2005年11月 須磨学園学園長 西和彦さん

CLOSE UP 時間管理の達人 第38回 須磨学園学園長 西和彦(にし・かずひこ)さん(49歳) 目的設定型の時間管理でやりたいことを実現する 自ら培ってきたタイムマネジメント術を中高生に伝授し、目覚しい結果を生み出している須磨学園学園長の西和彦さん。多方面で活躍してきた西さんの時間管理におけるノウハウとは?

Profile

1956 年兵庫県生まれ。早稲田大学理工学部在学中にアスキーを創業。米国マイクロソフト社副社長、アスキー社長などを歴任し、日本のパソコン業界をリード。経営者として活躍する傍ら、 1999 年に工学院大学大学院にて博士号取得。現在は、研究教育活動に専念し、須磨学園学園長、尚美学園大学教授などを務める。著書多数。

Interview

須磨学園では、西さんのタイムマネジメント術を生徒に導入しているそうですね。

タイムマネジメントの授業は、中学・高校の生徒たちに毎週金曜日の1時間目を割り当てて導入しています。そこでは、まず最初に自分の目標を設定し、そのためにやることを細かくリストアップ。次にそのリストアップしたことをいつやるのか、スケジュールにはめ込むという作業をしています。これを繰り返して書き出すことで、自分が目的として設定したことが自ずと実現していく。生徒たちには、そういう目的設定型の時間管理術を教えています。

結果として、生徒の進学実績やテストの成績が伸びているとか?

このタイムマネジメントの導入で、進学実績は明らかに伸びましたね。国公立や関西トップクラス私大など大学進学率が随分アップしました。もともとこの方法は、私が企業セミナーなどで話していたもので、参加者のお子さんにもぜひ教えてみてくださいと勧めていたもの。すると、子どもに教えたら、「テストの点数が20点以上も上がった」などの声が寄せられ、かなり評判となったんです。そこで、うちの学校でも、カリキュラムの一つとして取り入れてみようと、3年前から実施するようになりました。

授業では、具体的にどのようなことを教えているのですか?

プロジェクトシートというのがあって、そこに1年、1学期、1カ月、1週間の目標を立てて記入し、そのために自分は何をする必要があるかを書き出します。これがタイムマネジメントにおいて、一番のポイント。自分が抱えているプロジェクトを全体感を持って見る能力、その実現のために必要な作業を洗い出して一つ一つクリアする技術が身につけられます。あとはスケジュール表にやるべきことをいつやるか、前後のスケジュールを確認しながら記入するだけです。


重要なのは、目標設定とやるべきことのリスト作り?

もちろん、スケジュールにはめ込むことも大切ですが、より重要なのはプロジェクトシートでやるべきことを明確化することです。タイムマネジメントとは、空いた時間を作ってそこに予定を埋め込むということではありません。やるべきことを最低限のレベルまでリストアップし、実行していくことで目標を達成する。それこそが、タイムマネジメントの役割です。

プロジェクトシートを書くコツなどはありますか?

最初はうまく書けなくても、2、3回やってみると、書き出す作業自体は誰でもできるようになりますよ。要は慣れの問題です。ただし、いつも何をすべきか自分の中で意識をしていることが、大事なコツでしょうね。

作業を細かく落として考えるのも、意外に難しそうですが。

1つのプロジェクトを実行するには、少なくとも1000~2000程度のステップが必要です。最初からそれくらいのステップがあることを覚悟して、時間がかかってもあきらめずに黙々とやること。そうすれば、1ヵ月後、2ヵ月後、もしくは1年後には、必ず目標が達成できるものです。多くの人がすぐに結果がでることを期待しますが、それは気が早すぎるというもの(笑)。じっくりと小さなステップを消化していくことが、プロジェクトの達成には一番の近道です。

この方法は、西さんの経験から生まれたノウハウということですが?

