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人材教育用語集


【AI(Appreciative Inquiry)】
組織行動学のDavid L.Cooperrider教授により1987年に提唱されたもの。「プラスを引き出す問いかけ」 を軸として、組織の全ての構成員が意志を一つにし、全員の求める組織像へのビジョンを描き、それを実現、 実践していくこと。目的は組織の可能性を広げていく為の発想やアイデアの幅を広げることにある。
【CEO、President、社長】
欧米の会社制度おいて経営の執行は、CEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)を頂点とする COO(Chief Operating Officer:最高執行責任者)、CFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)な どの執行役が担う。彼らを監督するのがBoard(取締役会)である。この取締役会を構成する取締役は、公正 な監督を行うために、半数以上が外部から招聘されている。そのためCEOは取締役会に雇われる立場にあり、 不適格と判断されれば、任期中でも取締役会に解任される。この点、日本企業のように功労者が取締役とな り、その中の最有力者が代表取締役となるシステムとはまったく異なる。

また、Chairmanを会長と訳すことが多いが、欧米では取締役会の議長を務める者を指す。日本の会長(新社長 の後見人として前社長が就任する)とは違う。また、PresidentとCEOの違いは、日本の社長と代表取締役の違 いに相当する。CEOおよび代表取締役は法律上規定された職責だが、President、社長という名称は、社内外で 便宜上使用される肩書き。日本では社長=CEOとの認識が強いが、欧米ではChairmanがCEOを、COO がPresident を務めることも多い。
【EAP(Employee Assistance Program/従業員支援プログラム)】
従業員のメンタルヘルスを良好に保つためにサービスを行うプログラムおよびその提供を行う業者の呼称。 企業内に専門スタッフを置く「内部EAP」と、専門的な外部企業がサービスを提供する「外部EAP」に大別され る。サービス内容は主に次の3つである。

(1)従業員個人の悩み相談やコンサルティングを行う。
(2)個人への適切な対応を実現する仕組みの構築・運営。上司や人事部門と連携し職場環境改善策をとる。
(3)組織全体のメンタルヘルス向上。従業員のモラルやモチベーションの維持、ストレス対策などを目的とした コンサルティングや研修など。
【Institutional Enviroment(制度環境)】
社会の価値観や長い間その社会で定着したために慣習化された社会制度。例えば、経営戦略・人事戦略 が国によって異なる、あるいは同じ国では似通ってくる大きな原因としてこのInstitutional Enviromentを 挙げることが出来る。
【OJT(On the Job Training)】
現場で日常業務を通じて行われる従業員教育のこと。OJTに対してOff-JTは、研修やeラーニング等の座 学を指す。こちらは和製英語である。

OJTは、第一次世界大戦勃発後のアメリカで実践されたのが最初と言われる。当時アメリカでは戦艦の増備が 続き、造船所作業員の大量養成に迫られていた。そのために開発されたのが、“Show, Tell, Do, and Check” にモデル化された「4段階職業指導法」である。

OJTが日本に本格的に導入されたのは第二次世界大戦後。職場での自主的な改善活動(QCサークル)と両輪 となって機能し、日本の高度経済成長に大きく寄与した。

初期のOJTに関する一般の認識は、上司あるいは先輩が、部下や後輩に対して行うマンツーマンの指導・育 成であり、縦系列の指導を前提としていた。しかし1980年代以降、学習者を取り巻く環境との相互作用を考え る「状況学習論」や、能動的な学習を促す「学習環境デザイン論」、eラーニングや研修の設計を研究する「イ ンストラクショナルデザイン理論」が登場した。

こういった各種学習理論の発達の中で、今日のOJTは新たな位置づけを得ている。すなわち、戦略的な人材 開発の実現には、OJTに集合研修や交流学習等をうまく組み合わせることが求められているのである。OJTはそ ういった統合的な職場学習を機能させる要であり、人材育成の基本であると多くの研究者が指摘している。
【PDCAサイクル】
計画(Plan)→実行(Do)→検証(Check)→改善(Action)のサイクルを繰り返すことで、品質の維持 ・向上および、継続的な業務改善活動を推進するマネジメント手法。「品質管理の父」と呼ばれるW・エドワ ーズ・デミング博士が、1950年代に体系化し、発表したもので、その名前を取って「デミングサイクル」とも 呼ばれる。ただし元々の考えはデミングの師であるW・A・シュハート博士であるとも言われ、デミング自身、 晩年は「PDCAサイクル」と呼称するようになった。

デミングは1950年、日本科学技術連盟に招待され、技術者や経営者に対して多数の講演を行った。その場で展 開されたデミングの理論は品質管理、業務改革における基礎理論となり、戦後の日本経済の発展に大いに貢献 した。

1987年にはアメリカでマルコム・ボルドリッジ賞(国家品質賞)が設立されたが、この賞は日本の品質管理手 法にならったものであり、1990年代のアメリカの復活の原動力になったと言われている。また、PDCAサイクル はISO 9000(品質改善)やISO 14000(環境改善)などの管理システムの基盤理論にもなっている。
【Planned Happenstance Theory(計画された偶発性理論)】
スタンフォード大学クランボルツ教授らによって提唱された概念。基本的な考えとしては
  • 日頃から自分の好奇心を広げ
  • 現状に安住せず、自分の積極的なチャレンジを行動の中に組み込むことでチャンスをつくり
  • 自らの決断した行動に対するコミットメントを基盤として、自分の内なる安定志向や自分の取り巻く環 境という、内外の行動への障壁を積極的に乗り越える努力を行い
  • その前向きな変化対応法を習慣化する
というものである。
【QCサークルと小集団活動】
Cサークルとは、品質管理(QC:Quality Control)の手法を用いて職場単位で業務課題を解決し、生産性を 向上させる日本発の品質管理手法である。社員全員参加で、自主的に問題点を発見したり、改善案を提示してい きながら自社製品の品質向上を目指すもの。品質管理はデミング・サイクル(PDCA)で知られるエドワード・デ ミングによって日本に紹介され、瞬く間に日本中に広がった。

1960年頃から製造業を中心に展開され、品質管理手法の開発や診断、改善、教育・訓練などが実施された。1970 年代には生産工程にとどまっていた品質管理を全社展開するため、TQC(Total Quality Control:総合的品質管 理)が導入された。同時期に生産ラインのロス・ゼロを目指す全員参加活動TPM(Total Productive Maintenanc e:総合生産保全)も提唱されている。1990年代半ば以降、TQCがTQM(Total Quality Management)に言い換えら れた頃、同時にQCサークルなどの小グループ活動を「小集団活動」と総称するのが一般的になっていった。

1980年代には日本に進出した外資系企業もデミング賞(TQMの進歩に貢献した団体や個人に与えられる賞)に挑戦 するなど、米国本国でのデミング理論再評価機運が高まり、1987年の米国の品質管理賞「マルコム・ボルドリッ ジ賞」創設につながった。

しかし一方で、日本ではバブル崩壊以降、小集団活動の形骸化が進んだ。TQC導入によって、開発部門や販売部 門、一般管理部門などに小集団活動を拡大し、その求心力低下を打破しようとの動きがあったが、この方法はあ まり実を結ばなかった。今日の複雑化し、不確定要素の高い状況においては、旧来のQCサークルや小集団活動の 手法のままでは十分な成果が上げられないという見方もある。
【RJP(Realistic Job Preview)】
1970年代半ばに米国の産業心理学者ワナウス(John P Wanous)の論文により提唱された採用手法。求職 者に対して自社の社風・職務内容・職務環境等についてよい面も悪い面も具体的に示し、納得共感してもら いながら進めていくというもの。
【SECIモデル(セキモデル)】
組織と個人がその経験や知恵、価値観、信念などを含む“知”を共有し、より高次元の知を生み出していく ナレッジマネジメントの基礎理論。1995年に野中郁次郎氏(現・一橋大学大学院名誉教授)らが発表した。

