第30回(最終回) 基本の基本



基本の基本

 いままで、日常よく行われる行動のひとつひとつについて、その基本は何かを考察してきたが、今回でこのシリーズを終わることにする。今までのご愛読にたいし、お礼を申し上げたい。

 今回は最終回として、「基本は無敵」の本義に立ち返り、その意味をより詳しく、まとめて述べることにしたい。

 こで言う「基本」とは、その行動を起こすときに、まず真っ先に考えなくてはならないこと、最も大事なことを言う。つまりそれをよく考えていないと、よい仕事ができない。あるいは失敗しやすいことを指す。
  たとえば今、部下になにかの仕事を頼む場合のことを考えて見よう。こうしたことは日常無造作に行われていることのひとつだが、この場合の基本は、相手がそれをやることによって、「能力が高まるような与え方をする」。これが基本である。

 能力が高まるというのは普通、何らかの意味で、本人が経験したことのない仕事を引き受け、それを何とか自力で達成し、自信がつくことを意味している。すでに経験したことをいくら繰り返しても、本人の能力は上がらない。
 とくに重要な仕事など、やむを得ず、経験者に仕事を割り当てることはあるが、その場合でも、何らかの意味で本人に未経験の要素を仕事に含めるよう、常に未経験要素を入れる必要がある。

 このことは、上役や先輩は常に、あらゆる機会を利用して、部下や後輩の能力を高めなくてはならぬことを意味している。しかし日常の仕事の与え方を見ると、そうした意識は見られず、単に部門内の分掌にしたがって機械的にやるだけの人は少なくない。

 未経験の仕事を与えた部下に対しては、その後の彼の仕事の状況をつかみ、「おい、どうだい」などと声をかけて様子をうかがったり、困っていることに対し、必要なヒントや助言を与えることを注意深く行う必要がある。ただし注意深く。
 相手に教えすぎになって、相手が考えるべきことまで教えたり、放置しておいて手遅れで失敗させたりしては、ともに本人に自信をつけることにはならないからだ。
 このように、基本に忠実な幹部がそろっている会社は伸びるのが早いだろうし、そうでない会社は、比較的短い期間に、大きな差をつけられてしまわれるだろう。

 基本というのは、その効果は少しずつしか表れないが、多数の人がそれを実行するほど、また時間が経つほど、大きな競争力の差となって顕われる特色を持つ。

 今まで述べた各種の基本には、ここで説明したような「注意事項」がたいてい含まれているが、いちいち注意を述べていないものもある。こうした部分は、皆さんが基本の目的や意味を察し、実行していただきたい。

(終わり)