第5回 フィードバックの効能



 皆さんは、人から「あなたには、こういう所があるね」と言われたり、誰かに自分のことを「こういう方です」と紹介されたりした際、自分の意外な面に気づいたことはありませんか?他人からのコメントによって、あらためて自己認識することは、よくあることではないでしょうか?研修では、この他者認知を使って、自己認識を深めていただくことがあります。その一つが「フィードバック」です。(フィードバックとは、その人の行動とそれによる影響をコメントすることです。)

 研修の場では、ご自身の行動を見直していただくために、参加者同士の「相互フィードバック」をしていただきます。実は、研修中、特に慣れないことや新しい体験(例えばシミュレーションや集中力を要するワークなど)をしていただくと、ご自身が気づかないうちに「日頃の行動」が現れてしまうようです。これは、私が講師の立場になって実感したことで、まさか研修中に日頃の行動が出ていたとは思ってもみませんでした。例えば、時間が迫った時の決断力や、議論の参加の仕方、そして、つい集中すると人の話が聴けなくなる等、その行動は様々です。

 そこで研修では、ワークを共にしたグループメンバーに、研修中の行動について「良かった点」「改善したほうがいい点」などを、ポジティブ、ネガティブ両面から書き出していただき、プレゼントしあいます。これは参加者にとって大変インパクトがある様です。「議論が行き詰った時、さっと立ち上がり、ホワイトボードにまとめてくれ頼もしかった」、「熱くなると、やや得意分野の切り口で話をしがちで、議論が少々混乱した」などなど。簡単には受け止められない場合ももちろんあります。ただ、実際に自分の行動が、相手にそう感じさせたのは事実です。その後で、職場メンバーからの360度診断の結果と一致したりすると、これが自分の日頃の行動と認めるしかありません。後々まで印象に残る、非常に貴重な体験です。「職場では誰も言ってくれない立場になってきたので、これは宝物にします。」と持ち帰られる参加者もいます。さらに、「自分の行動は(周りに)見られている」という認識もあらたにされるようです。自分では意識していない行動も、メンバーはしっかりと見ており、それが、組織に与える影響を肌で感じ取られるのです。

 この「相互フィードバック」のもう一つの大きな効果は、フィードバック「する」体験です。これは相手を見ていないとできません。多くの方は、「ワークに夢中で、人のことなど見ている余裕はなかった」と言われます。でも実際には、色々な仕事をしながら、メンバーのことを見てあげなければなりません。さらに、フィードバックの際、どんな言い方をすればよいのか、受け取る側の感情の動きなどを体感されます。効果的なフィードバックは、その人の行動(事実)とそれによる影響を「私がこう感じた」と述べるだけです。そこには良い悪いの判断はありません。自分の判断が加わる「褒める」「叱る」ということとは少し違います。参加者は、自分自身が、職場のメンバーに効果的なフィードバックをする重要性を感じられるようです。

 フィードバックは、特に管理者にとっては、非常に重要なスキルであると感じています。しかし、その効果的なやり方を知らずに、活用しきれていないことが多いのではないでしょうか?(実際に私自身も、メンバーに対し自己流にやっておりました。)フィードバックは、行動変容の強力なサポートとなります。改善すべき点を見直し、強みはさらに伸ばすことにつながります。日頃からメンバーの行動をしっかり見て効果的にフィードバックすることが、メンバーの成長を助けるはずです。そして実は、管理者自身も、自分に対するフィードバックを求めていき、受け止めることができれば、それは自己の成長を助けてくれるものになるのではないでしょうか?

 

【講師プロフィール】

山崎 つかさ Yamazaki Tsukasa

  • 1994 年 大学卒業後,全国チェーンの楽器専門店に入社し,店舗オペレーション開発、販売促進、広報などのスタッフ部門で、イベント企画運営、商品プロモーション、マネージャー職、新規事業プロジェクトリーダーなどに従事
  • 株式会社日本能率協会マネジメントセンターに入社し,現在に至る

 

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