ニュースリリース

紙の手帳の脳科学的効用について
~使用するメディアによって記憶力や脳活動に差~

 株式会社日本能率協会マネジメントセンター(本社:東京都中央区、代表取締役社長:張 士洛)は、東京大学 大学院総合文化研究科(東京都目黒区駒場キャンパス、研究科長:太田 邦史)の酒井研究室および株式会社NTTデータ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:柳 圭一郎)と共同で行動実験とfMRI(機能的磁気共鳴画像法)実験を実施し、スケジュールなどを書き留める際に使用するメディア(紙の手帳や、スマートフォンなどの電子機器)によって、記銘(記憶の定着)に要する時間が異なり、想起(記憶の再生)において成績や脳活動に差が生じることを初めて明らかにしました。

◆活動の経緯・背景

 株式会社日本能率協会マネジメントセンターと株式会社NTTデータ経営研究所をはじめとする企業が、デジタルとアナログの双方のユニークな価値を見極め、それぞれの良さを享受することでより豊かな生活を人々に送ってもらうことを目的として、2015年に応用脳科学コンソーシアム(※1)内に「アナログ価値研究会」を組成し、東京大学大学院総合文化研究科の酒井研究室をはじめとする学術機関と共同で、これまでもアナログの価値を実証し、その成果を発信してきました(※2)。

 我々は日常生活において、紙の本や雑誌に加え、スマートフォン(以下、スマホ)・タブレット・パソコンといった電子機器を用いていますが、それが日々の学習などに及ぼす影響については、これまで十分な検証がなされてきませんでした。例えば知識を問う試験の場合、その学習成績は記銘したことがいかに正確に想起できるかに左右されますが、記銘のときに使うメディアが記憶の想起に対してどのように影響するかは、これまで脳科学的に解明されていませんでした。

◆実験概要

 この度行った実験では、参加者を手帳群・タブレット群・スマホ群という3群に分け、これら3つのメディアを使って具体的なスケジュールを書き留める課題を行いました。手帳とタブレットでは見開きの大きさを等しくし、またどちらもペンを用いて手書きしています。その後、そのスケジュールの内容について想起して解答する課題をMRI装置内で実施しました。その結果、手帳群では他の群よりも短時間で記銘を終えており、それでも記銘した内容に関する想起課題の正答率(全問の平均)には3群で差が見られなかったことから、手帳群は短時間で要領よく記銘できていたことが分かります。また、一定の直接的な設問についての成績では、手帳群の方がタブレット群よりも高いという結果が示されました。

 この想起課題を行っているときの脳活動をfMRIで測定したところ、言語処理に関連した前頭葉や、記憶処理に関係する海馬に加えて、視覚を司る領域でも活動上昇が観察されました。このことから、言語化・記憶の想起・視覚的イメージといった脳メカニズムが関与すると言えます。さらにこれらの領域の脳活動は、手帳群が他の群よりも高くなることが定量的に確かめられました。このことは、記銘時に紙の手帳を使うことで、電子機器を用いた場合よりも一層豊富で深い記憶情報を取得できることを示唆しています。

 詳細についてはこちらをご参照ください。
https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/news/topics/files/20210319sakaikunisobun01.pdf

◆社会的意義・今後の予定

 紙の教科書やノートを使って学習する際には、そこに書かれた言葉の情報だけでなく、紙上の場所や書き込みとの位置関係といった視覚情報などを、同時に関連付けて記憶する連合学習が生じています。一方、スマホ・タブレット・パソコンといった電子機器では、画面と文字情報の位置関係が一定ではなく、各ページの手掛かりが乏しいために、空間的な情報を関連付けて記憶することが困難です。このように紙媒体は想起の際の手掛かりが豊富であるため、記憶の定着に有利であることに加え、その高い記憶力を元にした新しい思考や創造的な発想に対しても、役立つと言えるでしょう。

 今回の研究結果を踏まえると、日常生活において、紙の製品と電子機器を目的に応じて使い分けることによって、より効果的な利用につながることが期待されます。特に教育やビジネスなどにおいて、経費削減・効率化を重視して使用メディアのデジタル化が進んでいますが、脳科学の根拠にもとづいて創造性などを発揮させるために、あえて紙のノートや手帳などを用いることで、本来求めるべき成果を最大化させることができると言えます。

 これからも、東京大学大学院総合文化研究科の酒井研究室では人間の脳における記憶や言語メカニズムの解明を追究し、日本能率協会マネジメントセンターとNTTデータ経営研究所は、科学的な知見に基づく実証的な学習サービス等の提供を通して、人々が能力を最大限に発揮できる社会の実現に貢献していきます。

※1 応用脳科学コンソーシアム:NTTデータ経営研究所が日本神経科学学会の協力を得て設立した、オープンイノベーションモデルのコンソーシアムで、約50社の異業種の民間企業と異分野の研究者が一堂に会し、脳科学およびその関連領域の最新の研究知見を基盤に、「研究開発」「人材育成」「人材交流および啓発」に取り組み、複数のR&D研究会のもと幅広い研究活動を進めています。
応用脳科学コンソーシアムWebサイト:https://www.can-neuro.org/

※2 手書きや紙の持つユニークな価値について心理科学・脳科学的アプローチで検証
~応用脳科学コンソーシアム 「アナログ価値研究会」~ (2017年7月4日)
https://www.nttdata-strategy.com/newsrelease/archives/170704/

本件に関するお問合せ先

【報道関係者お問い合わせ先】
㈱日本能率協会マネジメントセンター 広報担当
TEL:03-6362-4361 / E-mail: PR@jmam.co.jp

ページ上部へ戻る