急速に変わるいまの時代、知識を詰め込むだけではリーダーは育ちません。
自社という“ホーム”を離れ、価値観もルールも異なる“アウェイ”に飛び込むことで、思考の枠を揺さぶり、仕事観そのものをアップデートする越境学習はご存じでしょうか?
本コラムでは、75年にわたり企業研修を手掛けてきたJMAMが、なぜ今越境学習を提供するのかをプログラムを設計・運営する青木が、現場での経験を交えてご紹介します。
インタビュイー
株式会社日本能率協会マネジメントセンター
ラーニングデベロップメント本部 事業開発部越境ラーニング開発センター
青木 麻衣也
関連資料
関連資料
「越境学習」を通じて次世代のリーダー育成を支援します
越境学習 サービス資料
越境学習とは?日常を離れて得る”揺さぶり”の効果
Q:「越境学習」とは、どのような研修プログラムですか?
青木:ビジネスパーソンが日常業務とは異なる領域に身を置き、価値観を揺さぶられる体験を通じ、気づきや新しい視点を得る学習手法です。普段の職場「ホーム」と、異なる環境「アウェイ」を往来することで、自分の思考の癖や強みがより鮮明になります。
Q:「越境学習」のサービス開発担当者として、大切にしていることはありますか?
青木:越境学習の企画・開発を担当し、現地プログラムの設計から運営までに携わっています。以前は別の事業部で10年ほど手帳商品を企画していました。長年の手帳づくりで培った「丁寧さ」や「神は細部に宿る」というものづくりの姿勢を、研修プログラムの開発においても大事にしています。研修と聞くと身構える方でも自分から楽しんで参加したくなるような仕掛けを生み出したいと思っています。
VUCA時代を生き抜く“思考の枠”を揺さぶる原体験
Q: 75年以上にわたり企業研修を提供してきたJMAMが、なぜ「越境学習」をはじめたのですか?
青木:社会の変化が激しく先が読めないVUCAの時代において、リーダーには「自ら考え、主体的に動く力」が求められています。これまでの研修スタイルだけでは時代の変化に十分応えられない、という危機感がありました。
ケーススタディを豊富に盛り込むなど、研修は少しずつリアルに近づける努力を続けてきましたが、誰かが用意したケーススタディを解くだけでは、自ら問いを立てる力は育まれないという壁に直面したのです。
JMAMが重視するのは、「思考の枠を揺さぶる原体験」です。私たちが用意するのは、あえて「正解を定義していない」学びの場。あえて抽象度の高いテーマを設定することで、参加者は自ら問いを立て、自分事として課題に落とし込んでいかなければなりません。地域という「自社の常識が通じないアウェイな環境」も、そのための手段です。正解がない中で、葛藤しながらも自ら進むべき道を決定する。そのプロセスこそが、本物の主体性を育むと考えています。
地域に飛び込み“生きた課題”とぶつかる──当事者意識を覚醒させる本気の学び
Q: 地域に越境して学習する理由を教えてください。
青木:従来のケーススタディとは異なり、実際に地域が抱える本物の課題に向き合う経験を通じて、正解のない「生きた課題」に向き合えることが特長です。
たとえば、現地で目の当たりにするのは、人口減少や少子高齢化といった「社会変化の最前線」です。「人が減ると街はこうなるのか」という現実を肌で感じることで、ニュース越しの知識が、切実な「自分たちの未来の姿」として迫ってきます。
同時に、そこに暮らす人々と対話を重ねる中で、課題の裏にある「人の顔」が見えてきます。社会課題への「危機感」と、目の前の人への「共感」。この双方が揺さぶられ、「なんとかしたい」という強烈な当事者意識が芽生えることで、これまでの自分の論理を超えて思考し始めます。
地域に越境する目的は、単なる地域貢献ではありません。参加者の本気のスイッチを入れるための不可欠なフィールドなのです。
