シェアド・リーダーシップを組織全体で
推進する先進企業
持続可能な組織に必要な“共通言語”と“学ぶ力”

堀尾シェアド・リーダーシップを組織全体で推進するにあたって、その他に留意されたことなどはありますか?
瀬戸口はい。はじめるにあたって、新任ライン長だけではなくて全てのライン長にシェアド・リーダーシップやこうしたチームづくりをするための方法を知ってもらう研修を実施したことです。
受講者を新任ライン長だけに絞ることもできましたが、全ライン長に行うということを大事にしました。新任者だけに絞るとシェアド・リーダーシップを実践するチームとしないチームが出てきてしまいます。
ですので、新任ではないライン長の方々には申し訳ないけれども、まずは一度シェアド・リーダーシップとかチームのつくり方について理解していただき、TBS として共通のチームづくりの型のようなものを持って欲しい。そのうえで、自分らしさを加えていってほしい、と伝えて、全員に受けてもらいました。
これまでも社内の研修などで「リーダーシップがいかに大切か」を伝えることはしてきたのですが、それぞれの行動に結びつけるための具体策まではインプットできていませんでした。みなさんが知りたいのは実際に行動を変えていくにはどうすればいいのか、というところだと思っていましたので、今回は研修と職場実践を通じて、マネジメントスタイルをどのようなステップで変えていけばいいのかというところまでを具体的に伝えることができて良かったと思っています。
堀尾シェアド・リーダーシップを推進していくにあたって最初にライン長からアプローチされたのはなぜですか?
瀬戸口経営が呼びかけるだけでは、現場のメンバーを動かすことはできません。やはり組織の中で鍵となるのはライン長です。まずはライン長の人達にしっかりと理解してもらうことで、メンバーに伝えていくことができると考えています。

中原管理職が持つ影響力はやはり大きいですよね。本人はあまり自覚がないことも多いですが、管理職が変わるとメンバーも変わってきます。
私はかれこれ四半世紀ほど人材開発の研究をやってきて、数多くの組織を見てきましたが、強い会社にはひとつ共通する特徴があるなと思っています。
それは、全員が「ひとと組織を語る共通言語」を持っている、ということです。今回で言えば、シェアド・リーダーシップがそうかもしれません。何か共通の言葉を持っていて、そこにみんなの関心が集まっている会社は強いと思います。
瀬戸口特にライン長というのは、新入社員から経営層まで一番上下どちらとも会話ができるポジションです。経営が向かう先、組織の未来を決めるミートポイントを作る大切な役割を担っています。だからこそ「これだ」というものを最初にライン長たちに対して提供し、理解を深めてもらうことができると組織が変わっていく速度が上がるのではないか、と思っています。
堀尾多くの企業では、研修まではしていても、必要な知識を伝えるだけで、職場での実践(研修転移)までつながらないという悩みもよく聞きます。TBSでは研修後のフォローについてはどのようにお考えですか?
瀬戸口まずはライン長を集めた懇親会を企画しています。研修後、実際にやってみてどうだったか、ということも含め、お互いの悩みを話し合えるような場をつくりたいと思っています。やはり同じ立場の人間同士、共通の悩みがあるからこそ言えることもあるだろうし、1人で抱えるのではなく、横のつながりをつくって、仲間が100人いる、と思ってもらえるようになれば、きっと心強いですよね。ライン長同士、インプットしたものを研修室ではない場でさらに沁み込ませるというか、理解を深めてもらえたらと思っています。
また、研修から数ヶ月経った後にメッセージを発して、自分の実践を振り返る機会を提供できたらと思っています。時間が経つとどうしても忘れてしまうところがありますので、復習するきっかけをつくることも大切だと思っています。
堀尾管理職の方々は多くの仕事を抱え、孤独になりがちです。うまく実践できていない人がいたら、阻害要因をヒアリングして、組織として現場での実践をサポートしていかれるとより多くの方に取り組んでいただけるように思います。
中原これも人材開発研究を四半世紀やってきて思うことなのですが、マネジャー同士の仲が良かったり、マネジャー同士がマネジメントについて語る場があったり、コミュニティがあったりする会社は強いです。なんというか、マネジャーたちが一つのチームになっていると、その下もチームとして動かせる、みたいな印象があります。
リマインドのフォローアップについてですが、人間って忘れっぽい。すぐ忘れるし、目の前の仕事で忙しいから、少し時間が空いた後に「その後いかがですか?」と聞いてあげることで、また思い出して実践してもらう、ということを続けられるといいと思います。研修をイベントとして捉えるのではなく、変化していくプロセスの一部として捉え、どのようにプロセスをつくっていくか、と考えていくと、効果が高まるように思います。
瀬戸口研修はどうしてもイベントになりがちですので、プロセスの一部、という考え方は確かに大事ですね。
堀尾組織の未来のために、これから管理職になる方、経営層になる方については、どのような点を重視されていますか?

瀬戸口これはそうしたポジションに限ったことではありませんが、やはり成長をしていく意欲を持って、謙虚に学び続けられるということがとても大切だと考えています。
私自身、ドラマ作りや編成という仕事については、30年近くやってきていますので、それなりの知見と経験値があります。ですが、人事領域については初めてでしたので、すさまじくインプットしなければならず、本当に、様々な本を読み、様々な方にお会いしました。すごく刺激を受けましたし、いくつになっても新しいことを学ぶということは大事だな、と改めて感じました。
たとえ領域が変わらなくても、これまでのやり方が通じない、というときに、まずはやってみよう、まずは謙虚に学んでみよう、という姿勢を持ち続けていられれば、成長し続けていけるのではないかと思います。
今後はライン長、経営者はもちろん、全てのメンバーがそうした心構えを持っていないと、持続可能な組織に なっていかないと思っています。
堀尾誰よりも瀬戸口さんご自身が率先して学ばれていて、きっとそうした瀬戸口さんの姿が、社内にシェアド・リーダーシップを広げていくうえでも大きな力になっているのではないかと感じました。
中原今日は貴重なお話をありがとうございました。
堀尾今日は貴重なお話をありがとうございました。