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「シニア人材に関する実態調査」 結果報告

ニュースリリース

「シニア人材に関する実態調査」 結果報告
「年上部下へのマネジメント教育していない」70%
5年後のシニアの割合「10%以上」4割弱

株式会社日本能率協会マネジメントセンター(代表取締役社長:長谷川隆、東京都中央区、以下JMAM[ジェイマム])は、社員数1,000名以上※1の企業98社で人事・教育部門に携わる101名に対し、自身が所属する企業のシニア人材※2活用に関するアンケート調査を実施しました。アンケート調査の結果を取りまとめましたので、その内容を一部抜粋してお知らせします。
※1…グループ会社を除く単独での社員数
※2…JMAMでは、50代半ば以降でポストオフや定年再雇用といったキャリアイベントを迎えた世代を「シニア層」と定義


総務省が2016年6月に発表した国勢調査によると、就業者全体において65歳以上の高齢者と女性の割合が51.7%にのぼり、初めて過半数を超える結果となりました。
特にシニア層は今後も増加が予測され、知識や経験が豊富であることから働き手としての存在意義が高まっています。しかし、シニア活用の改革や対応は、企業によって差があるのが現状です。
このような現状を受け、JMAMでは企業の実態や考え方を明らかにするため、本調査を実施しました。

<調査結果概要(一部抜粋)>

急ピッチで進む企業内高齢化
企業における60歳以降の割合について、「0~5%」は現在の58.4%から、5年後(2021年)には24.8%に減少。5年後(2021年)には60歳以上の割合が10%以上の企業が3分の1に。


シニアの「職務・職域開発」は優先度トップだが、「同じ職場」への配置が最多
「職務・職域開発」の優先度は高いものの、実際は役職定年や継続雇用前と「同じ職場」へのアサインが最も多い。


シニアの「能力開発」の優先度低いが、新たに求められる能力も
「能力開発」の優先度は低いものの、実際は自身が持つ能力の伝承に限らず、役職定年後や継続雇用後の環境変化に適応するポータブルスキルが求められ、「能力開発」も重要。


年上部下へのマネジメント教育 「実施していない」が7割
年上部下を抱える管理者へのマネジメント教育を、「実施している」企業は3割に留まる。
シニア層は今後増加が見込まれ、教育体制の構築が課題。


<調査概要>

調査対象:
(1) JMAMが主催する人事・教育部門担当者向けセミナーへ参加した方へアンケート調査
(2) 各企業の総務・人事・教育部門に所属する方へインターネット調査
(3) 各企業の人事・教育部門の担当者へ郵送でアンケート調査
有効回答: 98社101名
調査期間: 2015年5月~2016年2月


<調査結果詳細(抜粋)>

1. 60歳以降の社員の割合と企業の意識

(1) 60歳以降の社員の割合
現在は、60歳以降の割合が「0~5%」と回答する企業が58.4%と最多ですが、5年後(2021年)には24.8%にまで減少し、全体的に60歳以降の社員の割合が増加することわかりました。
詳細をみると、5年後には大手企業の3分の1で、60歳以上の社員数が10%を超えることが判明しました。このペースで推移すると10年後には、60歳以上の社員が2割~3割に達する企業も出てくることが予想されます。

(2) シニア社員活躍の考え方
企業でシニア社員の活用をどのように考えているか尋ねたところ、経営課題としての捉え方は、「いますぐ解決したい」と「先々解決したい」がほぼ拮抗する結果となりました。“人・モノ・金”のリソースが潤沢にあり、シニアの人材活用も取り組みを進めていると見られがちな大手企業であっても、各企業によって捉え方は異なるようです。
一方、「60歳以降も戦力化したい」「様々な職場にシニアを配置したい」は共に61件を超え、企業はシニア層の多様な環境で第一線での活躍を望んでいることがうかがえます。

2. 4つの課題への対応

 JMAMでは、これまで実施してきたシニアや企業へのヒアリングを踏まえ、シニア世代が活躍していくうえで欠かせない「4つの課題」(以下参照)を仮説として掲げています。本調査では、これら4つの課題における企業の実態や今後の方向性を明らかにしました。

