旭化成株式会社
2020年より開始した新たなサーベイとJMAMと共同開発した複数の研修を組み合わせ組織開発を推進

組織開発の取り組みに対して、研修の企画はもちろんのこと、
パートナーとして伴走し、ともに組織開発に携ってくれるJMAMは、
単なる研修ベンダー以上の存在です。
旭化成株式会社
人事部 人財・組織開発室 リードエキスパート
三橋明弘様
旭化成株式会社は1922年に創業した総合化学メーカーです。2022年5月に創業100周年を迎え、そして次の100年に向けて新たな挑戦を続けています。その挑戦は人事の面も重要視されており、2017 年頃より組織開発に向けた取り組みがなされています。
2020年より開始した新たなサーベイと組織開発を組み合せた取り組みでは、日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)とともに開発した複数の研修を実施しています。同社の組織開発への取り組みと、それにともなう研修の開発・導入などについて、旭化成株式会社 人事部 人財・組織開発室 リードエキスパート 三橋明弘様にお話を伺いました。

- 会社名
- 旭化成株式会社
- URL
- https://www.asahi-kasei.com/jp/
- プロフィール
創業 1922年5月25日 設立 1931年5月21日 本社所在地 東京都千代田区有楽町一丁目1番2号 日比谷三井タワー 主要事業 マテリアル領域、住宅領域、ヘルスケア領域、その他事業
2022年5月に創業100周年、次の100年に向けて新たな挑戦
──旭化成株式会社について教えてください。
旭化成グループは、1922年に創業した総合化学メーカーです。創業当時は合成化学や化学繊維事業からスタートし、日本経済の発展や社会・環境の変化に対応しながら積極的に事業を多角化し、事業ポートフォリオの転換を図り、成長してきました。

現在では、事業持株会社である旭化成と、7つの事業会社を中核に、繊維・ケミカル・エレクトロニクス事業からなる「マテリアル」、住宅・建材事業からなる「住宅」、医薬・医療・クリティカルケア事業からなる「ヘルスケア」という3つの領域で事業を展開しています。
旭化成グループは2022年5月に創業100周年を迎え、そして次の100年に向けて新たな挑戦を続けるために、中期経営計画2024「Be a Trailblazer」をスタートさせました。事業ポートフォリオの進化を中核に、経営基盤強化を進め無形資産の最大活用を行っていきます。
その中でも「人財」のトランスフォーメーションは重要な位置づけにあり、“人は財産、すべては「人」から” 多様な“個”の終身成長+共創力で未来を切り拓く、をテーマに人材育成に取り組んでいます。
組織開発のために約50名の職場支援者を育成
──旭化成の組織開発の流れについて教えてください。
現在、人財・組織開発室という部署名になっていますが、私が異動してきた2019年の少し前までは、人財開発室という名称でした。そこに組織開発が加えられて人財・組織開発室になりました。
組織開発については私の前任者の時代、2017年頃から勉強を始めています。2017年~2022年にかけて、日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)の「組織開発実践者育成講座」を人事部門の部課長中心に年3~4名、合計20名が受講しました。この講座は組織開発の第一人者である中村和彦教授による実践講座で、人事部の職場支援者、組織開発に理解のある人事担当者の育成を目的としたものです。
さらに2020年、2021年には若手人事担当者を対象にJMAM支援のもと、「ファシリテーション実践講座」を実施しました。こちらは先の中村教授の講座内容を職場対話支援に絞り、現場支援者を短期で育成することを目的としています。この2つの取り組みで、約50名の職場支援者を育成しました。

──まず職場を支援する人事担当者の育成を行ったのですね。
その通りです。同時に進めていたのが、全社で実施してきたサーベイの見直しです。以前は3年に1度、「従業員意識調査」を行っていました。以前のサーベイは実施後に結果を経営層に報告しており、そこからぼんやりとした課題は見えてくるのですが、調査結果は事業部単位のもので部・課単位に細分化できず各ライン、現場のマネージャーには活用しにくいものでした。
そこを何とかしようと、大学の先生にもご協力いただき、新しいサーベイを作成しました。実際のところ、サーベイの形ができるところまでは前任者が担当しており、どう使っていくのかの検討から私が担当しました。
新しいサーベイと組織開発が対話型で結びつく
──組織開発の学びとともにサーベイの見直しを進められたのですね。
組織開発の勉強を進めていた一方で、サーベイの見直しも進んでいました。でも、この2つはまだつながっていませんでした。新しいサーベイ、弊社で名づけましたKSA(活性と成長アセスメント)を導入して、その結果を現場がどう使っていくのかとなったときに、対話型とつながりました。
つまりKSA実施後に、組織ごとの人と組織の「活力と成長」の現状について、部課長以上に集計結果をフィードバックします。そのフィードバックを受けて部課長が中心となり、各職場で対話等を通じて、組織ごとに「活力と成長」の向上につながる取り組みを行うことにしたのです。
KSAは2020年12月に第1回目の調査を行い、以後は毎年7月に実施しています。