野中氏によれば、@知識には、明確な言語・数字・図表で表現された「形式知」と、明示化されていないメンタ ル・モデルや体系化された技能としての「暗黙知」があり、A人間の創造的活動において、両者は互いに作用し 合い、形式知は暗黙知へ、暗黙知は形式知へ相互に絶え間なく変換・移転する。また、B組織の“知”は、暗黙 知と形式知、および異なった内容の知識を持った個人が相互に作用し合うことによってつくられるという。

AとBの作用をモデル化したのがSECIモデルであり、S:Socialization(共同化:情報を共有する)→E :Exte rnalization(表出化:アイデアを言語化する)→C : Combination(連結化 : アイデアを結び付け、新しい形 にする)→I : Internalization(内面化 : 個人が知を体得する)の4つのプロセスからなる。知は、個人の知 からグループの知へ、そして組織の知へ、さらには組織間の知へと上昇し、内面化において再び個人の知へと戻 っていくが、この時、個人の知は豊かな知恵が凝縮されたものとなっている。つまり、SECIモデルは単なるサイ クルではなく、スパイラルアップサイクルなのである。
【SSM(ソフトシステムメソドロジー)】
英国ランカスター大学ピーター・チェックランド教授とそのグループにより開発されたマネージメント 手法。広義のアクションリサーチの一つと捉えられ、研究者自身が問題状況に関与するアクションリサーチ ベースの参加型で行為指向のプロセス中心のシステム論を展開し、より人間的で複雑な問題状況を扱おうと いうもの。現在、教育分野や看護分野、組織論や情報システム論を始めとして、いままで科学的実証主義の 限界を感じてきた多くの研究者や実務家によって、研究の方法論や実践のガイドラインとして応用されてき ている。
【4つのケア】
旧労働省が2004年に発表した、企業が実施すべき従業員のメンタルヘルス対策。基本指針を「心の 健康づくり対策」としてまとめ、その主要項目を以下の「4つのケア」に整理し、これらが密接に連携され、 継続的、計画的に取り組まれることが望まれるとした。

(1)セルフケア:従業員自身が行う活動。企業はこれを支援する。
(2)ラインによるケア:管理監督者が行う活動であり、職場環境の改善、従業員の心の健康に対する日常的配 慮と相談などが含まれる。
(3)事業場内産業保健スタッフ等によるケア:社内の産業医や人事労務管理スタッフなどによる活動。心の健 康づくりのための計画を策定し、促進すること。また、セルフケア、ラインケアを支援することが定められ ている。
(4)事業場外資源によるケア:社外の医療機関や相談機関が行う教育研修、情報提供、助言、医療・福祉サー ビスの提供などを指す。
【5S】
安全、品質、環境、生産性などを向上するために、職場ではさまざまな改善活動が実施される。5S(ゴエス) は、その活動を支えるスローガンである。いるものといらないものとに区分して、いらないものを処分する「整理」、 いるものを所定の置き場にきちんと置き示す「整頓」、きれいに掃除する「清掃」、いつ誰が見ても、誰が使っても、 不快感を与えないようにきれいにしておく「清潔」、職場のルールや規律を守る「躾」の5項目を指す。

モノや作業に関する具体的な改善活動を通じて、社員の自主性向上、チームワークの醸成、リーダー育成といった 人材育成を目指すのが特徴。5Sの項目を一部変更したり、項目を追加するなどして、独自にアレンジしたものも含め、 製造業、サービス業をはじめ多くの日本企業で活用されている。
【アクションラーニング】
小グループの人々がお互いの自己成長をサポートしながら、同時に実際の問題を解決し、組織を変革し ていくパワーを持つ学習プログラム。個人とチームと組織とが、変化に対してより効果的に対応できるよう に備えさせることが最大の価値。80年代後半、ジャック・ウェルチがGEにおけるリーダーシップ研修をこの 手法で行ったことで有名。
【アコモデーション】
SSMを進める上で、発散型のダイバーシティーと収束型のシナジーという矛盾した概念の、許容と同居を 促進する「異なった世界観の同居」という考え方。
【異質併行開発】
同コンセプトのもと、同時並行的にいくつかの案を形にし、最終的に一つの案に絞るという方式。例え ば、ある新商品を開発する時、2つのグループにわけ、それぞれ同コンセプトをもとにデザインの案をだす。 そして、最終的にそのでてきた2つの案から一つを選択するという方式。
【インストラクショナルデザイン(ID)】
教材、グループディスカッション、演習とフィードバックなど、学習を支援するさまざまな活動(イン ストラクション)をトータルで設計し、学習効果を高める方法論。教材や研修の開発・設計に用いられるこ とが多い。

IDの発端は、正の強化子(報酬)と負の強化子(罰)で行動を制御できるとする強化原理(バラス・F・スキナー)、 人が学習するプロセスを6段階で示した教育目標分類(ベンジャミン・ブルーム)など、1950年代の諸研究 にある。1970年代以降のコンピュータ・通信技術の発達はIDの研究・実践にも多大な影響を与え、eラーニン グの設計、ワークプレイスラーニングなども主要な研究分野となっている。

今日、IDの基礎モデルとして広く活用されているのは、「分析→デザイン→開発→実践→評価」からなる 「ADDIEモデル」やその発展型である。
【インナーブランディング】
ブランディングという言葉は第一に、ブランド価値の差別化とロゴマークの浸透などを通じて、顧客の 購買行動を引き出すマーケティング戦略を意味するものとして浸透した。しかし近年、会社のブランドや価 値を社員に浸透させ、社員のロイヤルティを高めていく活動として「インナーブランディング」または「イ ンターナルブランディング」という言葉が使われるようになってきている。当初は、企業が社員に自社ブラ ンドへの理解を深めさせる啓蒙活動的なものであったが、最近ではさらに踏み込んで、業務改革や意識改革 を進める中心的取り組みとして位置付けられるようになった。

1994年に経営学者のジェームズ・C・コリンズが『ビジョナリー・カンパニー』を発表して以降、3Mやジョン ソン・エンド・ジョンソン、IBMなど、「ビジョン」や「ミッション」による卓越した経営を行う企業が知ら れるようになった。「ウェイ」や「DNA」などが流行したのも同様の流れにある。

ビジョナリー・カンパニーにおけるビジョンやミッションは、社員1人ひとりの行動を差別化させる原動力 となり、その結果、企業価値の向上に直接的な寄与をもたらした。企業の存在価値を社員全員でつくり出し、 共有しようという試みにおいて、インナーブランディングも同様の系譜に属する。

ただしインナーブランディングでは、社員のコミュニケーションプロセスを重視するという特徴がある。社 員同士のディスカッションを喚起する場の提供やファシリテーションの導入などを通じて、社員による価値 創出と共有化を目指しているのである。またそれが、社員のモチベーション高揚につながっている点も見逃 せないだろう。
【インプロ】
即興劇。エチュード、シアターゲームなどとも呼ばれている。芸術分野で用いられた言葉「Improvisati on=即興」に由来し、特に演劇分野では、俳優のトレーニング方法および一演劇形式として確立している。

演劇におけるImprovisationは、テーマや状況などを設定し、筋書きを決めずに役者が演じる。起源は古く、 一説には古代ローマ喜劇、アテルラナまで遡るとも言われている。