また、この経験を最大限に生かすにはBefore(研修前)/After(研修後)の設計が鍵となります。事前研修では、限られた研修期間で参加者の気づき・学びを最大限に発揮するために参加目的を明確化する時間にしています。
終了後の事後研修では、単に「楽しかった」では終わらせず、自分の経験をどのように組織に持ち帰り活かすかを振り返ります。自社の現場に置き換えるワークを通じ、越境学習が組織の行動変容につながるよう設計されている点が、JMAMならではの強みです。
参加者が夢中になる学びのデザイン
JMAMでは、「Enjoy Your Growth」というコーポレートメッセージを掲げています。越境学習でも、参加者がいつの間にか夢中になり、気づけば深く学んでいるという状態を意図的にデザインしています。
例えば、以下のような工夫があります。
① 安心感の醸成
背景が異なる参加者同士の感想を共有し合うことで、「人によって見え方が違う」「そんな視点も面白い」という他者を知る学習体験ができます。また、あえてあだ名で呼び合うルールにし、肩書きを外したフラットな関係性をつくることで、気兼ねなく話せる環境を作り、参加者の発言が増えることで好奇心が生まれやすい場を作り上げます。また、プログラムには、気付きを促進するファシリテーターが帯同し、ファシリテーター自身が積極的に質問をして好奇心を持つ姿を見せることで「こんなことを聞いても良いんだ」という安心感を参加者に与え、気軽な雰囲気を醸成します。
② 問いを立てる練習
ファシリテーターから1日2つ、3つの問いを投げかけて小さなテーマを参加者に提示。それぞれがそのテーマを元に問いを立てる練習を行うことで、次第に自分でも新たな問いを生み出せるようになるといった取り組みがあります。このプロセスを通じて、ビジネスの現場に戻った際の「課題発見力」へと直結します。
Q: 越境学習ではどのような研修プログラムがあり、それぞれどのような学びを提供していますか?
青木:プログラムとしては、大きく2種類あり、参加企業の目的に応じてお選びいただけます。
| 地域資源学習型 | 地域課題解決型 | |
|---|---|---|
| 期間 | 2泊3日 | 約4カ月間 |
| 目的 | 「仕事のあり方」を見つめ直す | 「仕事のやり方」を磨く |
| 内容 | 地域の歴史・文化・人との出会い | 未知の環境で初対面のメンバーとチームを組み、地域課題に取り組む |
| 得られる効果 | ・社会における自身の存在を再認識 ・視野を広げる |
・目標設定力 ・チームビルディング力 ・実践的な課題解決力 |
また、実施形態は2パターンあり、どちらのプログラムでも選択可能です。
- 異業種交流型:複数企業の参加者が交流しながら実施
- 一社開催型:自社のメンバーのみで実施
どのプログラムも、他者との関わりを通じて、参加者が自社の常識に閉じこもらないよう、外の世界に触れることで新たな発見や刺激を受けることを重視しています。たとえ世代や、所属する企業に類似点があっても、価値観や仕事観は大きく異なります。このような「意外な違い」を知ることで、「今のやり方が正しいのか、このままで良いのか」という危機感や深い自己洞察が生まれることを目指します。
「一社開催」でも越境先の地域で様々な人との交流があり、他者との交流を通じて多様な視点を得る点は変わりません。この場合は、同一企業内で部門横断・グループ横断で参加することで、組織風土改革や横の連携強化を目的に選ばれることが多いです。自社課題解決に向けた深い対話ができ、共通体験を通じてエンゲージメントや仲間意識が高まる点が特長です。
個の学習から組織へつなぐ行動変容の仕組み
Q:「自組織への展開」を促すための行動変容には、どのような工夫やサポートをされていますか?
