や価値観に基づいた指導も可能になるほか、次世代のコーチの育成もしやすくなります。

コーチの候補者となる従業員にビジネスコーチング研修などを受けてもらい、社内コーチを主軸として定期的な1on1を実施するのが主な流れです。

なお、ビジネスコーチングをテーマとした研修では、主にコミュニケーション能力や良好な関係を構築する力、現実的な目標設定のためのサポートをするスキルなどを身に付けるための内容を扱います。

社内での体系的な育成体制の構築が難しい場合や、リソースが足りない場合は、外部研修・セミナーも検討しましょう。

JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)が法人向けに提供する「eラーニングライブラリ®」でも、「ビジネス・コーチング基本コース」を受講できます。

コーチの役割やコーチングの基本的な考え方、コーチングスキルをオンラインで学べます。詳細は下記からご覧ください。

ビジネスコーチングを実施する際の注意点・ポイント

ビジネスコーチングを実施する際は、下記の点に留意しましょう。

コーチングの目的は何かを教えることではない

ビジネスコーチングのゴールは、対象者自身が課題に気づき、設定した目標の達成に向けた計画を立て、自発的に行動できるようになることです。

ティーチングのように、目標達成に向けたアクションや課題解決の方法を教えることが目的ではありません。

そのためビジネスコーチングでは、質問を通じて対象者に気づきを与え、自己理解を深めさせることに焦点を当てましょう。

長期的な施策であることを押さえておく

ビジネスコーチングは、短期間で目に見える成果が得られるものではなく、その分、コストもかかります。

短期間での成果が求められる課題であれば、むしろコンサルティングやティーチングのほうが即効性を期待できるでしょう。

ただし、ビジネスコーチングは、自律型人材の育成をはじめ、チームワークの強化や従業員のスキル向上など、企業に長期的な利益をもたらす可能性を秘めています。

こうした理由により、ビジネスコーチングの導入にあたっては、発生するコストと時間を考慮しつつ、持続可能な成果を目指す長期的な視点が求められます。

相性の良いコーチを選ぶことが大切

ビジネスコーチングの効果を最大化するために、忘れてはならないのがコーチと対象者の相性です。

両者の相性が合わず、良好な信頼関係を築けない場合、本音レベルでの対話ができず、期待した成果が得られないケースも少なくありません。

育成担当者や上司がコーチを選定する際は、従業員のニーズや性格、働き方などを勘案した上で慎重に相性を見極めることが重要です。

まとめ

繰り返しになりますが、従来のトップダウンによる指示のみでは、急速な変化に対応することが困難な時代です。そのため、ボトムアップやミドルアップダウンも取り入れた柔軟な組織マネジメントが不可欠といえるでしょう。

その際に求められるのが、自らの意思で考え、能動的に業務を遂行できる自律型人材です。

自律型人材を育成するためにも、一人ひとりの自己理解や行動変容を促すビジネスコーチングは効果的です。ビジネスコーチングは個人の成長にとどまらず、組織全体にもプラスの影響を与えます。社内で実施する際は、短期的な成果ばかりにとらわれることなく、長期的な視点で継続的に取り組むことが重要です。

特に、変化の激しい市場での生き残りに欠かせない自律型人材の育成を検討されている企業様にとっては、後押しする手法といえるでしょう。

そして最後にもう一点。自律型人材を育成するには時間がかかります。自律型人材をコーチングする人材の育成も、同じように時間がかかるプロセスです。

そのため、コーチング自体を外部の力を借りる手段も検討することをおすすめします。自社の状況や課題に応じて、適切な方法を選びましょう。

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文責:JMAM HRM事業 編集部
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