Improvisationをうまく成立させるには、各人が迅速かつ的確な状況判断を行い、自分の役割を認識しながら、 臨機応変に行動、協力することが必要となる。そのため、20世紀に入り、アメリカやイギリスで社会学、 心理学的側面からの研究が進み、自己発見やコミュニケーション、チームワーク、協調性などを学ぶ手法と しても用いられるようになった。さらに現在では、企業の人材開発にも活用されている。
【エルダーシップ】
ミンデルによって提唱されている、問題解決を意図するのではなく、常に雰囲気に対する繊細な「気付 き」を保ち、「場」に潜在する多様性に気配りを行うこと。一種のチームファシリテーションの姿勢。
【エンゲージメント】
日本語では「絆」「関係性」などと翻訳されることが多い。2000年以降、上司の部下に対するマネジ メントにおいて、部下の離職防止や生産性向上のために、「エンゲージメントが重要」という指摘が散見する ようになった。また、個人が目指す方向性と組織が目指す方向性が合致し、個人の成長が組織の成長につなが るような関係性を「エンゲージメントが高い」という。

そのため、タレントマネジメントを行ううえでは、エンゲージメントが重要な要素の1つになっている。
なお、類語としては企業へのロイヤルティー(忠誠心、帰属意識)があるが、エンゲージメントは個人の成長を 組織の成長に結び付けるという視点が強い点が異なる。
【エントリーマネジメント】
採用を「組織の入口を管理する」という広い概念で捉えなおしたもの。企業の競争力を生み出す優秀な 人材をいかに自社に惹きつけるかという軸で捉えたもの。考えの前提には「事業戦略の為の人材ではなく人 材力が事業戦略を決める」「入りたい人材を選ぶのではなく採りたい人材を口説く」「会社に人材を入れる のではなく人材のなかに会社を入れる」「採用のモチベーション向上策である」という考えがある。
【学習する組織(Learning Organization)】
置かれている状況から学び、行動を変容させ、組織としての力を向上し続けられる組織のこと。このような 組織を実現するためには、組織メンバー1人ひとりが問題の発見・解決能力を高め、自ら継続的に学習するとい った自立型人材となることが必要である。それを前提として、組織は現場の情報を吸い上げ、組織の意志決定 および行動変化に活かしていく仕組みをつくり、機能させる。そのことで初めて「学習する組織」が実現する。

学習する組織の重要性は、1970年代の終わり頃からハーバードビジネススクール名誉教授のアージリス(Chris Argyris)やマサチューセッツ工科大学教授ショーン(Donald.A.Schon)らにより指摘されてきたが、これを体 系化したのがピーター・センゲ(Peter M.Senge)である。センゲは1990年に発表した『The Fifth Discipline』 (邦訳:『最強の組織』徳間書店/刊)の中で、学習する組織の実践的手法を自己マスタリー、メンタルモデルの 克服、ビジョンの共有、チーム学習、システム思考という5つの原則に整理した。

現在「学習する組織」は、組織運営に関する基礎的概念の1つとして広く受け入れられている。
【カークパトリックの4段階評価】
教育効果測定の第一人者、米国ウィスコンシン大学名誉教授のドナルド・カークパトリックが1959年 に提唱した、教育効果を測定するためのモデル(図表)。研修などの教育効果を大きく4つのレベルに分け て達成度合いを見るもので、現在、教育効果測定の現場で最も広く利用されている。

レベル1ではアンケート、レベル2では筆記・実技テスト、レベル3では本人・上長に対する追跡調査と 周囲へのヒアリングが行われる。レベル4では、売り上げや離職率など、教育実施のきっかけとなった数 値の変化を見るが、どこまでが教育の影響かは判断し難いため、現場の上長へのヒアリングなども合わせ て行われる。

教育効果測定のもう1人の権威、ジャック・フィリップスは、この4段階評価に、レベル5としてROI (Return On Investment:費用対効果)を加えた。米国では、この5段階評価を研修などの効果測定に利 用しているが、ROI測定を必要とする研修は全体の10%程度であるとフィリップスは述べている。たとえば、 ストレスマネジメント研修のROIを出す意味はないと彼は強調しており、必要とするのは長期間にわたり、 事業への貢献が明確に求められる一部の研修に限るという。
【カフェテリア・プラン】
選択型福利厚生制度。会社が一定金額をポイントとして社員に支給し、ポイントの範囲内で好きな福利 厚生メニューを選んで活用する制度である。

アメリカでは1970年代の終わりに企業の福利厚生費抑制を目的に導入され、1980年代に普及した。 日本では1993年に厚生労働省が研究会を設置し、普及を進めてきたが、大企業以外では費用抑制効果が 低いこと、課税対象範囲が複雑で運用に手間がかかるなどの理由から、導入数は大々的には増加しなかった。

しかしこの制度をきっかけに人材開発の一環として、「自主選択型教育」を導入する企業が増加した。その 方法は、企業が各種研修を提供する外部教育機関と契約を結び、従業員に豊富な研修メニューを提供すると いうもの。従業員は自分で受講する科目を選択する。この研修形態そのものを「カフェテリア研修」と呼称 することも多い。
【企業内大学(Corporate University)】
GEがクロトンビルのリーダーシップ・センターを設立(1956年)したのを皮切りに、ディズニー、マク ドナルド、モトローラなど多くの有力企業が企業内大学(以下CU)を設立した。1990年代には多くの欧米企 業がCUを構築したが、1990年代後半以降、設置目的があいまいで、事業貢献が不明瞭なCUの多くは撤退を余 儀なくされた。しかしその後も戦略的なCUの展開による成功例が数多く報告され、現在ではフォーチュン50 0社の約80%がすでにCUを設立しているか、または設立予定であると言われている。

 CUの特徴は、企業の事業目的・戦略に明確に合致し、業績向上に直接的に寄与することを目指す点だ。そ のため従業員に、仕事の中で継続的な学習機会を提供することを重視している。また企業は当然、積極的に CUの活動を支援する一方で、CUの効果を測定し評価している。これらの点が旧来の教育プログラムを提供す る、研修センターとの違いである。

現在CUを持つ多くの企業は、CUは個人と組織の学習を促進し、知識や知恵の相互作用を促す重要な機関で あると見なしている。グローバル化の進展の中で、企業には、変化に素早く対応できる組織となることが求 められてきた。このような経営のニーズに応え、ラーニング・オーガニゼーションを実現するため、CUが大 きな役割を果たしている。

この観点から見たとき、CUには5つの類型がある。@リーダーシップ開発型(選抜研修が抜擢人事にリンク )、Aバリューチェーン/ネットワーク型(サプライチェーンマネジメント、カスタマーリレーションシッ プマネジメント、TQM(総合的品質管理)などの事業課題解決をCUの活動目的とする)、B外部マーケティン グ型(社内ノウハウを外販することで、絶えざる改善と刺激が社内にフィードバックされ、企業の成長に寄 与)、Cコンソーシアム型(複数企業、大学等が連合して業界に必要な人材開発を主導)、Dキャリアデザ イン型(自発的な能力開発・成長を組織活性化につなげる)である。企業各々のCUは、企業のニーズや文化 などによって、この5類型の複合型になっていると理解することができる。

日本では2002年にソニー、トヨタなどが次世代リーダー育成を目的にCUを設立したが、近年ではDのキャ リアデザイン型CUが注目されている。1990年代に欧米で流行した自己啓発型CUとの違いは、社員のキャリア 意識の変化に応えるものであり、社員の自己実現を企業が支援することが、企業の成長に欠かせないという 戦略性があることだろう。
【キャリアパス】
異動や昇進・昇格、転職などを含む業務経験の積み重ね。その道筋。一連のポジションの変遷をキャリア パスと呼ぶことも多い。それは昇進・昇格が、本人の能力ストレッチの証明であるとの通念を前提としている。

