インタビュー事例

株式会社博報堂 中川 悠氏 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 中川チームチームリーダー/ヒット習慣メーカーズ リーダー
Interview

「チーム」と「グループ」は同じではない

株式会社博報堂 中川 悠

生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 中川チーム
チームリーダー/ヒット習慣メーカーズ リーダー

インタビュイーの所属・役職名および以下概要は、インタビュー当時のものです。
(本調査のインタビュー実施期間:2020年12月~2021年2月)
内容は掲載をご許可いただいた範囲で、記事の形式とするため、見出しを追加し、⼀部順序や表現が再構成されています。

クライアントの課題をクリエイティビティによって解決し、社会に新たな価値を提供し続けてきた総合広告会社の博報堂。同社生活者エクスペリエンスクリエイティブ局の中川悠さんは、新卒で電機メーカーにエンジニアとして入社後、マーケティングの仕事を志し広告会社に転職。マーケティングやメディアプランニング等、幅広い領域をカバーするようになり、博報堂に転職。博報堂入社後はマーケティング部門に所属し、大手企業の戦略立案を提案するプランナー、ディレクターとして活躍してきた。その後、同社で、マーケティングとクリエイティブを横断的に扱う統合プラニング局が発足したことに伴い、これまでの実績や仕事スタイルが評価されチームリーダー(部署長)に就任。現在は、ヒット「商品」ではなくヒット「習慣」を生み出すというコンセプトのもと「ヒット習慣メーカーズ」を立ち上げ、新たな習慣の大胆な予測と新しい習慣づくりを行っている。

部署では、メンバー一人ひとりの目指すべき姿として「戦略CD(クリエイティブ・ディレクター)」という在り方を掲げ、メンバーの「やりたいこと」をベースに成果を創出するチームづくりは社内でも衆目を集めている。

シェアド・リーダーシップを重視するようになるまでの経緯

追い込み型のスタイルから引き出し型のスタイルへ
管理職初期の経験から得た気づき

管理職就任前

管理職になる前は、どのようなリーダーになりたい、あるいはなりたくないと思っていましたか?

プレイヤー時代に僕がリーダーとしてすごくいいなぁと思っていたのは、博報堂に入ったときの最初の上司です。チーム全体で向上していくという考え方で、刺激をメンバーにたくさん与えながらも、いい意味での放任主義。本人もプレイヤータイプで、自分のやりたい仕事で成果を出し、いざというときは部下を助けてくれる。メンバーを過保護にせず、個性を伸ばすための刺激を与えながら任せてくれるスタイルが、とても居心地がよかった。こういうタイプが理想のリーダーだと思っていました。

初めての管理職就任時

管理職に就任することが決まったときは、どのような気持ちでしたか?

統合プラニング局が新設されたときに、チームリーダー(部署長)に任命されました。そのときは、あまりに意外すぎて、「なんで僕が?」と戸惑いました。僕は、「プロなら勝手に育つものだ」という考え方だったので、メンバーをマネジメントしなくてはいけない立場になるのは、正直言って嫌でした。でも、マーケティングだけの閉じた村にいるよりも、マーケティングとクリエイティブを横断的に扱う新たな部署で、異なる価値観を持つ人たちと関わることも良い仕事につながっていくのではないかと考えることもできたので、戸惑いの半面、うれしいと思う気持ちもありました。

管理職に就任し、プレイヤーのときとの違いをどのようなところで感じましたか?

自分自身は、刺激のある環境で、放任、放牧型で接してもらう方がやりやすかったので、自分も管理職になったらそうしようと思っていました。ところが、実際に管理職になってみると、メンバーは年次もタイプも様々。自分とは考え方が異なり、もっとリードしてほしいというタイプの人もおり、メンバーの視点で考えることも必要になりました。そこがプレイヤーのときと異なり、難しいなと感じたところでもあります。

管理職に就任後、現在のようにチームメンバー全体のリーダーシップを醸成できるようになるまでには、どのような紆余曲折がありましたか?

僕はもともと仕事が大好きで、はっきり言ってワーカホリックです(笑)。管理職になったばかりのころは、愚痴を言うメンバーに対して「好きでこの仕事を選んだのにどうして愚痴を言うのか」「プロは愚痴を言わないものだ」と内心思っていました。自分だけを基準にしていて、仕事の水準も厳しかったかもしれません。今ではメンバーは元気に活躍してくれていますが、当時、直下のメンバーがだんだん元気がなくなっていくのを見て、このやり方ではまずい、と思うようになりました。それが最初の変化のきっかけでした。

もう1つ、今の自分に影響を与えているのは、新しく入ってきた新人がなかなか活躍できなかったときの経験です。その新人は、OJT担当や管理者の僕と話をしているときと同期同士や若いメンバーと話をしているときの雰囲気が全然違ったのです。同世代とだと目をキラキラ輝かせて前向きな仕事の話をしているんです。これはなんだと。そのとき、時代の変化と、人が活躍するときの本質にハッとさせられました。

つまり、昔は、上意下達で上からの指示に従うことが良しとされ、従う部下の方もそれを意気に感じるところがあった。でも、今の若い世代は、「上から言われたから」ではなく、自分で「意味・意義がある」と感じることにやりがいを感じる。昔と違い、今はデジタル領域などメンバーの方が詳しい分野もたくさんあります。そういう時代の変化と、人は本来、自分でやりたいと内発的に動機づけられたことこそ一生懸命にやるものだ、ということに思い至ったのです。

そこからは、バッとやり方を変えました。今は、新人も含めて、メンバーには「何をしているときが一番楽しい?」とまず聞いて、仕事のアサインをしています。「X(旧Twitter)をしているときは時間を忘れる」というメンバーがいたら、X(旧Twitter)発信担当にする。やりたい仕事があれば、やりたくない仕事も頑張れるんです。だから、それまでのように、僕が良いと思う一律の型にはめるやり方ではなく、個々のメンバーの強みをうまく引き出すやり方に変えていきました。

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