青木:現地で多様なリーダーに直接会うことで、参加者に巻き込み力や課題設定力の実践例を体感させています。特に地域のリーダーは、企業のリーダーとは全く異なる個性やリーダーシップを持っていることも多く、出会うこと自体が大きな学びとなります。
「あの人はこうやって試行錯誤しながら周囲を巻き込み、連携を強めたから成功した」という具体的な事例を通じてリーダーシップの多様性を理解します。また参加者自身も、「自分がなりたいリーダー像」についての目標を設定する時間を設けています。
引っ張るリーダーもいればフォロワーに回る人もいるように、多様なリーダー像を共有することで個人としての行動変容を促し、その学びを自社でのチーム運営や課題解決に還流できるよう工夫しています。地域のリーダーの取り組みを「課題発見力」「課題設定力」「巻き込み力」などの生きたケーススタディと見立て、「自社の事業や取り組みで言うとどういうことか」などと構造化・言語化し、行動宣言まで落とし込めるようにします。このようなプログラム構造と振り返り支援が、自組織への展開を実現する鍵となっています。
Q: 研修後に自社でどのような行動変容を見せているか、これまでの企業事例があればお聞かせください。
青木:越境学習を通じて、参加者は柔軟な目標再設定や創造力、意思決定力といったリーダー人材に必要な要素を実体験で体得します。自分の限界を感じていた人も、新しい環境や課題に挑戦する中で、自ら行動を起こす力が養われます。
これまで参加いただいた企業様の事例としては、実際に参加者全員が新規プロジェクトを立ち上げたり、普段あまり発言しなかった人が積極的に意見を述べるようになったりといった例があります。またある企業では、「このままではいけない」とクラウドファンディングを立ち上げる方が現れるなど、自発的な挑戦や行動変容があり、越境学習が個人の成長と組織への還流を強く促していると実感できたといったお声をいただいています。
Q: 経営戦略や人材育成全体との連携はどのように行っていますか?
青木:私たちは越境学習を、単なる「一過性のイベント」とは捉えていません。次世代リーダーを計画的に輩出するための「中長期の育成体系」の中に戦略的に組み込むことで、その効果は爆発的に高まります。
最も効果的なのは、「知識習得」→「越境」→「スキルの定着」というステップを踏むことだと考えています。
例えば、「リーダー育成3カ年プログラム」を実施する場合に、まずは従来の集合研修などで、最新の経営理論やマネジメントの知識をインプットします。しかし、知識を詰め込んで「自分はアップデートできた」と錯覚した状態のままでは、変化の激しい現場では通用しません。 そこで次に「越境学習」というアウェイに送り込みます。すると参加者は、「研修で学んだ正解が、現実の泥臭い課題の前では全く通用しない」という壁にぶつかり、自分の思考の前提を強烈に疑うことになります。
一度身につけた常識を自ら手放し、現場で必要な知恵を再構築する。この「アンラーニング」のプロセスを経て初めて、会社から与えられた役割ではなく、自分自身の内側から湧き出る「軸」や「志」に気づき始めるのです。そして越境から帰還した後、さらに伸ばしたい能力が明確になったタイミングで、それに特化したスキル支援策をピンポイントで提供します。
王道の「座学」から、枠を揺さぶる「越境」、そして「個別スキルの定着」まで。75年にわたり企業研修の歴史を牽引してきたJMAMだからこそ、これらすべての学びをブレンドし、企業の課題に合わせた最適な育成プロセスを伴走・設計できる点が、私たちの最大の強みです。
他の学習と組み合わせることで色々な学びに変化する、この「学び方のグラデーションの広さ」がJMAMの強みであり、競合他社にはない総合的な成長支援の土台となっています。企業の課題や育成戦略に沿って計画段階から一緒に設計することにより、より実践的かつご要望にあったご提案が可能になっています。
今後の展開|AI時代だからこそ「人間らしい力」を
Q: 今後、越境学習をどのように発展させていきますか?
青木:JMAMでは、2030年に向け、一人ひとりの成長を丁寧にサポートすることを核に据えた2030ビジョンを提示しています。ここに向かって越境学習もさらに進化させたます。
AI時代だからこそ、人間にしかできない「五感で感じ表現すること」、「人と人をつなげること(ネットワーキング)」、そこから生まれる「イノベーションや共創力」を育むことが不可欠だと考えています。
また、2030ビジョンの中では「人はいくつになっても成長できる」と掲げています。
JMAMの越境学習では、年齢や役職の垣根を越え、20代から60代まで幅広い世代が一緒に学び、互いの経験や価値観を共有する場を意識しています。実際、立場や年齢による壁は意外なほど感じられず、むしろ多様な視点が交差することで「学ぶことに年齢や引退はない」と体感できます。
「あらゆる世代の参加者が、お互いの違いを感じそこから学び成長する。その過程で感情をぶつけ合って、強い絆でつながり、共創が生まれていく」といった循環をたくさん作って行きたいです。1人1人の成長に寄り添う「体験知」としての越境学習を自分も学び、成長しながら提供していきたいです。
Q: 今後、やってみたいことはありますか?