社員個人の能力向上には、1人ひとりに合った難易度の業務を、適切なタイミングで、かつOJT、OFF-JTなど の教育を組み合わせて提供することが重要。そのため企業は業務経験を積ませるための配置転換、選抜、教育、 昇進・昇格といった一連の人事システムを教育という観点からもトータルでとらえ、設計することが求められ ている。

今日キャリアパスという言葉がよく使われるのは、役員や社長など、リーダー層の育成が急務であるため。若手、 ミドル、その上のアッパーマネジメントの各層をつなぐ育成・選抜・登用システムがうまく機能していないと の反省が多くの企業で見られる。特に優秀な人材を早期発掘・育成するには、そのキャリアパス設計に企業が 積極的に関与し、成長過程を見守っていく仕組みが必要とされている。
【クロトンビル】
1995年に開校された、GE(General Electric)のコーポレートユニバーシティ
【グローバル人事】
企業がグローバル化を図る時、その経営形態は概ね次の3つの道をたどる。(1)国内で生産した商品 を海外の代理店を通じて輸出販売する「輸出型企業」、(2)各国に海外現地法人を立ち上げ、本国から幹 部社員を派遣して経営していく「多国籍企業」、(3)開発・生産・販売などの経営プロセスを全世界で標 準化していく「グローバル企業」である。この中でグローバル人事を必要とするのは(3)のグローバル企 業である。

グローバル企業は一般的に、経営プロセスを全世界的に標準化し、全体最適を高めようとする。人材につい ても人的資源の有効活用の観点から、全社員対象・世界共通の人事制度が必須となる。これがグローバル人 事である。特に近年、欧米諸国においてペイエクイティ(同一職務同一賃金)に関する法規制が強化されて いることもあり、欧米の主要企業のほとんどがグローバル人事を展開している。

これに対して日本企業は(2)の多国籍企業の段階にあるケースが多い。この段階では、採用・評価処遇・ 昇進昇格は各現地法人に任され、現地スタッフ(ローカルスタッフ・ナショナルスタッフとも呼ばれる)の 経営幹部への登用や、グローバルな配置転換などは遅れており、一部企業が取り組み始めたところである。
【経験学習】
実践的な経験を通して行う学習のこと。一般に、知識を教材などから学ぶ「座学」と対義的な言葉とし て使用されている。基礎モデルとして知られているのは、ディビッド・コルブの「経験学習モデル」である(Kolb,1984年) 。このモデルでは、@Concrete Experience(具体的な経験)→AReflective Observation(内省的な観察) →BAbstract Conce-ptualization(抽象的な概念化)→CActive Experimentation(積極的な実実験)とい う4つのプロセスを経て、経験から学習することが示されている。

コルブのモデルは管理職教育を支える基盤理論として、ビジネス界で広く受け入れられている。しかし個人 が置かれている社会的な環境の影響や、仕事の中での無意識的な学習、自分を第三者的に見るメタ認知の要 素が考慮されていない、などといった各界の学者からの指摘もある。

実践的研究としては、モーガン・マッコール(McCall, 1998年)らの、上級管理職に対する大規模なインタ ビューがある。成功した上級管理者は上司や課題、苦難から成長に必要な諸要素を学んでいることが明らか にされた。1990年代後半頃から同様の研究を行った金井壽宏氏(現・神戸大学大学院教授)は、個人に 大きなインパクトを与えた「一皮むけた経験」が個人の成長には重要な意味を持つと示した。
【現地化】
海外へ進出した企業の現地法人において、経営層を含めたマネジメント層や、開発、経営部門といった 重要なポジションに現地人材を登用し、権限委譲を進めていくこと。日本企業の現地法人では、係長や課長 などのミドルマネジメント以上の要職を日本人社員が占めるケースが多く、欧米や他のアジア企業と比較し て現地化が遅れていると言われる。この現地化の遅れは優秀な現地人材の流出を招くだけでなく、その土地 特有のビジネス慣習などへの理解不足を招き、特にアジア進出企業との競争に遅れを取る原因にもなってい る。

また、欧米企業は早くからアジア諸国の主要大学との共同研究や講座の開設、寄付など、優秀な現地人材 を確保するための積極策を実施してきた。その結果、そうした大学の学生の間で、日本企業は人気がない。 “言葉の壁”だけが不人気の理由ではないことを理解する必要がある。
【コーポレートユニバーシティ】
企業内における、今での研修センターの延長上にある存在ではない新しい形での教育機関。特徴として、 以下の2点を最低限含んでいる。
  • 経営戦略と連動した形でのコンテンツ提供
  • 企業理念浸透の場
【コミュニケーションスキル】
ビジネスにおけるコミュニケーションスキルには、多数のスキルが含まれている。それらは、(1)マネ ジメントの観点で必要なスキル、(2)直接的な影響力を発揮するうえで必要なスキル、(3)他者への支援 提供で必要なスキルの3つに整理することができる。

(1)マネジメントに必要なスキルには、チームビルディング、部下育成、モチベート、ファシリテーション などが含まれる。(2)直接的な影響力発揮では、プレゼンテーション、合意形成(組織の理解)などが必要 だ。(3)他者への支援提供では、ラポール構築、傾聴と共感、顧客ニーズ理解、コーチングなどが求められる。
【コンテキスト分析】
コンテキスト(context)とは、複雑に因果関係が絡んでいる現実の出来事をとらえる文脈のこと。この 用語が最初に意識されたのは、現代言語学の祖ともいわれるスイスのフェルディナン・ド・ソシュール (1857〜1913年)、米国の論理学・哲学者チャールズ・サンダース・パース(1839〜1914年)らが展開した 記号論の中においてである。

記号論は言語学、社会学、心理学、コミュニケーション論、情報工学、マーケティング等の広範な領域に 重要な基礎概念を提供した。コンテキスト理解の重要性はむしろ、これらの諸分野で指摘されてきたといえ よう(記号論の関心はつねにテキストにあった)。たとえば経営学では、ピーター・M・センゲが1990年に 発表したシステム思考が大きなインパクトを与えたが、これはコンテキストの理解に他ならない。

人材開発分野では、ある人の背景を調査し、分析することをコンテキスト分析と呼ぶこともある。いずれも 表象に現れたテキスト(記号)のみならず、その背後のコンテキスト(文脈)をとらえることの重要性が 指摘されている。
【コンピテンシー】
ハイパフォーマーが高い成果を上げられる理由を、行動・態度・思考などから分析し、その特性を明らか にしたもの。企業では、これを一般社員が目指すべき人材像や評価基準に使い、従業員の質向上を図っている。

初めてこの概念を発表したのは、デイビッド・C・マクレランドである(1973年)。その弟子のライル・ スペンサーらは、多数のビジネスマンに対する聞き取り調査をもとに、ハイパフォーマーの重要なコンピテ ンシーを21項目に整理した。

コンピテンシーの研究は、ヘイ・マックバー社など世界的なコンサルティング企業を中心に進められてきた。 現在では、ネットワーキング、学習、メタ・コンピテンシーなど、スペンサーが提唱した21項目に新たな 概念が追加・修正されている。たとえばダニエル・ゴールマンが1995年に発表したEQ(Emotional Intelligence Quotient/心の知能指数)も、コンピテンシー研究の最近の成果である。

