コラム
  • 対象: 人事・教育担当者
  • テーマ: マネジメント
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「変革推進のキーとなる人材像」を現場目線で多角的に検討 ―第3回ものづくり人材育成企業交流会レポート

「変革推進のキーとなる人材像」を現場目線で多角的に検討 ―第3回ものづくり人材育成企業交流会レポート

製造現場が抱える課題に対し、実践的な解決策を見出す場としてスタートした「ものづくり人材育成企業交流会」。2026年3月3日に行われた第3回交流会では、12社から20名が参加し、製造業の現場で変革推進のキーとなる人材像と、その期待役割や必要な能力をテーマに多角的な交流が行われました。
(開催日:2026年3月3日 場所:AP東京八重洲 7階Q+Rルーム(主催:日本能率協会マネジメントセンター))

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ものづくりのスマート化で、経営課題に立脚した「全体最適」をめざす

冒頭、株式会社日本能率協会マネジメントセンター取締役の嶋元洋二氏の開会挨拶に続いて、トレンド情報として、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)のチーフ・コンサルタント、戸張敬介氏から「デジタルを活用したプロセス全体の最適化と現場の課題解決」と題しての講演が行われました。

ここでは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、経済産業省(METI)、JMACが三者共同でまとめた「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン」(SMDG)が紹介されました。製造現場での「DX」が、既存業務を単に機械やシステムへ置き換える「部分最適」に留まりがちであるのに対して、本ガイドラインは製造業のものづくり全体プロセスを4つのチェーン(エンジニアリングチェーン、サプライチェーン、プロダクションチェーン、サービスチェーン)で捉え、経営課題に立脚した「全体最適」を目指すことを主眼としています。

中核となるツールは、スマート化の切り口を標準化した57の変革課題マップです。これは現場の「悩みごと」とデジタルでの「実現イメージ」をセットにしたもので、5段階のレベル設定により、現状と目標とのギャップから必要な施策を明確にすることができます。活用においては、部門や世代を超えたワイガヤ(議論)が重視されており、IT部門とものづくりに関わる諸部門が共通の目標(KGI)を持って対話することを推奨しています。

変革課題マップによる議論をもとに、データ管理による自動化や品質改善などの具体的な施策へ落とし込み、人材育成と実践を並行して進める変革のあり方が示されました。

独自の視点で人材育成に挑む2社からの知見共有

続いて、独自の視点で改革に挑む2社の事例を通じて、これからの時代に求められる人づくりのヒントが提示されました。

1つは、組織の縦割りという課題を打破する「インテグレート人材」の育成です。多くの製造現場では、事業の成熟に伴い組織が専門化し、自工程の最適化には強い一方で、全体を俯瞰する能力が育ちにくいという課題を抱えています。既存の標準を守ることに終始し、現場の成長機会が失われている現状に対し、この会社は「人や情報をつなぎ、流れをつくる」人材、つまり「インテグレート人材」の必要性を説いています。

「インテグレート人材」は、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンが交差するバリューチェーン全体を視野に入れ、部門横断的に課題を捉えて最適化を推進する役割を担います。育成面では、世界各地の拠点の知見をケーススタディ化し、実務を追体験できる研修体系を構築しています。知識力(IQ)だけでなく、異なる要素をまとめ上げる「人間力」を兼ね備えたリーダーを組織的に生み出す仕組みです。

もう1社の事例として紹介されたのは、将来のリーダー不足という危機感から生まれた「基幹人材に求める3つの資質」の定義です。2030年までに管理職層の多くが定年を迎えるという状況を見据え、同社では現場のオペレーション能力とは異なる資質を追究しています。

その資質とは、経験や声の大きさに頼らずデータに基づき事実で議論する「論理的思考」。相手が望む形で接し共に成長をめざす「プラチナルール」を基盤とした「“ともにひとつに”原則」。そして、未来の理想を描き(Envision)、人々を巻き込み(Engage)実行していくなど、5つの「E」によるリーダーシップです。特に、事業環境がめまぐるしく変化する現代においては、理想を掲げ、なおかつ周囲を腹落ちさせる力も変革の原動力になると説いています。

2社の事例発表は、ともに知識力と人間力を兼ね備えたリーダーを組織的に輩出する仕組みづくりを実践している内容でした。

グループ討議で「変革推進のキーとなる人材像」を具体化

グループディスカッションは4つのグループに分かれて実施し、今回のテーマである「変革推進のキーとなる人材像」の可視化・具体化を図りました。各グループのディスカッションの要旨は次のとおりです。

【Aグループ】
Aグループは、「ありたい未来を明るく語り、仲間とともに実現する人材」を理想像として掲げました。具体的には、未来を言語化する力、未来に導く推進力、変化を楽しむ姿勢、そして「一緒に働きたい」と思われる人間力の4点を重視しています。

必要な能力としては、ビジョンを描く力、課題解決力、質の高いコミュニケーション力を挙げ、これらを「ゴール設定力」「実行力」「コミュニケーション力」の3軸で、役職(一般社員、主任・リーダー、管理職)ごとにスキルマップにまとめました。

若手は自職場の課題抽出や正確な「報連相」から始め、年次が上がるにつれて部門の課題設定、さらには10年先を見据えたシナリオプランニングや事業全体の最適視点での提案が求められるとしています。