青木:越境後の参加者のつながりを継続し、お互いが学びあうコミュニティを作っていきたいです。研修終了後も、参加者同士が自発的に集まってディスカッションをしたり、定期的に会っていたりという話をよく聞きますし、私たち事務局もそこへ合流することも。
直近の例として、昨年秋に高知県のプログラムに参加した越境の参加者が集まり、ゆず狩りをしに高知に戻られました。ゆずの収穫シーズンは人手不足であることと、またみんなで高知に帰りたい!という想いのマッチング成功事例です。
さらに関係者を巻き込んで新たなネットワークができ、来年もやろうという約束をしました。
今後はこうした縁をコミュニティ化し、継続的な学びと成長を支援していきたいです。
ゆず狩りの例のように、みんなで楽しみながら地域課題を解決しに行く、組織を超えた人財育成を考えたいです。
Q: 最後に、越境学習の作り手としての想いやメッセージはありますか?
青木:「学ぶって楽しい。」──越境学習の参加者のその一言に、胸が熱くなりました。同時に、二つの思いが浮かびました。ひとつは「私が今のキャリアで目指したいのは、これだ」という確信。もうひとつは、JMAMの越境学習は「楽しさや面白さの先にある、実践的な学び」を提供していると、自信をもって言えるということです。後者について少し補足をすると、私自身、越境学習と出会うまで「研修」と聞くと正直ネガティブなイメージを持っている側の人間でした。
まだ手帳部門に所属していたときに越境学習に2回受講者として参加したことがあり、「研修」のイメージが変わりました。1回目は会社からの指名で参加し、そこで越境することに魅了され、2回目は自分からの手挙げで「ことこらぼ」に参加しました。当時はつらいことも多かったのですが、終わってみると充実感と達成感が半端なく、さらに自信がつきました!「研修に参加している」という感覚はなく、没頭して取り組んでいる中で結果的にいろんな気づきや学び、そして最高の仲間との出会いあり…人生において最高の経験!だと感じました。この受講者としての経験から、JMAMの越境学習が「楽しさの先にある実践的な学び」を引き出せることには自負があります。
私自身、越境学習の一番の価値だなと思っているのは「学び方を学ぶ」経験ができること。そこで得られる「どんな人やことからも学びを見いだせる姿勢(=学び取る力)」は、目に見えにくい効果ではあるけれど、一生役に立つスキルだと思っています。
未知の体験が待っている越境学習。参加には少し勇気がいるかもしれませんが、その一歩を踏み出していただけたら、私たちJMAM社員が伴走します。自らの行動や思考の幅を広げ、組織や社会で新たな挑戦に踏み出す勇気を手に入れていただけると確信しています。
この記事で少しでも興味をお持ちいただけたら、まずは飛び込んで体験いただきたいです!ご参加お待ちしています。
次世代リーダー人材育成に「越境学習 サービス資料」
ケーススタディではない「生きた」事例への取り組みから学ぶ
社会課題の「先進地」と言える「地域」の人々との対話を通じて、組織や自身の枠を越えた本質的な価値を問い直すことができます。
- JMAM越境学習の特徴
- プログラム例
- 参加者の声など
関連商品・サービス
あわせて読みたい
Learning Design Members
会員限定コンテンツ
人事のプロになりたい方必見「Learning Design Members」
多様化・複雑化の一途をたどる人材育成や組織開発領域。
情報・交流・相談の「場」を通じて、未来の在り方をともに考え、課題を解決していきたいとの思いから2018年に発足しました。
専門誌『Learning Design』や、会員限定セミナーなど実践に役立つ各種サービスをご提供しています。
- 人材開発専門誌『Learning Design』の最新号からバックナンバーまで読み放題!
- 会員限定セミナー&会員交流会を開催!
- 調査報告書のダウンロード
- 記事会員制度開始!登録3分ですぐに記事が閲覧できます