このコンピテンシーを基準にした評価(コンピテンシー評価)は、欧米企業において最も広く受け入れられて いるアセスメントの1つとなっている。
【コンピテンシー面接】
コンピテンシーを主軸とした構造化面接。主に過去の体験で感じた価値観と事業との適正をマッチング させるもの。
【サクセッション・プラン】
人材の流動性が高い欧米企業では、人事権を直属の上司が持っていることが多い。管理者は自分がマネジ メントする業務の主要なポストについては、複数の後継者を前もって決めておく。この慣習は、すでに1960年 代から一般的であった。1990年代後半以降、このプロセスを発展させ、候補者の選抜・育成を中心とした組織 的な後継者育成に取り組む企業が増えてきた。これがサクセッション・プラン(Succession Plan:後継者育 成計画)である。

サクセッション・プランで重要なのは、選抜・育成が途切れなく設計され、最終的にはすべての職位で後継者 育成が行われること。長年グローバル企業として名を知られる企業の多くは、独自のサクセッション・プラン を持っている。管理職が次の段階へ進むにふさわしいかどうかを評価するGEのセッションC、マリオット・イン ターナショナルの全社的なリーダーシップ能力開発プロセス(LDI)などは有名だ。

近年では、投資家の間でもサクセッション・プランが注目されている。後継者がきちんと育成されている企 業は、将来の安定的な利益が約束されると判断されるためだ。ブランド力、財務基盤と並んでサクセッション ・プランを含む「マネジメントの質」は、企業の評価の指針となっている。
なお、次世代経営者の育成を意図する場合には「CEOサクセッション・プラン」として区別されることもある。
【社会人基礎力】
経済活動を担う人材の確保・育成の観点から、職場で求められる能力の明確化と育成・評価のあり方につ いて検討を進めるため、経済産業省は2005年7月、産学官から有識者を集めて「社会人基礎力に関する研究会」 を設けた。その研究会が“組織や地域社会の中で多様な人々とともに仕事を行っていくうえで必要な基礎的能 力”として定義したのが「社会人基礎力」である。

社会人基礎力を構成するのは、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つの力。さらに、 各能力要素として、「前に踏み出す力」では主体性・働きかけ力・実行力、「考え抜く力」では課題発見力・ 計画力・創造力、「チームで働く力」では発信力・傾聴力・柔軟性・状況把握力・規律性・ストレスコントロ ール力を定義する。

この取り組みのベースにあるのは、日本の人的資源の枯渇化への危機感である。社会環境の大きな変化に伴っ て子供の人間的な成長機会が減少した現状を危惧し、同研究会では、教育機関、企業、地域などとともに、多 様化し流動化する社会に対応できる人材開発に、社会全体で取り組む必要があると訴えている。経済産業省は 現在、研究に基づいた「社会人基礎力育成プログラム」を発表し、その普及に教育機関、企業への協力を呼び かけている。
【次世代リーダー育成】
かつて欧米企業では、「必要な人材はヘッドハントすればいい」という人材マネジメントスタイルが主 流だった。1990年代以降は、自社内の人材育成と、外部人材の取り込みによる組織活性化を軸としたスタイ ルへ移行した。

その中で注目されたのが、各層のリーダーである。リーダーの優秀さ如何が企業の業績を左右するため、 より適切にリーダー人材の育成を図ろうとする機運が高まったのである。そのため、各職位の業務内容を定 める詳細なジョブ・ディスクリプション(職務記述書)の構築と、それらの仕事に必要な経験や能力の判断 ツールとしてコンピテンシーの導入が進んだ。

ゼネラル・エレクトリック(GE)やシティコープなどは、他社に先駆けて組織的なリーダー育成に取り組 んだ企業である。2001年、GEの新CEOにジェフ・イメルト氏が就任したが、彼の選抜と育成に7年もの歳月が かかっていたことは、世界中に大きな衝撃を与えた。日本でも2000年を前後して、次世代リーダー育成に力 を注ぐ企業が増えてきている。
【深層民主主義】
ミンデルによって提唱されている、関係者が感じていることを、どのようなレベルであれ、尊重し十分 な表現を促していくこと。例えば、「この場はどのような感じがするだろうか?」、「あなたは何を感じて いるだろうか?」等の問いかけを通して小さな「気付き」を尊重し、引き出していく。
【心理的契約(psychological contract)】
組織と社員の関係にある、「こういったことはしてくれるだろう」というもの。例えば、社員側の心理 的契約は「まじめに働けば会社はある程度は処遇捨てくれるだろいう」というものであり、組織側の心理的 契約は「わが社の社員の仕事に対する真剣度は高く、組織側が全員にある程度の処遇を保証すれば高い品質 の製品・サービスは期待できるだろう」というもの。この心理的契約が一致すれば、社員の組織に対するコ ミットメントの醸成や仕事に対するモチベーションの向上に重要な役割を果たすこととなる。
【ストレス・コーピング】
個々人がセルフケアを行うには、ストレス・コーピング(ストレスへの対処行動)が有効である。これ は、ストレスをコントロールする方法や技術を学び、対処するということ。その具体的な方法は「問題焦点 型コーピング」と「情動焦点型コーピング」の大きく2つに分類されている。前者は、ストレスの原因に直 接働きかけ問題を解決したりしようとするもの。後者は、気分転換を行う、問題やストレスのとらえ方を変 えるといった、ストレスの“受け取り側が変わる”ものである。
【成人学習(Adult Learning)】
成人の効果的な学習に関する研究。成人と子供の学習を区別し、成人の学習支援に有効なアプローチを 研究する。その源流は、20世紀前半の学習心理学の祖・デューイ(John Dewey/学習における経験や振り返りの重要 性を指摘)をはじめ、社会改革運動と結びついた識字教育等の展開、1950年代以降のスキナー(Burrhus Frederic Skinner)による行動主義心理学などにある。

現代の成人教育の基礎原理をつくったのは、1970年代以降に活躍したノールズ(Malcom S. Knowles)と 言われている。ノールズは成人の学習を子供の学習と比較して、自己管理的、自己決定的などの4つの特徴を 挙げた。
ノールズ以降、認識を変容させるプロセスに着目したメジロー(Jack Mezirow)の変容的学習論、コルブ (David Kolb)の経験学習理論(概念化→実践→経験→省察という4段階の体験学習モデルを提唱/1984 年)など、多数の研究が発表された。

ノールズらの研究は個人の内面的変化に主軸を置いたアプローチと言えるが、1990年代になると、学習者 とその周囲――他者や環境との相互作用に注目した「状況的学習論」が登場した。その旗手であるレイヴ (Jean Lave)、ウェンガー (Etienne Wenger)は、学習が発生するのは、個人があるコミュニティに参加し、 中心メンバーとなる過程においてであると主張し、学習者が参加するコミュニティを実践コミュニティと呼ん だ(1991年)。
この理論は教育工学、組織経営学等、多方面に影響を与えており、以降、成人学習研究も新たな展開を迎えて いる。
【ダイアローグ】
訳語は「対話」。提唱者はアメリカの物理学者デヴィッド・ボーム。人々を対立から協調へと導き、解決を 促すコミュニケーション手法である。

ボームは量子力学の見地から、「世界は断片化できない全体性を持つ」と考えており、チベット仏教の最高権威 者であるダライ・ラマや心理学との交流を通じて、晩年には量子哲学の分野を切り開いた。ボームのダイアロー グに関する著書『On Dialogue』(邦題:ダイアローグ)は、彼の死後、1996年に出版され、ビジネス界にも 大きな影響を与えた。

ダイアローグは目的を持たずに話し、一切の前提を排除することで、弁証法的な集団思考を可能にする。ボーム は、相手を説得して結論を得る「ディスカッション(議論)」と対比させることで、ダイアローグが含む哲学的 な難解さにもかかわらず、その意味を端的に示すことに成功している。ボーム以降、人材開発分野でも、ダイア ローグはコミュニケーションの重要な概念として認知されるようになった。
【ダイバーシティ】
もともと、アメリカにおいて1990年代に人事用語として急速に浸透してきたもの。
多様となる市場の変化に対応し競争力を高める為、人種、性別、年齢、宗教・信仰など、個人の属性にこだ わることなく多様な人材をいかす人事戦略であり、能力主義を前提として、各人のもつ能力を最大限発揮さ せるためには、人材の多様性だけでなく働き方の多様性も容認するというもの。