Aグループのディスカッション

【Bグループ】
Bグループは、ものづくりの現場における変革推進の鍵として、「業務・組織を変革して未来を作れる人材」を理想像に掲げました。

業務面では、現場力やデジタルスキルに加え、正しい方向性に基づいた「仕事への熱意」と、周囲の潜在的な意見や能力を発掘し正しく伝える力を重視。組織面では、互いを肯定し合い、芯を持ちつつも柔軟に軌道修正ができる「提言力」を定義しました。さらに、他社の動向を踏まえて将来を描く視点も不可欠としています。若手から管理職までが各立場でこれらを実践することで、明るい未来が切り拓くことをめざすものです。

Bグループのディスカッション

【Cグループ】
Cグループは、変革推進のキーマンを「変革」と「推進」のそれぞれの役割に分けて定義しました。「変革」には、現場の小さな疑問を組織の課題へ変換する力が必要であり、その原動力として、工夫の起点となる面倒臭がる力や価値創造力を挙げました。一方、「推進」には、アイデアを後押しする共感力や人間力、周囲を巻き込む関係構築力が不可欠であるとしています。

生産現場では一人で両方を高水準に担うのは困難であるため、それぞれの専門家がタッグを組むことこそが変革の鍵であると結論づけました。

スキルマップでは、年次や役職が上がるにつれて、これらの能力を個人的なレベルから組織・事業全体へと広げていくことが求められるとまとめています。

Cグループのディスカッション

【Dグループ】
Dグループは、変革推進のキーパーソンを「現状を正しく分析し、全体最適を追求して未来を変えていく人」と定義しました。必要な素養としては、分析力や突破力に加え、周囲を巻き込む包容力と芯の強さのバランスを重視しています。

スキルマップでは、職位による能力の変遷を整理しました。一般層は実務的なテクニカルスキル、中堅層は人を巻き込む対人スキル、経営層は価値創造などのコンセプチュアルスキルが求められるとしています。

最終的には、デジタル活用によりサプライチェーン等の各機能を融合させ、変革のスピードを加速させることで企業の競争力を高めていくべきだとまとめました。

Dグループのディスカッション

4つのグループの共通点は、まず「ありたい未来」を描き、現状を分析して変革・推進する力を定義している点です。また、高度な知識やスキルだけでなく、周囲を巻き込むためのコミュニケーション力や共感力・人間力も不可欠であるとしています。そして、年次や役職が上がるにつれて、貢献の範囲が個人や自職場から組織・事業全体へと拡大していくべき、という成長の捉え方の一致が見られました。

変革推進のキーになる人材のあり方と期待される役割

各グループの討議の傾向をまとめます。
変革推進のキーとなる人材には、まず、めざすべき将来像(To-Be)を明るく語り、仲間とともにその実現をめざす姿勢が求められます。その土台として、他者へのリスペクトに基づいた信頼関係の構築や、現状を「もっと良くしたい」という強い熱量を持つことが不可欠です。

実務面では、現場の人や物の動きを熟知したうえで、IEやQCといった改善技術を習得し、データに基づいた論理的な道筋を立てる能力が重要です。また、長期的な時間軸でゴールを設定し、自部門のみならず他部門の最適化にまで視野を広げる俯瞰的な視点も欠かせません。

さらに、周囲の理解や共感を引き出して人を動かす力も期待されています。メンバーに対して日常的に適切なフィードバックを行い、利害調整や根回しを通じて他部門からの協力を得るといった行動も重要です。

「変革推進のキーになる」人材への期待

「変革推進のキーになる」人材への期待

依然として関心が高い、技術伝承とデジタル活用

実施後のアンケートによると、満足度は5段階評価で平均4.88の結果となりました。今後希望する活動としては、「現場課題や取り組み事例の共有とディスカッション」が多く挙げられており、「工場、研修施設の見学」「参加企業間での懇親」が続きます。今後の希望テーマについては、依然として「技術伝承の取り組み」「製造現場におけるデジタル活用の取り組み」への関心が高いことがわかりました。

第3回ものづくり人材企業交流会 アンケート結果

満足度:4.88 時間配分の適切さ:4.5 今後希望する活動/今後の取り組みテーマ希望/情報提供希望

自ら意欲を燃やす「自己発火」の姿勢が変革の鍵

最後に、日本能率協会コンサルティング(JMAC)取締役の石田秀夫氏から、総括コメントをいただきました。

石田氏は、変革の鍵は、自ら意欲を燃やす「自己発火」の姿勢にあり、将来のあるべき姿を具体的に描いて共有することが周囲を巻き込む原動力になると話しています。また、問題の発見と解決を切り分け、別の人材に担わせる工夫や、IEやQCといった管理技術の基礎を習得することの重要性も説いています。組織面では、改善活動を日常化し、メンバーが楽しみながら主体的に取り組めるような称賛の仕組みや場を整えることも不可欠だとしています。最終的に、デジタル化は単なる手段であり、得られたデータを活用して現場の改善力や収益力を高めることが真の目的であると締めくくっています。

JMAMでは、製造業が直面している今日的な課題について、今後も現場のリアルな声を集め、ニーズに合ったテーマ設定を行いながら、本交流会を継続して開催していきたいと考えています。

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