(1) 活き活き働ける職務・職域開発
(2) 制度(雇用・賃金・処遇)の見直し
(3) 貢献し続けるための能力開発
(4) 本人・上司・会社の意識改革

 まず、自社における4つの課題の優先順位を聞いたところ、(1)活き活き働ける職務・職域開発の優先度が高いことがわかりました。これは各企業で“シニア活躍”が掛け声だけでなく、現実味を帯びてきたことであり、仕事内容はこれから検討されるにせよ、シニア層が活き活きと働ける環境づくりが問われているようです。

(1)と真逆に推移している課題が、(3)貢献し続けるための能力開発です。会社としては、50代半ばを過ぎた時点で新たな能力開発ではなく、有している能力と経験を活かすことに比重が置かれているようです。一方、シニア世代が過去の実績や成功体験に固執することなく、新たな役割を果たすためには、シニア世代が自身の環境の変化を受け入れ、適応するための能力開発が必要という声も散見されました。

(2)制度(雇用・賃金・処遇)の見直し、(4)本人・上司・会社の意識改革は、ほぼ同推移となりました。「制度の見直し」は、賃金制度の改訂や65歳定年への移行が視野に入っていることが推察されます。また、「意識改革」は回答者が自社の状況をどう見ているかの肌感覚によって、優先順位が左右されている可能性が高く、各社の実態は異なると推測されます。

(1) 活き活き働ける職務・職域開発
 役職定年後および60歳以降の継続雇用後の配置先を尋ねたところ、「同じ職場」への配置が最多となりました。シニア層が従来の仕事環境で能力を発揮しているケースもありますが、新しい職務開発が難しかったり、他の職場に配属するには障害があったり、消極的な選択となっている可能性も看過できません。
また、同じ職場で継続配置となった場合でも、これまでの仕事と同様なのか、あるいは役割が変わり、仕事内容に新たな変化が生じているケースがどの程度あるのか、検証の余地がありそうです。

(2) 制度(雇用・賃金・処遇)の見直し
 シニア人材活用に向けた制度見直しの実施・検討状況を尋ねたところ、「検討している」が53.5%である一方、「検討していない」は21.2%となりました。「既に見直し済み」と合わせると、何かしらの制度見直しを実施済み、もしくは検討している割合は8割近くにのぼり、多くの企業は何らかの形で見直しを進めているようです。

前問で「検討している」もしくは「既に見直し済み」の回答者に、制度の内容を聞いたところ、「賃金制度」が最多の結果となりました。再雇用者の一律賃金制度や定年時賃金からの大幅ダウンの改定など、シニア活用を進める中で課題として指摘されることが多い点に取り組んでいることが推察されます。
賃金制度に続いて、「評価制度」「定年制度」も次点の検討制度としてあがっており、成果の判断基準の見直しや65歳定年制への移行が今後の焦点となりそうです。

(3) 貢献し続けるための能力開発
①役職定年者および継続雇用者の能力要件の有無
役職定年者および継続雇用者の能力要件の有無は、「明確ではない」が約6割を占めました。従来と同じ職場環境に配置されるケースが多いことを考慮すると、特段新たな能力要件が必要ではないという認識なのかもしれません。
ただし、前問のように評価制度や定年制度の見直しが進むと、シニアの立ち位置は現在と大幅に変わることが予想されます。その際、加齢や能力の衰えを考慮した新たな要件が求められる可能性は十分にあるといえるでしょう。

②シニア人材にとって特に重要だと思う能力について
シニア人材にとって重要な能力を尋ねた質問では、「健康・体力」が53件にのぼり最多となりました。P3で述べた「能力開発」の優先順位が低かった結果を踏まえると、企業はシニアの「専門能力」は既に身についていると認識しており、加齢に伴う生産性の低下や病気などによる周囲への負荷といったリスクを懸念しているようです。
次点では、「指導・育成能力」「コミュニケーション能力」があがっています。シニア自身のパフォーマンスや成果よりも、後進への指導・育成によって、シニアの専門能力や技能の伝承が期待されていることがわかります。ただし、企業でシニアが増加すると戦力として期待され、「実務処理能力」や「問題解決能力」などの能力も重要視されることが予想されます。