また、平成13年より日経連による「日経連ダイバーシティー・ワーク・ルール研究会」が発足し、そこで、 日本型ダイバーシティーについて「異なる属性(性別、年齢、国籍など)や従来から企業内や日本社会にお いて主流をなしてきたものと異なる発想や価値を認め、それらをいかすことで、ビジネス環境の変化に迅速 かつ柔軟に対応し、利益の拡大につなげようとする経営戦略。また、そのために、異なる属性、異なる発想 や価値の活用をはかる人事システムの構築に向けて連続的かつ積極的に企業が取り組むこと。 」と定義され た。
【タレントマネジメント】
タレントマネジメントとは、経営戦略に沿って、組織に貢献する人材を採用、育成、定着化させる一連の 活動を統合的に行うことであり、米国発の用語。端的にいえば個に着目した一貫性のある人材マネジメントを 意味する。

この言葉の端緒は、1997年に世界的コンサルティング企業であるマッキンゼー・アンド・カンパニーが発 表したレポート「The War for Talent」である。企業の価値を生み出すのは人材(Talent)であり、グローバ ル市場において優秀人材の争奪戦が起きていることと、その獲得と定着化に成功した企業が競争優位を獲得す ると述べた。

当時のタレントマネジメントは、優秀人材の獲得と定着化に重点が置かれた。ただし、高額な報酬だけでは定 着化は難しく、優秀人材の内的動機づけを強化し、企業への帰属意識を高める諸施策が重要だと指摘された。

その後、経営人材の社内育成や、中間層強化の重要性が認知されたことなどを背景に、1人ひとりの才能に着目 した人事・人材開発戦略をカバーする言葉へと変化してきたといえる。
【チームビルディング】
チームビルディングとは、チームづくりのプロセスのことである。チームづくりに必要な方法論やスキル を体系化したものをこう呼ぶことも多い。

チームビルディングの基盤理論は、米心理学者のブルース・タックマン(Bruce W.Tuckman)が発表した「タ ックマンモデル」に求められる。タックマンは1965年に発表した書籍『Developmental sequence in small g roups』において、4つの段階を経てグループが発達することを示した。1977年には、1段階追加した5段階のモ デルを発表している。

このモデルによれば、チームは概ね形成期(Forming)→混乱期(Storming)→統一期(Norming)→機能期 (Performing)→散会期(Adjourning)という段階を経る。したがってチームづくりでは、できるだけ早く 「統一期」に移行するよう働きかけることが重要になる。

一方、日本では、1980年代まで、現場の強いチームワークが日本企業の強さの源泉であり、チームビルディン グは日本企業の得意とするところであった。しかし、1980年代までのチームビルディングと、今日のそれとで は、求められるものが少々異なる。

かつてのチームとはQCサークルなどの職場改善活動を行う小集団を想定しており、既存の業務プロセスを効率 化して生産性を向上することに主眼が置かれ、大きな威力を発揮した。しかし現在のチームにはそれに加え、 新たな市場の創出など、先例のないチャレンジを成功させることが求められている。求められる成果が変化し たことで、チームづくりに求められる要件そのものも変化してきているといわれている。
【トータルリワーズ】
1990年代以降、欧米企業では従業員の処遇を、業績評価によるものだけではなく、教育や働き方の自由 などの各種報酬を組み合わせた「トータルリワーズ(総合報酬)」による処遇へと変化させてきている。背 景には、業績評価による金銭的な処遇だけでは、社員の定着やモチベーション向上に十分な効果がないとい う理由がある。

これは、(1)基本給、福利厚生、社会保険等の基礎的な金銭処遇、(2)昇給、賞与、ストックオプション などの業績連動型の金銭処遇、(3)昇格、トレーニング機会の提供、柔軟な勤務形態、キャリアや職場環 境に関する非金銭的な処遇、の3つから構成される。

 (1)は、市場の水準によって決定されるため自社だけで決定することができない。(2)の業績連動型の 金銭処遇は事業戦略と従業員のベクトルを合わせるうえで重要だが、リテンション(定着)効果は低い。 (3)の非金銭的な処遇はリテンション効果が高く、かつグローバルな視点で見直すと、特に勤務形態などに ついてさまざまなムダを効率化できる可能性が高いとして注目を集めている。グローバル人事における処遇 は、この3つの報酬のバランスをどう取るかから考えることができる。
【ナレッジコミュニティ】
インターネット上のQ&Aサイトに代表される、知識の集約・共有・流通を促すコミュニティサイトの総称。 ナレッジマネジメントの実践方法の1つ。

従来、集団内で知識や情報を共有・活用するためにはナレッジベース(知識データベース)が用いられてき たが、その内容は、形式的かつ画一的なものになりがちで汎用性に乏しかった。

一方、ナレッジコミュニティは、質問者と回答者というコミュニケーションの中で、質問者が納得するまで 質疑応答が繰り返される。コミュニティ参加者すべてが回答者となり得るため、複数人の意見や知識が得ら れるのも特徴。個人の暗黙知的な情報も引き出され、蓄積されていく。

近年では、コミュニケーションツールのSNS(Social Networking Service)などとともに、こうしたQ&Aシス テムを社内イントラネットで運用する企業が増えている。
【ナレッジマネジメント】
組織成果向上の為、個々人に眠っている暗黙知としての知識の開発と共有を行い、それを組織としての 知識創造・活用が可能となる組織知に落とし込んでいく一連のプロセス。
【場のマネジメント】
現在広まっている「場」の概念は、哲学者、西田幾太郎が『善の研究』(1911年)の中で言及したものが 出発点となっている。西田は知識形成のベースには経験があること、知識は「直感→反省→自覚」というサイ クルで発展すること、そのような創造を可能にする場が重要であることなどを指摘している。

これらの先行概念をベースに、組織の活性化を進めるものとして場に注目し、伊丹敬之氏(現・一橋大学名誉 教授)は『場のマネジメント』を発表した(1999年)。伊丹氏は「場」とは、情報的相互作用と心理的相 互作用が発生する枠組みであり、情報交換や知識共有、意思決定などがなされるプロセスを生み出すものとし た。そのマネジメントには、@場の生成(設定と創発)のマネジメントと、A常に動いている場の舵取りのマ ネジメントという、2つのマネジメントが必要だと説いている。
【ピラミッド・ストラクチャー】
演繹的論理展開、帰納的論理展開を組み合わせることで、ピラミッド型に論理を構築し、複雑な話をわ かりやすく、相手に伝える技術である。マッキンゼー出身のバーバラ・ミントが体系化したもので、1973年 に発表された。

ミントは演繹的、帰納的論理展開の違いを「理由を述べるという点において本質的に同じ。形が違うだけ」 と明言。それを組み合わせたピラミッド・ストラクチャーは、“伝える”ことを前提に考えを整理すること で、論理上の矛盾や穴を見つけ、“考える質を上げる”ことができる手法だと言える。