アスキー時代の私は、毎日、 1 日に 40 ~ 50 件のアポが入るのが当たり前の生活でした。周囲からみると異常な忙しさに見えたでしょうが、私自身はさほど忙しさを感じていなかったんです。その理由は、いつも自分は今、何をすべきかを考えながら時間を管理していたからだと思います。


具体的にどのような経験が生かされている?

昔からアポは必ず余裕を持って組むようにしていますね。 10 分のアポなら 15 分、 1 時間のアポなら 1 時間半。万が一、予定以上に時間がかかっても余裕がありますし、予定通りに終わればそれは自分だけの時間となる。そういう時間に、自分がやりたいと思っていることを考えたりするんです。会社の経営をしながら、大学院で博士号の資格も取得した時は、 1 週間を時間で区切って、いつ何をするかを徹底していました。平日の 9 時~ 6 時は会社の仕事、平日の 7 時~ 12 時と土・日は大学院の勉強という具合です。そうやって、決めた時間内にやるべきことをクリアすることで、新たにやりたいことを実現してきました。

時間の無駄を省き、新たな夢への自由な時間を生み出す


タイムマネジメントにより、効率化も実現すると思いますが?

効率化というより、無駄な時間を省く効果のほうが大きいですね。1日24時間ではとても足りないと思っている人は多いでしょうが、実はその24時間を100%活用しているわけではない。時間使いが上手い人でさえ、1週間に6、7時間は無駄にしているものです。タイムマネジメントが苦手という人なら、その倍の14、15時間を1週間で無駄に費やしているでしょう。もし、その無駄な時間を半分に縮められたなら、それが自分だけの自由な時間に変わるわけです。

無駄を省いて生まれた自由な時間とは?

新しいことをしたい、夢を叶えたいという人には、考えたり準備する時間が必要。それが自分で自由に使うことのできる時間です。そうはいっても、今、自分がしている仕事はきちんとこなさなくてはなりません。だからこそ、無駄な時間をコントロールし、自由な時間を生み出すのです。そのためには、メリハリを持つことが大切になってきます。


上手なメリハリのつけ方とは?

週に5日働くのがスタンダードだとしても、それを4日で終わらせるという方法もありますよね。月、火は残業して、水曜日は思い切って休む。木と金はまた残業して、土曜日は再び自分の時間とする。日曜日は義務として体を休めるための休養日。そんなふうに過ごせば、1週間が2回まわってくるようなもの。しっかり働きながら、やりたいことを実現するための自由な時間も、休息もとれている。そんな働き方を一つの理想的なパターンとして考えてもいいと思います。

ところで、西さんはどんな手帳をお使いですか?

スケジュールをA4にプリントして、リングフォルダでファイルしたものを手帳として使っています。A4サイズなのは、コピーをするのに一番効率がいいから。パソコンで作成したスケジュールをプリントしてファイルするだけです。紙はわざと黄色にして、カバンやデスク上でほかの書類と混ざってもすぐに見分けがつくようにしています。ちなみに赤のリングフォルダは、私だけが見ることのできる重要書類という意味です。

予定を書く時のルールはありますか?

動かせる時間と動かせない時間がひと目でわかるようにしています。10時から1時間の予定のアポがあったとすると、スケジュール的には余裕を持って11時 15分まで時間をとります。その記入の仕方は11時15分から10時まで、上に向かって矢印を向ける。矢印のある時間は確定している時間で、矢印のないところは余裕の部分、つまり調整ができる時間です。始まりも終わりもフィックスされている予定なら、両方の時間を矢印で結びます。こうすることで、いくら予定が立て込んでも調整がしやすいし、自分の時間を作りやすくなります。

スケジュールの入れ方にも何か工夫が?

スケジュールは、秘書が翌日分を前日の夕方に渡してくれます。つまり、夕方6時の時点で翌日の予定が確定していて、それ以降、新しくブッキングすることはありません。時間に余白があるからといって、どんどん予定を詰め込めば自分の首を絞めるだけです。何も急いでやる必要なんかない、という気持ちの余裕があったほうがいい。それが新しくやりたいことにチャレンジする源になっているんだと思います。