(4) 本人・上司・会社の意識改革
①50歳以降の社員が今後のキャリアを考える機会
50歳移行の社員を対象としたキャリア研修の実施状況を尋ねたところ、「実施している」と「実施していない」が半々の結果となりました。今後は、「実施していない(今後検討中)」(20.8%)と回答した企業の実施が着実に増加し、「実施している」企業でも環境変化に応じて研修内容の見直しを図ることは十分想定されます。

②管理者を対象とした年上の部下のマネジメント教育の実施・検討状況
管理者を対象としたマネジメント教育の実施状況を尋ねたところ、「実施している」企業は30%に留まりました。冒頭の調査結果のとおり、今後シニアの割合は増加する見通しであり、どの職場にも年上の部下が増えてきています。部下となったシニアの対応を現場のマネジャー個人の判断のみに任せてしまい、問題の解決に至らないケースも珍しいことではありません。
また、今後はシニアの活用に限らず、女性の活躍推進などダイバシティ・マネジメントの実践が管理者にとっては必須テーマであり、それらを包含したマネジメント教育のニーズが高まるのではないでしょうか。

総括と提言

改革待ったなしでも、対応にバラつきあり

今回の調査から、60歳以降の社員が占める割合の変化は顕著であり、企業内人口の高齢化が急ピッチで進むことは明らかです。10年後(2026年)には65歳定年から70歳まで再雇用という制度が定着している可能性も十分にあり、今とはまったく違う構図が出来上がることが予測されます。
急激に増えるシニア層への対応が各社で進んでいるかと言えば、調査結果を見る限りはそのスピードに追いついていないようです。シニア活躍への「4つの課題」への対応を分析すると、賃金制度の改訂やライフプランといった研修で意識改革を進めている様子はうかがえますが、いずれも全体の半数程度に過ぎません。また、4つの課題の中で最も優先順位が高かったのは「職務・職域開発」ですが、実際には役職定年や定年前と同じ職場にアサインしている例が圧倒的に多い状況です。一部の企業では既に「65歳定年」への移行が進んでいますが、定年の年齢引き上げに限らず5年後、10年後を見据えた対策は待ったなしの状況です。

シニア活躍の鍵は「能力開発」に対する意識改革

現在、企業からシニア人材への期待・役割の最たるものは、若手への技能伝承や指導・育成です。ただし、4つの課題のうち「能力開発」は最も優先順位が低かった点から推察すると、あくまで現在保有している能力を発揮してもらうことを念頭に置いていることがうかがえます。もちろん、シニアの経験やスキルは会社にとっても財産であり、次の世代へ継承していくことは重要です。しかし、シニアの新たな能力開発に重きを置かなくても良いということにはなりません。老化による衰えは致し方ないですが、技能を伝承する際に相手に正しく伝え、教えていく力などより深めていくことができる能力もあります。職場で若い後輩にスキルを教授したり、経験を伝えたりする場合、「教えてやる」「よく聞いておけ」といったような態度ではうまくいきません。むしろ現場では若い世代に教えを請う場面もあるでしょう。マネジメントの職務を降りて一般職へ戻る場合、当然ポジションパワーが効かなくなるので、“上から目線”から周囲と同等の“水平目線”への切り替えが求められます。今回の調査でシニアに必要な能力として挙がった「指導能力」「コミュニケーション能力」の発揮の仕方を、従来のやり方・伝え方から変えることが、シニアに求められているのかもしれません。このような状況からすれば、必要なのは謙虚さ、誠実さ、明るさ、前向きさといったポータブルスキルであり、これはシニアだからこそさらに磨いていける力でもあります。環境変化に柔軟に対応でき、本当に活躍できる人材育成こそ必須ではないでしょうか。

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株式会社日本能率協会マネジメントセンター 広報担当
E-mail: PR@jmam.co.jp