似て非なるものに「ロジック・ツリー」がある。ピラミッド・ストラクチャーが、事実や観察事項を積み上 げてそこから「何が言えるのか」を求めていくのに対し、ロジック・ツリーは、特定事象から掘り下げてい くのが大きな違い。問題の原因を探ったり、解決策を具体化する際に用いられる。
【ファシリテーション】
ファシリテーション(Facilitation)の原意は、「容易にする」「促進する」「簡易化する」。ビジネ スの場面では、会議やプロジェクトなどにおいて客観的に司会進行や議論のまとめなどをし、スムーズに運 ぶように促すこと。ファシリテーターとはファシリテーションを行う「進行調整介助役」であり、「中立的 な立場で、チームのプロセスを管理し、チームワークを引き出し、チームの成果が最大になるように支援す る」ことを役割とする。

議論を深め、創造的な話し合いを促進するよう働きかけるため、会議の進行役と受け取られることも多い が、むしろ力点は働きかけにある。複数のメンバー間での知的相互作用を活性化し、意思決定や実行の促進 をサポートすることで、そのグループのさまざまな意味での生産性向上に貢献する。プロセス促進という役 割の重要性に着目し、「プロセス・コンサルテーション」「プロセス・コンサルタント」との呼称も生まれ ている。

ファシリテーション・スキルとは、ロジカル・シンキング(論理的思考)やクリティカル・シンキング( 批判的思考)などの思考力と、傾聴や対人感受性などを含むコミュニケーション・スキルなどからなる複合 的スキルである。また、ファシリテーターには、かかわる議論・業界についての専門的知識は不要との主張 もあるが、まったくその分野に無知のファシリテーターがプロセスを交通整理するのは、一般的には難しい のが実情だ。

ファシリテーションの発祥には、いくつかの流れがある。体験学習の流れで言えば、1960年代にアメリカ で誕生した、エンカウンターグループ(グループによる体験学習)での利用にまで遡る。1970年代になると 臨床心理学者のカール・ロジャースが、エンカウンターグループを心理療法に導入。ビジネス界では1980年 代後半、GEのジャック・ウェルチが、現場参加型の業務改革活動「ワークアウト」にファシリテーターを多 数導入、成功に導いたことで一気に認知された。日本では2002年に『ファシリテーター型リーダーの時代』 (フラン・リー/著、プレジデント社/刊)が出版され、翌2003年に日本ファシリテーター協会(会長 堀 公俊)が設立されたことから認知が進む。

現在欧米系企業では、ファシリテーション・スキルはマネジャー層以上の必須スキルの1つとして考えられ ており、昇進時に必要スキルの1つに挙げられているほど一般化している。
【ブレンド研修】
例えばe-learning、集合研修等の、各研修のメリット・デメリットを考慮した上で、独自の研修を構築、 提供していくこと。
【法定労働時間と時間外労働】
労働基準法の32条では、法定労働時間として「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について 40時間を超えて、労働させてはならない」と定めている。そして36条では、これ以上に従業員に「時間外 労働」をさせたい使用者は、労働組合または「労働者の過半数を代表する者」と書面による協定を結び、 労働基準監督署に提出しなくてはならないとも定めている。この協定が「36協定」だ。36協定なしに法定 労働時間以上、従業員を勤務させると、使用者には6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せら れる。

時間外労働に対しては第37条で、割増賃金(時間外手当)を支払うことが義務付けられている。しかし、 実際には多くの企業で時間外手当を払われない「サービス残業」が行われている。企業側が黙認している 場合もあるが、従業員が自ら申告していないという場合もあり、社会問題となっている。
【メンター(ブラザー・シスター)】
 メンター(Mentor)の語源は、ギリシア時代の叙事詩『オデュッセイア』に登場する老賢人 「メントル」である。そこから転じて、よき指導者、人生の先導者などを意味する言葉になり、一 般には成熟した年長者を指す。指導者側をメンター、指導される側をプロテジェ、メンティーと呼 ぶ。

アメリカで1980年代に広がり、大企業の経営者が多数のメンターを持ったことで注目された。たと えば、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏は20名以上のメンターを持っているという。

日本では、先輩社員が後輩や新人を指導・支援する「メンター制度」としてのほうが馴染みがある。 メンターとなる先輩社員が、仕事だけではなく、社会人としての基本的なマナー、コミュニケーショ ンスキルなど、日常生活から支援するところに特徴がある。

日本ではバブル経済崩壊後の1990年代、人員削減に伴う人材不足と成果主義導入が相まり、OJTがで きない企業が多くなった。2000年代に入って景気が上向くと、従来、上司が部下を指導するのが一般 的だったOJTを、先輩社員による後輩の指導という形に変えたメンター制度に転換し、現場教育の復活 を狙ったと言える。指導する側の若手社員自身の成長にも有効であるとされ、多くの企業がメンター 制度、またはその類型(ブラザー・シスター制度など)を導入している。
【モチベーション理論】
企業における従業員のモチベーションが脚光を浴びるようになったのは、1950年代の米国だった。現代 の各種マネジメント理論にも大きな影響を与えている動機づけ理論が相次いで発表されたのである。

心理学者アブラハム・マズローが提唱した「欲求段階説」は、人間の内的欲求には生理的欲求、安全の欲 求、親和の欲求、自我の欲求、自己実現の欲求の5段階があり、低次の欲求が満たされると高次の欲求を 求めるようになるというものだった。この理論を基盤に心理・経営学者ダグラス・マクレガーは、低次の 欲求と高次の欲求を求めている人間の行動モデルを「X理論・Y理論」で示した。X理論では厳しい管理と ペナルティなどによって管理するマネジメント手法を提示。Y理論では、個人と企業の目標を統合するこ とが、従業員の自発的な能力開発とロイヤルティの向上を促し、より効率的に企業目標を達成できると の仮説を示した。

心理学者フレデリック・ハーズバーグは、「動機づけ・衛生理論」において、職務満足および職務不満 足を引き起こす要因に関し、“不快を回避する欲求”と“精神的に成長し自己実現を求める欲求”とはま ったく異質なものであるとの仮説を示した。これをもとに心理学者デイビッド・C・マクレランドは、「 欲求理論」「目的設定理論」「期待理論」などを展開。特に目標設定理論は、目標を設定することで人は 動機づけられるとしており、目標の達成度に応じて報酬を払うという目標達成制度の基礎理論となってい る。マクレランドは研究をさらに発展させ、1970年代には「コンピテンシー理論」を構築した。

かつてのモチベーション理論は、「人は何によって動機づけられるのか」という動機づけの要因そのも のの研究であった。それに対して現代では、「人はいかに動機づけられるのか」という動機づけのプロセ スにフォーカスした研究が各方面でなされている。
【問題解決力】
問題解決手法としては、ロジックツリー、シックスシグマ、KJ法、EM法、KT法など多数ある。課題発 見、原因分析、決定分析、解決策立案など、問題解決のプロセスによって用いる手法が異なる他、技術・ 研究開発分野で活用されるTRIZ、USIT、VEなどもあり、問題解決手法と呼ばれるものの数は少なくとも100 以上は存在する。

問題解決に関する研究は、20世紀前期のゲシュタルト心理学派の初期まで遡る。これは全体性や構造を理 解する人間心理の解明の他、社会心理学、発達心理学などにも受け継がれ、コンピューター科学へも応用 されている。

近年の問題解決に関する主要な成果は、1947年に示された限定合理性や1978年にノーベル経済学賞を受賞 した意志決定過程モデル(いずれもHerbert Alexander Simon、アメリカ)や、1995年に複雑な問題をとら えるモデルを提出したドイツのJoachim Funkeらの研究など、多数ある。