──組織開発の学びとサーベイとを組み合せて、組織開発を進められたのですね。
そうなのですが、 KSAを最初に実施する前に説明会的なワークショップを社内で実施したところ、その評価は芳しいものではありませんでした。ただでさえ忙しいのに……という反応もありました。
人事は組織開発や対話型組織について学びを進めていましたが、現場のマネージャーを巻き込んでいくためには、マネージャーにも同じ勉強をしてもらう必要があります。
ただ、例えば先の「組織開発実践者育成講座」は1年かがりですから、現場のマネージャーに参加してもらうことはできません。そこでJMAMに協力してもらい、マネージャー向けの講座開発を行いました。
最初は対話を中心に研修を進めて、研修体系もできていない状態から試行錯誤を繰り返し、中村教授にもアドバイスをいただきつつ、JMAMにも協力してもらい、1年目、2年目、3年目とやってきました。そして2023年には教育体系がまとまってきました。
──研修体制がきちんとできつつあるのですね。
2023年度から基礎研修①と②、実践研修③と④、応用研修⑤という研修体系となりました。2024年度には、ファシリテーションスキル講座の対象を拡大して、部課長からファシリテーター役を委譲されるメンバーにも参加可能としました。
そしてここからさらに改良を加え、今まではJMAMに協力してもらっていた内容を内製化するなど、より最適な研修体制を作り上げていく予定です。

JMAMは一緒に考えてくれるパートナー
──組織開発への取り組み、それにともなう研修体制の整備において、JMAMの役割はどのようなものでしょうか。
人財・組織開発室といっても、組織開発の専任担当者がいない状況でスタートしています。ですので、大学教授を始めとした専門家の方々、そしてJMAMに協力してもらいながら進めてきたのが現状です。
私としては、すべて内製して自社で抱え込むよりは、協力していただける外部と一緒に取り組んだ方が、社外の事情もわかりますし有意義だと考えています。
先ほど紹介した2023年度からの5つの研修は、そのほとんどをJMAMが企画しています。それだけにJMAMは一緒に考えてくれるパートナーとして頼もしく感じています。例えば研修の企画を提出して終わりではなく、1つの研修が終ったらそこで一緒に考えて、次回の研修では微修正して取り組んでくれます。お互いに内容に関してフィードバックしあいながら、柔軟にカスタマイズして一緒に作り上げることができます。
また、研修によっては内製化を進める場合もあります。そうした際もノウハウを隠すことなく提供してもらえます。コスト的に見ても、トータルではコスパがいい、と感じています。
「対話有意義度」の調査で受講ありはスコアが上る
──組織開発に取り組まれ、JMAMの研修を導入されて、その効果についてはどのようにお考えですか。
効果についてはKSAの設問にある、部下の「対話有意義度」に差があるかを検証しました。部下が回答した有意義度について、部課長の講座受講前と後でのスコア変化を確認したところ、「講座受講あり」はスコアが上っていました。これにより、講座受講の有無で差があり、部課長の講座受講は、メンバーの対話の有意義度を上げる効果があると推察できます。

ちなみに部課長が研修を受講したのは前年の夏で、対話を行ったのは秋です。部下が回答したのは翌年7月ですので、調査時期による影響(部課長が研修を受講したことをメンバーが記憶している)はほぼないものと考えています。
教育研修の定量的な効果測定はなかなか難しいのですが、JMAMに限らず研修ベンダーの実力を見極め、教育投資の効果を検証するためにも試行錯誤しながら知見を蓄積していきたいと思っています。
旭化成グループの組織開発への伴走に期待
──組織開発についての今後の取り組みはいかがですか。
先ほど2024年度のファシリテーションスキル講座の対象拡大をお伝えしましたが、同様に研修内容と対象者についての見直しは毎年続けていきます。また、新しく必要となる研修も出てくると思いますので、JMAMと相談しながら進めていきたいと考えています。
──JMAMの組織開発に関連した研修への取り組みなどについて、リクエストや期待がありましたらお聞かせください。
多くの企業で組織開発に関する興味・関心が高まっているものと感じています。組織開発は企業によって内容が異なるものと捉えています。今後とも旭化成グループの組織開発の伴走に期待しています。
旭化成株式会社様、本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
※ 取材 2024年7月
本事例でご紹介している管理職研修について
https://www.jmam.co.jp/hrm/training/course_search/od.html