シェアド・リーダーシップを
組織全体で
推進する先進企業
シェアド・リーダーシップな全員活躍チームを組織全体に広げていくために、組織や経営層はなにができるでしょうか。
本ページでは、組織全体でシェアド・リーダーシップが発揮される職場づくりを
推進している先進企業の取り組みを紹介します。

TBSテレビ、TBSホールディングスでは、2024年度より全ライン部長・室長を巻き込み、
シェアド・リーダーシップな組織づくりを目指した取り組みを行っています。
TBSホールディングスの執行役員 瀬戸口克陽氏に、施策導入の経緯やこの取り組みにかける思いなどについて、
立教大学 教授 中原淳と日本大学 助教 堀尾志保※がお話をうかがいました。※インタビュー実施時は、JMAM Director
(以下、敬称略)
TBSのシェアド・リーダーシップ改革

瀬戸口克陽氏
せとぐちかつあき
株式会社TBSホールディングス執行役員グローバルビジネス統括
東京大学経済学部卒。1996年TBS入社。2001年からドラマプロデューサーとして「GOOD LUCK ‼」「花より男子」「華麗なる一族」「99.9-刑事専門弁護士-」数々のヒット作を手がける。「Around40」ではタイトルが2008年の流行語大賞に。ドラマ制作部と企画の目利きや戦略を担う編成を行き来し「半沢直樹」や「VIVANT」などの企画立ち上げに携わる。TBSテレビ、ヒューマンリソース戦略推進担当執行役員を経て2025年1月TBSホールディングス執行役員(グローバルビジネス統括)に就任。立教大学でグローバルリーダーシッププログラム兼任講師も務めていた。
シェアド・リーダーシップとの出逢い
堀尾TBSでは、シェアド・リーダーシップが発揮される職場づくりを組織全体で推進されています。こうした取り組みは瀬戸口さんが中心となって企画されたものですが、背景をうかがうために、はじめに、瀬戸口さんのこれまでのキャリアについて教えていただけますでしょうか。

瀬戸口私のキャリアの主軸はドラマのプロデューサーでした。と同時に、20代、30代、40代は、それぞれ3~4年ほど編成部で編成の仕事もしていました。編成部というのは、いつ何を放送するか、といった番組表を決めるセクションで、以前から続く番組を新しい番組に切り替える判断をしたり、どんな企画を新しい番組として選定するかを決めたりする部署です。
ドラマのプロデューサーと編成の仕事を交互にやってきた後、ヒューマンリソース、人事の担当役員となりました。現在は担務が変わり、グローバルビジネスを担当していますが、人材開発の分野には非常に興味があるので、ずっと何らかの形でかかわっていきたいと思っているところです。
中原瀬戸口さんは、私が勤務する立教大学でもリーダーシップ教育(グローバルビジネスリーダーシッププログラム:Global Business Leadership Program : GLP)に携わっていただいていたのですよね。本当に、ご登壇ありがとうございます。
瀬戸口はい。立教大学のリーダーシップのプログラムは、2年間担当させていただきました。
中原大変素晴らしい授業をしてくださって、学生たちからも大変好評であったとうかがっております。さて、TBSテレビでは、役職の有無に関係なく全員がリーダーシップを発揮して活躍できるシェアド・リーダーシップな組織づくりに向けて、様々な人材開発施策を展開されています。そもそも瀬戸口さんはなぜ、こうした組織づくりを目指そうと思われたのですか?
瀬戸口もともとは自分自身が管理職として苦労した経験があったからです。30代後半で2回目に編成部へ行ったときに、企画総括という役割を任されました。
これは、ドラマ以外にもバラエティー、スポーツ、情報制作、報道などの企画を決めるリーダー役です。それまでもプロデューサーとしてドラマ班での現場のリーダーはやっていましたが、いきなりもっと大きな組織体のリーダー、管理職になってしまったわけです。
当時はリーダーや管理職の仕事も含めて、「先輩の背中を見て学べ」「仕事は盗んで覚えろ」みたいな感じだったので、引き継ぎ書もなければ、何をどうすればいいかを人から教わる機会もありませんでした。でもリーダーとして組織の力を高めるためには体系だった方法が必要だな、このままではうまくいかないというモヤモヤがあったんです。

中原どの会社でも「管理職が要だ!」とか「リーダーが重要だ!」と言われる割には、「背中を見て学べ」とか「やってればそのうちできる」みたいな感じで任されることが多いですよね。管理職やリーダーとして、いかに「チームをつくっていけばよいのか」、それを実践に役立てる内容を体系的にきちんと教わる機会はほとんどありません。人への働きかけ方とかチームのつくり方など、最低限のことはわかって臨む方が絶対にいいのですけどね。
瀬戸口本当にそうですよね。僕の場合は、結局、体系だったものに出会うことができないまま、モヤモヤが残った状態でドラマの現場に戻り、45歳で再び部長というポジションで編成部に戻ってきました。
周囲からも「人が育っていない」とか、「チームづくりが難しい」といった声が聞こえていました。そのとき、これは「人」の問題ではなくて「やり方」の問題なのではないかなと改めて思ったんです。
でも、解決策が見つけられずにいました。そんなときに、立教大学でリーダーシップ教育に携わる機会があり、リーダーシップのあり方やチームのつくり方について、「こういうことか!」ととても腑に落ちる経験があったんです。
中原立教大学では、カリスマが1人でグイグイとチームや組織を引っ張るようなリーダーシップのあり方を目指すのではなく、メンバー一人ひとりが自分の強みを生かしてチームに貢献し、全員がリーダーシップを発揮するための教育を行っています。

瀬戸口リーダーシップは一部のカリスマ的な人だけのものではなく、誰しも発揮できるものだ、ということに気づくと、学生さんたちは驚くほど変わっていくんですよね。
ぐんぐん成長していく学生さんたちの姿を見て、インプットをしっかりしてあげれば、多くの人がチームに貢献するために様々な形でリーダーシップを発揮して活躍できるようになるということを実感しました。と同時に、「リーダーシップを発揮するのは役職者だけ、カリスマ的な存在の人だけ」という認識が改まらないとなかなか組織は変わらないということも強く感じました。
それで「うちの会社でもこうしたシェアド・リーダーシップなチームづくり、組織づくりを取り入れられないだろうか」と考えていたところ、お二人がお書きになった書籍『リーダーシップ・シフト 全員活躍チームをつくるシェアド・リーダーシップ』に出会ったんです。
「これだ!」となりました。すぐさま部長、室長 といった全ライン長分、百数十冊を大人買いし、「勉強になるので、これを読んでください」と全員に配ったところから始まりました。そこから、お二人に監修いただいた研修を全ライン長に実施することになりました。