一連の問題解決のプロセスには、組織の意志決定や行動特性などを含む広範なテーマが含まれる。そのた め現在、「問題解決」と呼ばれるテーマは、大きな研究・実践領域を構成している。
【ラポール(仏語 rapport)】
フランス語で信頼という意味で、円滑にコミュニケーションができる土台となる健全な人間関係のこと。 親密な心理的な絆・信頼感。
【リーダーシップパイプライン】
 リーダー後継者が継続的に輩出される仕組み、またはその概念。各層のリーダーそれぞれが、部下の中 からハイポテンシャルな人材を見出し、自らの後継者候補として育てていくことで、優れたリーダーが絶え間 なく安定的に輩出されるようになる。また、そのプールが各層にできることで、トップにつながるリーダー輩 出のパイプラインができることから、こう呼ばれている。

神戸大学の金井壽宏によれば、リーダーシップの伝達には、上司─部下、先輩─後輩など、人的つながりをベ ースに伝えられる「薫陶」が重要な役割を果たしている。だからこそ、リーダーからリーダーへと直接教育が ほどこされることが重要になる。
【労災認定】
「労働災害(労災)」とは、労働安全衛生法第2条によると、「労働者の就業に係る建設物、設備、 原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にか かり、又は死亡すること」と定義されており、直接的なケガなどの他に、職業病や精神疾患なども含まれ る概念となっている。

過労と労災、そして長時間勤務とメンタルヘルスに対し、社会の関心が高まるきっ かけとなったのは、1996年3月の「電通事件」の東京地裁判決だと言われている。同社入社1年5カ 月めの若手社員が長時間勤務の末にうつ病にかかり自殺した事件で、日本で初めて「過労自殺」が労災と して認定。一審判決で約1億2千万円の賠償支払い命令を受けた(2000年に遺族側勝訴が確定)。 また、1999年4月には別の企業の若手社員の自殺が労災として認められるなど、社員の心身の健康 に対する企業側の責任が問われる気運が高まった。

こうした中、旧労働省は1999年9月に、メンタルヘルスにかかわる労災認定の指針として「心理的 負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」を発表し、具体的な判断指針の1つとして「職 場における心理的負荷評価表」も付加した。

その後、企業再編や人員削減など、企業人が置かれる職場環境が大きく変化したため、2009年4月 に、この評価表等の見直しを行った。この時新たに追加された項目としては「違法行為を強要された」 「達成困難なノルマが課せられた」「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」などがある。
【ロジカル・シンキングとクリティカル・シンキング】
ロジカル・シンキングは、複雑な事象をさまざまな角度で分解したり、整理したりすることで、客観的、 合理的に筋道を立てて考える思考方法。ロジカル・シンキングによって分解・整理した理解を材料に、ゼロ ベースで物事を捉え直し、その合理性を検証するのがクリティカル・シンキングであり、そこから新たに思 考を組み立ててゆくのがコンセプチュアル・スキル(概念化能力)である。批判的思考と言っても、物事を 何でも批判的に見る捉え方ではないので注意。

ロジカル・シンキングの主な手法として、演繹法、帰納法、ピラミッド・ストラクチャー、フレームワー ク思考、パレート分析などが知られている。
ちなみに、クリティカル・シンキングは広義ではロジカル・シンキングと同じものとする立場もあるが、 ロジカル・シンキングの一部として捉えるのが一般的である。
【ローテーション】
人材育成を念頭に置いた戦略的かつ定期的な人事異動のこと。ジョブ・ローテーション、人事ローテーシ ョンと呼ばれ、日本企業では古くから行われてきた。その目的は、職務に関する幅広い知識と視野を持たせる こと。そして、人材の適性を見て適材適所を図ることである。同じ部門内で行うこともあれば、他部門や他事 業会社、海外にわたることもある。

最近では、リーダー育成の観点からもローテーションが重視される傾向にある。異動による経験の蓄積と人 的ネットワークの拡充とともに、時折の個人パフォーマンスを見極めることで、次期マネジメント候補の人材 プールの充実に一役買っている。また、管理職のローテーションを行うことで、リーダーとしての成長を促す 企業もある。
【ワークシェアリング】
1990年代にヨーロッパで大規模に実施され、日本でも注目された。企業の取り組みとして有名なのは、1993 年にドイツのフォルクスワーゲンが行ったもの。当時の所定労働時間を20%短縮する代わりに(ただし賃金 カットは20%未満)、一切の人員整理をしないとの労働協約を産別労働組合と締結した。

フランスでは1990年代に政府主導で取り組みが行われた。時間短縮と収入減に加え、社会保険料の使用者負 担の減額、35時間の労働協約を締結した企業への助成金の設定などを行い、数十万人の雇用創出効果があった という。

1982年にオランダで実施されたワークシェアリングは、上記2例とは少し性質が異なる。パートタイム労働者の 就労促進や賃金抑制と、社会保障制度、労働法などの各種制度改革を進め、社会全体の働き方を変革しようと 試みた。つまり雇用の多様化を支える仕組みをつくることで失業率を低下させようとしたのである。結果、19 80年代の失業率12%から2001年には2.4%にまで回復した。このオランダの取り組みは日本にとって重要である。 なぜなら、この当時のオランダ社会は、男性と女性の役割分担が明確であったり、正規雇用者と非正規雇用者の 賃金格差が大きいというように、現代の日本社会と類似していたからだ。

日本では近年の景気悪化を受け、国レベルでの取り組みが進んでいる。2009年3月には、厚生労働省が「残業削 減雇用維持奨励金」を設けるといった「日本型ワークシェアリング」の実施を促進することを発表。今後の展開 が注目される。
【ワークプレイスラーニング】
ワークプレイスラーニングとは、働く現場において従業員が業績を上げるために必要な学習のことであり、 学習と実務を連携させて業績向上を目指す企業内教育である。具体的には、コーチングやメンター制を取り入 れたOJTの実施、eラーニングによる各種プログラムの提供、社員の知識やノウハウを共有し、社員の生産性を 高めるナレッジ・マネジメントなども、ワークプレイスラーニングに位置付けることができる。

1990年代後半以降、企業の重要な人材開発戦略としての地位を確保してきたCUは、学習と実務を連携させて 業績向上を目指すワークプレイスラーニングを回す枠組みを例外なく提供している。たとえば、新人社員の教 育において、メンターが各種プログラムを受講し新人の教育に当たるといった取り組みはその一例だ。このよ うにCUが提供する枠組みの中でワークプレイスラーニングが機能することで、学習と実務が一致し、その成果 は組織の次なる改善や、組織の知識・知恵としてフィードバックされていくのである。
【ワークライフバランス】
仕事一辺倒ではなく、私生活と仕事のバランスを取り、より充実した人生を目指そうという考え方。日本 企業においては長らく、子供を持つ女性従業員に時短や在宅勤務を認めるなどといった文脈で語られてきた。 しかし、少子高齢化などを背景に、時間的な制約や自由度の高い働き方を望むなど、働き方の多様化が進んで きた昨今では、性差にかかわらず重要な概念になっている。企業にとって、そうしたさまざまな背景を持つ人 材を活かすため、ワークライフバランスに本格的に取り組む必要性は増す一方である。

ワークライフバランスを進めるうえでの大きなメリットの1つに、職場全体のモチベーションアップがある。 「自分のワークライフバランスが図られている」と考える人のほうが、仕事への意欲が高い傾向にあるという 調査結果(平成18年内閣府調べ)もある。

昨今の傾向として、「ワーク」と「ライフ」を明確に分けてバランスを取るのではなく、私生活で得たことを 仕事に活かすなど、どちらも充実させることで相互作用を与えるという考え方が主流となってきている。
【ワールドワーク】
1980年代よりプロセス指向心理学者の創始者であるアーノルド・ミンデルによって実施されてきたグル ープファシリテーション。目的は、世界に偏在する種々の難題(宗教対立、民族紛争等)にグループワーク で「場」を設定し、その「場」に潜在する多様性に「気付き」を向けていくことにより取り組むもの。